第15話ꙩ目覚め
「腹、減った」
模擬戦の翌日。
目を覚ました士は自分の部屋のものではないベッドで横になりながら呟いた。
ここは王城の医務室。
目が痛くなりそうなほどに白い部屋である。
「お、起きたか」
目を覚ました士に声を掛けた者がいた。
「んぁ?ったく起きて早々にゴリラ見るとかついてねぇな。普通は美少女だろ」
「誰がゴリラだボケ。だが、目覚めた時には美少女ってのは激しく同意する」
変態ゴリラ──零治である。
「まあ、いい。で、あの後どうなった?」
「あの後?……ああ、お前が倒れたあとか。そうだな、あの将軍さんが自分の右腕を凍らせて無理矢理止血してたな」
「無駄なことしてやがんな。治してやるか」
「無駄ってどういうことだよ?」
「あの傷は俺が許可しないかぎり絶対に治らないってことだ。で、他には?」
「あーと、謙也がお前に色々言いたいことがあるらしいぞ」
「具体的には?」
「『女性の腕をうんたら』だったな」
「はしょってんじゃねぇよ。てか甘いこと言ってんな、あいかわらず」
「そういうやつなんだよ。後は、あ、そうそう今日は軽くだけど色々一般常識ってやつを教えられたな」
「それ詳しく教えろ」
「わかった、よく聞いとけよ」
零治の話を纏めると。
この世界にはいくつかのギルドと呼ばれる組織がある。その組織は完全に国家から独立しており、援助を受けずとも運営をしていけるだけの資金もある。
次に通貨について。
通貨はユロ。先述のギルドの一つが発行している世界共通貨である。
また、紙幣は存在せず貨幣であり、
小銅貨=1ユロ
中銅貨=10ユロ
大銅貨=100ユロ
小鉄貨=1000ユロ
中鉄貨=5000ユロ
大鉄貨=10000ユロ
小銀貨=50000ユロ
中銀貨=100000ユロ
大銀貨=500000ユロ
小金貨=1000000ユロ
中金貨=5000000ユロ
大金貨=10000000ユロ
白金貨=100000000ユロ
という具合になっているようだ。
さらに200ユロでパンが1つ買えることから1ユロあたり1円と考えてよさそうであるらしい。
次にモンスターについて。
これは後程にまた教わるそうだが、FからEXでランク分けされるらしい。
最後にこの国と周辺国家について……だが、
「謙也には悪いけどこの国は信用できねぇな」
とのことらしい。
「さて、と。
そろそろ飯だろ。士も行くだろ?」
「行くに決まってんだろ。でも少しまっとけよ、少年」
「なんだよ」
「面白いもんを見せてやるよ。
この国を信用できないって同志のよしみでな」
「面白いもん?」
「ああ。
紙とペン、持ってるか?」
「ああ、さっき貰ったのがあるけど、これでいいか?」
「おけ、大丈夫」
士は零治から紙を二枚受け取ると、五芒星を中心に様々な紋様を全く同じに描き、五芒星の中に『見』と『受』とそれぞれに書く。そして、クロスをあしらったネックレスから取り出した針金の様なものを取り出し、それを人差し指と親指で挟んでなぞるようにして伸ばす。
すると柔らかかったそれは硬度を増し、針のようになった。それを使い士は指先を刺し、血を出すと紙の文字の部分をなぞる。
そして、『見』と書かれた紙を鶴の形に折る。
「『古き鬼を仮初の器に降ろし 我が要求を応じさせん』」
そして、気とも魔力とも違う力を紙へと流す。
そして、鶴は動き出す。
「っ、動いた!」
「まあな」
「お前っ、これなんだよ!?」
動いた鶴を見て零治は驚きの声を漏らす。
「式神だな。よし、そしたら『姿を消して王を探れ。もし仮にバレた際は消滅せよ』。これでよし」
「さて、飯行こうぜ」
士は簡単な命令を済ませると未だに驚いた様子で鶴を見ている零治に声を掛けると、もう一枚の紙を持って外へと向かった。