第1話 召喚~Brave order~
「……どういう状況だ、こりゃ」
士は周囲を見渡して呟いた。
士の周りには同じくらいの年齢の少年達が尻餅をついていた。そして、足元には士の前に突如現れた謎の紋様と同じ紋様。さらにその紋様の外側には輝く様に磨かれた鎧と赤きマントを着た者と豪奢なドレスを着た少女が立っていた。
士の周りに居る少年達は彼女らを見て唖然としているが、士は別のところを見ている。
「(あの赤いのは血か?)」
謎の紋様と同じ形に溝が彫られその溝に付着した赤い液体。
それがなんなのか、彼は見極めようとしていた。
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【血液】
血液型……A
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「(!?……なんだ、これ。兎に角血ってことは確かなのか?)」
ポップアップのように目の前に突然現れたウインドウを見て士は内心で驚く。しかし、表情はまったく動いていない。何が起こっているのか分からない状況で例え表情だとしても情報を与えるのは下策だと考えているためだ。
「はぁ…はぁ……。
よくぞ、召喚に応じてくださいました。勇者様方!」
「……はぁ?」
しかし、この言葉に反応しないのは無理だった。思わずといった感じで声が漏れる。だが、他の少年達がさらに大きな声で同じようなことを漏らしたため目立つなどはしていない。
「(どういうことだ?勇者?……いや、まずそんな事よりも現状の把握が先だな。……クソッ、なんでこれを先にしておかなかったんだ。…まずこの紋様とそれの上に彫られてるコイツはなんだ?あと赤いのは血ってのはわかってるが。後はコイツら。年齢は同じくらいか…けどあの騎士っぽい奴等はなんなんだ……帯剣なんて認められてるのか?いや、それ以前にここは地球か?……ああ、クソ!わからないことだらけだ)」
彼は少年達がざわついている中冷静に考える。だが考えて分かったことと言えば自分の居る場所が地球ではない可能性があるかもしれないということだ。そこで考え付くのは一つである。
「(もし、もし仮にだ。ここが地球で無かったとしたらどうする?帰れるのか?)」
地球へ戻れるのか。
その一つに限る。……まあ、極々一部の者達は他のことを考えるだろうが。
「(ただ……帰れるとして俺は帰ろうと思うのか?帰る理由はあるのか?)」
士は自問する。
しかし、その答えを出すことは叶わないようだ。
「突然のことで勇者様方も驚いておられると思いますが……そしていきなりこんな事を言われてもお困りになると思いますが……どうか、この世界を救ってください、勇者様方!」
ドレスを着た少女がそう言った。
その目に涙を浮かべ、声を震わせ、その身に纏う豪奢なドレスを握りしめながら。
彼女の言葉を額面通りに受け取り彼女の様子を表すならば「世界を憂い勇者に嘆願する少女」だろう。その影響か、士以外の少年達の警戒と驚きを含んだ気配も薄まった。だが……士はどうも彼女が信じられなかった。正確に言えばもう一人も同じだった。
「勇者様方…まずは…我が父王へ謁見して頂きたく思います。詳しい話はまたそこで…」
少女の言葉に促され少年達は立ち上がり、騎士風の者達とドレスの少女へ着いていく。
「ほら、早く行け」
士も背中を騎士風の者に押され歩き出す。
最後に謎の紋様を見て、内心で驚愕することとなる。
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【勇者召喚魔方陣】
勇者を召喚するための古より伝わる魔方陣。
その発動方法は召喚の1年前より毎日日の出る時と日の沈むときに人間の血を捧げ、魔力をつぎ込むこと。
かつて神が作りし魔方陣。
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