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第21話 

「あれ?先輩、まだ来てないんですか?」


 いつも使っているものよりも絢爛な食堂に入った優花は既に席に座っているメンツを見ると、葵に話し掛けた。

 国王に指定された時間まではあと5分程しか無いにも関わらず、ここには士を除いた勇者しか居ない。


「来てないわ。……あ」

「どうかしたんですか?」

「いえ、セットされている数を見ると一人分足らないと思って……」

「確かに……」


 長いテーブルには位置皿とカトラリーがセットされているが、その数は七。そのうち1つは離れた場所……扉などの位置から察すれば上座にあるため、おそらく国王がそこに座るのだろうということは予想できる。となると、残りは六。優花が座ったことによりその六つは埋まったため、1セット足らないことになる。

 さて、ここまで来ると今までの対応からわかることがある。一人を除いた五人はまたか、といった具合で顔を見合わせる。

 その時。

 扉が開き、肥え太ったオーク……ではなく国王が入ってきた。


「おお、全員集まっているな。

 話もあるが、まずは食事をしようではないか」


 椅子に座った国王がそんな事を言うと、料理が運ばれてきた。


 勇者と召喚主である国王、その会食が始まった。





 会食は進み、全ての料理を食べ終えたところで国王が口を開いた。


「まずは聞いてもらいたい」


 と。

















 ◇◆◇◆◇


「ふ〜ん、それで?」

「断ったわよ、もちろん。それで、本当に連れてきていいの?」

「ああ、今回の話次第ではやめることも考えたけど連れてきてくれ。そのほうが安心できる。はっきり言って、子供が謀略の世界で生きてるような人間に太刀打ちできるとは思えないし」


 士は目の前でハーブティーを飲んでいる少女──葵にそう言った。


「それにしても……こんな物まで創ったのね」

「こんなものとはなんだ、こんな物とは。落ち着くだろ、日本庭園」

「そうね、ハーブティーじゃなくて緑茶ならもっと良かったけど」

「仕方ないだろ、ハーブティーしか無かったんだから。ローズヒップだから美肌に効果あるぞ?」

「逆になんでそんなの持ってたのか驚きだわ。しかも美肌とか気にするの?」

「まあ、なんだ誕生日プレゼントってやつだ。放課後に渡そうと思ってたらこうなった」

「朝渡せば良かったじゃない」

「んなことしたら生徒会の仕事やらされるだろ、めんどくさい」

「なんでやらされるのよ」

「なんでって、副会長だから?」

「いや、それならやりなさい」

「嫌だわ。半ば強制的になっただけだし、文化祭はちゃんとやったし」


 士はカップのハーブティーを飲み干すと、その場に寝転んだ。


「そんで、聞き忘れたけどあの勇者くんはどうした?」

「また忘れただけとか言ってたわ。流石に愛想が尽きる。

 それと、今回の件については時間をくれって言ってたわ」

「さすがの勇者くんも結婚となると慎重になる……か」

「ええ。それに、元の世界……で言えばどれだけ告白されても良い返事はしなかったしね」

「それは相手がタイプじゃなかったとかか?」

「いいえ、多分だけど誰かと付き合うことで周囲の関係が壊れるのが嫌だったんじゃないかしら。こう言うのもあれだけど、ウチのクラスというか学年は彼を中心に回ってたから」

「なるほど、ね」

「それに、彼の家の性質上俗に言う許嫁っていう人も居たみたいだし」

「旧家名家のお約束ってところか」

「そうね……今となってはそういう家は珍しいけど、夕崎家は古いしきたりを守ってるから。

 ところで、そういう士はなにか無かったわけ?聞いたところでは神居家も古い家なんでしょ?」


 葵も持っていたカップを置くと、寝転がる士に目を向けた。


「実家がそれなりのところだったってのを知ったのはつい最近だぞ?あるわけ無いだろ」


「まあ、とにかく。

 白崎たちを呼んできてくれ。くれぐれも勇者くんにはバレないようにな」


 士はそう言うと立ち上がった。




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