第19話ꙩ実験
さあさあ、遂に出ましたぶっ飛び設定。
ただ言わせてもらおう。
士よ、君の居た世界はそんなにやばかったのか?と。お前のしてたバイトってなんなの?と。
「……葵、(ちょっとした実験に)付き合ってくれ」
「ふぁっ!?わ、私達は出会ったばかりで……」
「?……お前しかいないんだ(信用できる奴が)」
「つ、士がそこまで言うなら//」
「そうか!助かる!」
「……ん。助かる?」
密談の翌日。
士と葵は朝食を終え、王城の廊下で密会していた。
そこで交わされるのは傍から聞けば愛の告白。だが、しかし。当の本人(士のみ)はまったく違う意味であった。
「……………はぁ」
士に与えられた部屋。その中でずぅうううんという効果音がぴったりマッチするような溜息が聞こえる。
「なんだよ、んな溜息ついて。辛気臭えな」
「誰のせいでっ!!」
その溜息の主である葵に士は自分のせいであることに気付かず、言葉を掛ける。
「?……なにキレてんだよ。
まあ、とりあえずこれからやることは絶対に他言無用だ」
士はいつになく真面目な声音で葵に告げる。
いつも飄々としている士のその態度に、葵も気を引き締める。
「わかった」
「よし始めるぞ……《異空間創造》」
士は魔力を練り、空間魔法を発動する。
そして、創られた空間の中に入り込んだ。葵も恐る恐るそれに続く。
異空間との狭間を抜けるとその先には目が痛くなりそうな白い空間が広がっていた。そして、少し先を見ると、先に入った士が足元に手を付いていた。
「《土創造》《草木の楽園》《乙女の湖》《擬似太陽創造》《擬似宇宙創造》……こんなもんかな」
「すごい……」
「お、来たか。ちょっと待ってくれ……これらを最適化して、できたな」
士は適当な魔法で白い空間を地上の様に変えると、少し考える素振りをした。それが終わると、葵の方へ歩み寄った。
「ねぇ、これも魔術なの?」
「まあ、そうだな。それじゃあ、実験を始めよう」
士はそう言い、インベントリからリュックサックに隠していたものを取り出した。
「これを俺に向かって撃ってくれ」
「え、それってまさか」
「拳銃だな、うん。
コイツはいいぞ。狙ったところによく当たる」
「なんで、そんなもん持ってんのよ」
「バイト関係でな。とりあえず、撃ってくれ」
そう言い、葵に銃を渡す。
「【SGJ-M9グリフィン】。
簡単に言えばベレッタのM9ドルフィンとM93Rの合成モデルだな。俺の我儘を聞いて、造ってもらったやつだ」
「だから、なんでそんな物を……」
「だからバイト関係だっての」
「一体どんなバイトしたら銃なんて造ってもらうのよ…」
士は簡単に銃の説明……というより自慢をする。葵が気になるのはそんなことではないのだが、士は一言で片付けてしまう。
「まあ、撃ってくれたまえよ」
「なんで?」
「いや、だから実験だって」
「自分で撃てばいいじゃない」
「自分で自分に撃つとか無理ゲーだろ……いや。いけるか?」
「はぁ!?ちょっと待って、まさか士を撃つの!?」
「そうだが?」
「私を殺人犯にでもしたいの?!」
「いや、そういう訳じゃねぇけどさ。
まあ、平気だよ。障壁に撃つだけだし。仮に抜けてきても弾を斬ればいいし」
士はそう言うと左手に鞘に入った刀を顕現させる。
「なんかおかしい台詞が聞こえたし……障壁に撃つなら私要らないと思うんだけど」
「そう言われればそうだけどさ。
やっぱ実際に撃たれてみないとダメじゃん?」
「じゃあ、なんでさっき弾を斬れるみたいなこと言ったのよ…」
「一回だけ弾をナイフで斬ったんでイケるかなぁと」
「撃たれてるならもう良いじゃない…」
「それに斬ったといっても銃口からの弾道予測だったからな。ハッキリとは見えなかったし」
「まさか…」
「ワンチャン頑張れば弾見れんじゃねぇかなぁと」
「やっぱ馬鹿でしょ!?馬鹿だよねぇ!?」
「ちょ、おま、離せ!揺れる!視界がゆれてる!」
葵は士の言葉を聞くとキャラ崩壊などお構いなしに、士の服を掴み前後に激しく揺らし始める。
「ま、マジで離せ!見えそうだから!」
さらにその位置関係は士が少し下を向けば素晴らしきお山の間の谷が見え、その先端(ry
とにかく、色々まずかった。
そして、ここからは長いので割愛させてもらうが、結論としては士は撃ってもらえなかった。結局、自分で障壁に撃つ羽目になった。
その上で分かったことだが、現在の士なら弾丸の回転も見え、斬ることも可能であるということである。
その事を踏まえ士は銃に刻印をすることで弾速を上げることにも成功した。
そして、パーティーへ。




