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第17話ꙩ日常?

 翌日。

 いつも通りに起床した士は一人。部屋でリュックを漁っていた。荷物を取り出し、底の細工を弄る。そうすると、本来の底と隠されたあるモノが出てきた。それはとあるバイトに関するもので、それを知っている者が見れば何故士が持っているのか疑問に思うだろう。まあ、それを聞かれれば親戚から斡旋されたバイトでの道具としか言いようがないのだが。

 とにかく。

 士はそれをインベントリへと収納した。







「起きろ、少年!」


 昼下がり。

 王城の庭。そこで昼寝をしていた男に士はどこぞの文豪のように声をかけた。


「……起きねぇ」


 だが、男は起きない。


「起きろ、少年!」


 起きない。


「起きろ、少年!」


 起きない。


「起きろ、少年!」


 起きない。


「起きろや、ボケェエエエエエ!!!」


 士はついに男の耳元で叫ぶ。しかもなぜか持っていたスキル【王の咆哮】によっていくつかの効果を付与される。


「るっさいわ、ぼけぇえええ!!!」


 そして、男──変態ゴリラこと零治は目を覚ますと同時にそう叫ぶ。ちなみにこちらもスキル【野獣の咆哮】によりいくつかの効果を付与されている。


 まあ、それを踏まえて言わせてもらえば。

 近所迷惑である。その証拠に中庭に通じる廊下を歩いていた侍女が手に持っていた洗濯物を落とした。きっと彼女は後で上司に怒られることになるのだろう。可哀想に。


「やっと起きたか、ボケ」

「お前か、ボケ」

「「あ゛ぁ?」」


 そして、突然のメンチ対決である。

 某ゲームであればこのまま啖呵を切るミニゲームに突入するところだが、ここではそんなことはない。


 しかし……この二人は勇者というには柄が悪い。どちらかと言うと冒険者や傭兵といったほうが良さそうである。……いや、黙っていれば二人共勇者といわれるには十分なのだが、いかんせんこの二人は上品に振る舞うということが苦手である。

 扉を蹴破ったり(prolog参照)、不良をボコったり(prologより予想)している士はともかくとして、それなりの上流階級の息子──いわゆる御曹司である零治には振る舞っていただきたいところではあるが。


「はぁ……。で、なんかようか?」


 零治は士から目を離すと、再び横になる。


「用?んなモンねぇけど」

「は?無えのに起こしたのか?」

「ああ」

「「………」」

「歯ァ食いしばれ」

「なんでだっ危なっ!」


 そして、突然起き上がった零治は士に渾身の右ストレートをぶち込まんとするが、それは避けられる。


 なんとも下らないことをしながら、士たちの時間は過ぎていった。



















 さらに翌日。

 士たちは王城内のそれなりに広い部屋に集められた。

 集められたその部屋には大量の服と仕立の良い服を着た男女が数人。


 士たちの集められた理由。

 それは七日後のパーティーで着る服を仕立てるためである。そのため、ここでは大まかなデザインと使用する布や装飾が集められていた。


 もちろん、集められた男女たちは一流の仕立屋である。それこそ、本当に極一部の者しか最初から仕立ててもらえないほどのだ。



「普通に制服で良くね?」

「そういう訳にもいかないのよ、パーティーは」

「そんなもんか?…ん、あー、いや、確かにそうか。ナメられたら終わりだもんな。あ、だからあん時も……」


 士はつい本音を口にしてしまう。その言葉に葵は答える。


「それでは……ケンヤ様はオフェアノに」

「申し訳ありませんが……私はそちらの方の服を仕立てさせていただきます」


 そんな時。

 ユリスが一人の老人を指しながら謙也になにかを言おうとした。しかし、その老人はユリスの言葉を遮ると士を見ながら言い放った。

 その言葉にユリスは一瞬だが苦虫を噛み潰したような顔をする。が、それをすぐに笑顔の仮面の下に隠す。


「オフェアノ?なぜ、ツ、ツカジ様の?」

「いや、ツカサな。ツカサ。誰がドランクド○ゴンだ」


 そして、老人──オフェアノに問うが、その際に述べた名前に士が突っ込む。もはや、先日の反省発言はどこへやら。清々しい間違いである。


「ふむ……そうですな。簡潔に申せば、そちらのケンヤ様ではインスピレーションがわきません。

 しかし……そちらのツカサ様を見た瞬間に、この方の服を作りたいと本能が叫んだのです」


 そして、このジジイである。

 少女漫画か何かかと思うほどに目を輝かせ、力説する。もはや、ここまでくると説得など不可能であった。




 オフェアノ・レーゲンヴァーグ。

 大陸随一の商会であるレーゲンヴァーグ商会の会長にして世界一と名高い服飾職人である。

 が、彼は気に入った者の服やアクセサリーしか造らないという。もし仮に彼をどうにかしようとすれば貴族でさえも痛い目にあうというのはかなり知られた話である。


 そして、このジジイはどうやら士を気に入ったようであった。

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