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第3話 交渉

「そうだ。

 我が国を救えるのだ、これ以上ない誉れだろう、勇者達よ」


 王は脂肪だらけの顔でどや顔をさらしながら尊大に言いはなった。


「(……我が国か…もはや世界がどうとかじゃないな。隠してるつもりかも知れないが勇者を道具と見ているようにしか思えない。……なるほど、これが噂の悪徳召喚というやつか)」


 士は心のなかでそう結論をだした。


「理解したなら早く跪かんか!勇者とはいえ不敬であるぞ!」


 最初に声を上げた男が未だ立ったままの士に再び言い放つ。

 だが、それでも士が跪くことは無かった。


「不敬?どの口がほざくのか気になりますね」

「なに!?」

「話を聞いていなかったのですか?

 私は話を聞いてから判断すると言ったのです。

 そして、判断の結果跪く必要はないという結論を出した」


 士は男を見ながら言葉を紡ぐ。


「貴方方は我々を勇者として召喚し、世界を救えと願った。

 ならば、普通に考えれば下手に出なければならないのは我々ではなく貴方方だ」


「親から教わらなかったか?

 人に頼み事をするときは頭を下げろと。

 我々はここに至るまで一度たりとも頭を下げられてはいない」


「別に頭を地面に擦り付けろとは言わない。

 だが、最低限の礼を持って接するべきだ。跪けなどとは言わずにな」


「さらにそれに対して言わせてもらうとする場、我々はこの国に召喚されたとはいえこの国の人間ではない。いや、この世界の人間ですらない。

 例えばだ。貴方は見ず知らずの人間に私は偉いだから跪けと突然言われて跪くか?しないだろう?そういうことだ。

 悪いが跪く必要性を感じない」


 士はそこまで言いきると王の方を向く。


「それで、我々はいつまでここに居れば良いんだ?

 どう足掻こうと元の世界には戻れず、生活をするにも元手もなにもない。

 取り敢えず、勝手に召喚してきたのだから生活は保証してもらう。それと、魔王とやらを倒すかどうかは今ここでは決めさせないでもらいたい。こればっかりはすぐに決められないからな。

 どうか、頼む」


 士は男達に見せつけるかのように王に頭を下げる。

 生活の保証云々は義務だが、最後のことは此方から頼むことであると解釈しているからだ。


「うむ、確かにそうであろうな。

 良いだろう。一旦下がるがよい。後程、部屋に案内させよう」


 王は若干こめかみをピクピクさせながらも、士の提案を飲み、一旦下がらせる。

 士はその言葉を聞くと複数の視線を感じながらも謁見の間を後にしようとして、立ち止まる。


「お前らも来いよ」


 未だ跪いたままの少年達に声を掛けると、次こそ謁見の間を後にした。


 ◇◇◇◇◇


 謁見の間を出ると士達は扉の両脇に立っていた騎士とフレンチタイプのお仕着せを着たメイドに謁見の間から少し行った場所にある部屋へ案内された。


「(あの豚……予想通りといえば予想通りのメイドを用意しやがって…)」


 士はマイクロミニのスカート丈からのぞく健康的な白く美しい足にチラチラと目をやっている少年を見ながら心の中で呟いた。


「勇者様方はこちらでお待ちください」


 メイドはその言葉と共に士達を中へ入れると部屋から出ていった。

 しばしの沈黙。


「はぁ…疲れた」


 部屋の中に士の声が木霊した。

 士はソファに沈むように座りながらブレザーの内ポケットからタバコと翼のデザインが刻印されたライターを取りだし火を着けた。


「(どうすっかねぇ、これから)」


 士はタバコをふかしながら呟いた。








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