第10話 仕合
あの後、士はあの謎の場所から出て、禁書庫へと戻ってきた。ボロボロだった服も戻ってきた時にはここに来た時となんらかわりない、綺麗な状態に戻っていた。
そして、時間も全く過ぎていない。
士はそのことに気付きながらも無視し、全ての本を空間ごと複製する。この世界に来て四日目で使えるような魔法ではない。だが、士はいとも簡単にこなした。
それはこの世界での魔術全てを士に教えた【叡智】の影響か、それとも士の才能か。おそらく両方だろう。
ともかく、士はこの時点で勇者達とはステータスも魔法についても大きく差を付けていた。それはこの国が予想できないほどに。
◇◇◇◇◇
部屋に戻った士は先程の謎の場所。
そこで手に入れたある物を机に置き、それを見ていた。
ある物とは【七罪の覇者】の皮。つまり、士が戦った龍の皮だ。それが丸々一体分。さらに爪や牙、鱗などの素材も所持しているのだ。
さて、龍の素材とは最高級の物であるというように言われている。そしてその使い途は武器や防具、さらにはマジックアイテムや触媒、魔術薬など多岐にわたる。
現在士はこの素材をどう使用するか迷っていた。
いや、実際は決まっている。
それは霊装の強化と服の製作、そして各種薬剤の製作だ。ただ、それを行う場所がない。霊装の強化は霊装の能力ですぐにできるため、特に問題はない。服や薬剤の製作はジョブの効果により手に入れたスキルでできる。
ただ、それでも場所がないのだ。服はなんとかできるかも知れないが薬だけはどうにもならない。
「……服だけ作るか」
士はそう呟くとベッドを異空間へと収納する。士が【叡智】で最初に調べた魔法である【異空間無限収納】だ。
そして、素材となる皮と鱗を取り出し、スキルを発動する。
発動するスキルは【神仙匠】。ジョブ【技神仙】の効果の一つとして手に入ったスキルだ。
このスキルの恩恵は【全ての技術系スキルを使用でき、何者も到達できない物を造れる】。そんな破格のスキルに士のパッシブスキルである【全の極み】や【極みの先へ】が上乗せされる。
まず、皮は幾つもの魔法処理をされ【七罪の龍革】へ。鱗は加工され糸の様になり【龍糸】となり、さらに鬣をと合成し【龍錬糸】となる。
その後、革は裏地にルーンを彫られ、魔方陣を描かれ、緋色に染色(持っていた赤ペンから色素の情報を抽出し、スキルによって染料化した)された龍錬糸で装飾を施されたズボンとなり、龍錬糸はシャツとなる。これを何枚も造り、士はこれらを異空間へ収納する。因みに色は全て黒である。
そして時刻は午前2時40分となり、士はようやく眠りについた。
五時間後。
「カムイ殿、朝でございます」
士はメイドのそんな一言で起こされることとなる。
ここ最近のお約束である。
「んぁー、はいはい」
士は適当に返事をするとベッドからもぞもぞと這い出る。
だが、這い出て、脱いでいた制服や新しいTシャツを着たところで気付く。いつもなら直ぐ様なくなるメイドの気配がまだ扉の外で感じられることに。
しかし、それをすぐに思考の外へと追い出すと、士は深呼吸を繰り返し体内の気を循環させ整える。
「よし、行くか」
士は呟き、部屋から出る。
「おはようございます」
「ん、ああおはよう」
部屋から出たところでメイドから挨拶され、士は戸惑いながらも挨拶を返す。
「此方をお持ちください」
そう言いながらメイドは士に布製の袋を渡す。
その中には黒を基調とした服が数着入っている。
「これは?」
「本日より戦闘訓練が始まりますので、その際に来ていただくものです。後程普段着もお渡しします」
「あー、わかった。ありがと」
士はそれだけ言うと食堂へと向かう。
そして、その途中で意図せぬ人物と出会う。
「あ」
「よう」
高槻葵。
