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第14話 決着

「お前……どんな不思議体質してんだよ」

「さあな。私にもわからん。ただ言えるのはこの二つを手に入れてからこうなったということくらいか」

「どういうことだよ…それ。装備でそんな変わるもんか?古代文明の作った装備だから……とかそんな感じか」

「ふん……そんなところだ」

「じゃあ、その氷もその弊害かなんかか。

 ますます、どっかの将軍染みてきたな」

「その将軍とやらに会ってみたいものだな」

「生憎と…存在しないもんでね」

「そうか、それは残念だ…なら、貴様にはもっと頑張ってもらうとしよう」

「悪いけど……本来ならテメェの負けだったぜ?

 俺はコイツの能力を一つ…使ってないんだよ」


 士は刀を構えたまま、アンリへと告げる。

 夜叉斬姫の能力【不癒】。傷が癒えることが無くなる能力である。相手を確実に殺すのには十分な能力である。

 士はこの【不癒】をこの戦闘では使用していない。その理由は簡単。殺さないように……である。

 実際、【夜叉神化】した士は簡単にアンリを圧倒してみせた。その士がこの能力を使っていた場合、すでにアンリは腕を無くしていることになる。

 さらに……


「解放」

「っ、!」


 士が呟くと突然アンリの腕が落ち、士が最初のつけた傷のあった場所から血が吹き出る。


「吸え」


 さらに士がそう呟くと吹き出たアンリの血が夜叉斬姫へと吸い込まれていく。能力【斬姫】によって士はアンリの血を夜叉斬姫へと吸わせたのだ。

 さらに……夜叉斬姫の能力【夜叉皇】によって夜叉斬姫が吸ったアンリの血からアンリの能力を得る。

【夜叉皇】……その能力は夜叉斬姫の吸った血の持ち主の能力とその能力に関する知識を所有者へと渡すというもの。その際にはバッドステータスとなりそうなモノは利点のみを得る。また、能力は相手に残るため、コピーといったほうが正しいかもしれない。


「へぇ……やっぱどっか将軍にそっくりじゃん……しかも…雷もか……まあ、あんま必要じゃないな」


 士は脳内でザッとアンリから頂いた(笑)能力を確認する。

 ユニークスキル【雷氷の魔神】。魔力を使用せず、思い描いた通りに氷又は雷を生成し、操れる能力である。そして、この能力は【無銘の絶望ノーネーム・デスペリア】を手に入れたことによって取得したようだ。正確にはこの剣を飼い慣らしたからのようだ。


「で、コイツも要らないな」


 ユニークスキル【黄泉の女王】。若干の魔力を使用することで、部位の欠損を即座に回復する能力。【黄泉の衣】を飼い慣らしたために取得した能力である。



 この二つ。

 確かに強力な能力だろう。特に魔力消費が少ないというのは大きなアドバンテージとなる。だが、士からすれば大したことではない。ほぼラグ無しで氷や雷、そして再生が行える能力など、士の元々のステータスで十分に変えがきく。さらに、魔力消費など元々無いのだから、さらに……だろう。




「なあ……もういいか?」


 士は腕を無くしたアンリへと問い掛ける。

 アンリはなんども腕を戻そうとしているが戻ることは今の今まで無かった。

 士が求めていること、それはもう終わらせて昼飯を食べたい。それに尽きる。

 だが、アンリの答えはそんな士の求めを真っ向から否定するものだった。


「まさか!

 右腕が無ければ左腕を使うまでだ!ああ……良い!こんなにも楽しいのは本当に久しぶりだ」


 そう言うとアンリは転がっている【無銘の絶望ノーネーム・デスペリア】を左手で拾い上げる。


「行くぞ」


 そして、その言葉と共に世界が凍った。


「で?

 肝心の相手が凍ってませんけど?」


 しかし、アンリの背後から士の声が聞こえる。

 ありえない……何故か。それはアンリの目の前で士が動きを止めているからだ。


「いやぁ、さ。

 予想はつくんだよね。本当にあの将軍に似てるから。それに氷系統なら凍らせるとかだろうし」


「それと、それどうなってるか気になってんだろ?」


「簡単だよ、って言っても俺自身よくわかってねぇけどな……まあ、教えてやると【幻影魔法】で作った幻影と同じ場所で俺が濃厚な殺気を込める……するとあーら不思議。将軍は騙されてしまいました……ってな」


「悪いけど……詰みだよ」


 士は右手に持った夜叉斬姫をアンリの首へ後ろから突き付ける。だけでは終わらない。周囲には何百もの黒い焔が槍の形を作ってアンリを狙い、さらにアンリの周りには空間魔法により斬撃が固定され、そこにふれればアンリは切り刻まれるだろう。




 士が言ったことは事実であって事実ではない。

 確かにアンリの前にいる士は言った通りのものだ。しかし、それを一瞬で創った上で斬撃を地雷のように仕掛けるなど可能なのだろうか。……出来ない……とは言わないが、難しいだろう。

 そこで士はアンリの攻撃と同時に時魔法で時を止めたのだ。その間に斬撃地雷を仕掛け、幻影を創り、アンリの背後へとまわった。

 因みにこの時魔法……士でも運用が難しく、アイテム製作等ならともかく、今回のような使い方では数秒が限界のようである。まあ、対象を絞ればもっと長く使用できるが。




「…ふ、ふふふ。そうか、私の負けか」

「ああ……殺してもいいけど、これは模擬戦だからな」

「つまり?」

「戦場なら容赦無く殺してたよ」

「ふ、そうか」


 アンリは笑うと攻撃を解除した。


「私の負けだ」


 そして、そう宣言した。




 こうして…勇者の実力を見るための模擬戦はすべて終了した。


「あ……やべ…」


 が、士はそう口にしながら地面に倒れる。

【夜叉神化】の弊害。極度の精神的肉体的疲労によるものだろう。

 そして………昼食を抜かれたことによる空腹が原因だろう。





 因みに士が目覚めたのは次の日の夕方であった。

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