恐らく女子達のなかでは……いや、士を除く勇者の中では現状最も強い少女。そして…士と同じくスキルに【高槻泰山流】というなんらかの武術のスキルを持つ者。それはおそらくここに至るまで師事して得たものだろう。
因みに士のスキル【神居陰陽流】は家の蔵に眠っていた古文書を解読して得たものだ。つまり、親兄弟どころか親類も【神居陰陽流】などという胡散臭い武術は使えなかった。
まあ、それはさておき。
「今日は遅いんだな」
士は葵に言う。
因みに「今日は」というのは何時もは士が最後に食堂に着くからであり、今日もそうだろうという予想のもと言っている。
「ええ、色々あってね」
「そうか」
葵の返事を聞いて士はそれだけ口にする。
「(話すこと無いんだけど…)」
まあその理由は話題が無いの一言に尽きるが。
だが、このままだと何かよくわからないが気まずい雰囲気のまま数分間歩かなくてはいけなくなる。士はよくわからない不安を抱いていた。
「ねぇ」
だが、そんな不安を解消するかの如く葵の方から士へ話し掛けた。
「なんだ?」
士は内心「気まずい雰囲気回避できる?ねえ、できる?」と思いながら極めて冷静な声音で返答する。
「神居君。貴方はこの国をどう思ってる?」
だが、葵の始めた話題は王城の廊下でどうどうとするような物ではなかった。士は一度葵を見るとおもむろにスマホを取り出し、ノートを起動する。そして、そこに何かを打ち込み葵に見せる。
「……別にどうも」
「……そう」
士のスマホに打ち込まれたのは【高槻さんはどう思う?いや、聞くまでも無さそうだけど。
俺はこの国はどこか胡散臭いと思ってるよ、最初から】という文。
「ところで、高槻さんに聞きたいことがあるんだよね」
士は再びスマホに何か打ち込みながら言う。
「なにかしら?」
「高槻さん達ってさ、付き合ってんの?」
「なっ!?」
そして、スマホを見せながら訊く。この際、話題などどうでもいいから情報交換だ。というのが今の士の心情である。
そして、スマホに打ち込まれているのは【ステータス情報で嘘を伝えてたよね?】という言葉。
葵が驚いた声を上げたのは士の問いとスマホに打ち込まれた問い両方の影響だ。
「いいえ、付き合ってないわ」
「そうなんだ。てっきり付き合ってるのかと思ってたよ。
じゃあ、俺がアタックかけてもいいってことか」
「はぁ!?」
「今日の夜、部屋行くから」
「え、ちょ」
わかっていると思うが別に告白なんかではない。いや、確かに士が葵のことを「おー、良い女」と思っているのは確かだし、嫁にするならこういう娘が良いっていう士の条件に葵がピッタリ当てはまっているのは確かだが、今はそれらは関係ない。
部屋に行くと言ったのは「秘密裡に情報交換」がしたいからであり、決して夜這いなんかではない。
そう、決して違うのだ。すごく良い笑顔で言っているが違うのだ。
「ところでさ」
「なによ…」
「葵って呼んでいい?」
「ファっ!?」
これも副音声で【男女が同じ部屋に行くくらいだから何らかの関係を持っていると見せたほうがメリットがある。まあデメリットもあるけどメリットのほうが大きい。それと高槻さんって呼ぶのメンドイ】という言葉がつく。
「ダメか?」
「……別にいいわよ」
「んじゃ、俺のことも士って呼んでくれ」
「……わかった」
「(あれぇ、なんか反応がおかしいような…)」
士は妙にもじもじし始めた葵を見て思う。
そして、気付く。そう、今さら気付いた。
「(……あ…ちょ…俺…あ、うん……やっべぇ、完全に告白じゃないですか、やだー)」
言い方が完全に告白のようだったことに。
いや、ただ気付いただけいいのだろう。気付かないよりはいいはずだ、たぶん。
そんなこんなで食堂に到着した士達は扉を開け、席に座る。だが、今までと違う。そう、士の隣に葵が座ったのだ。
基本的に大きな長テーブルに座るので席自体は余っている。それこそ、一席ずつ開けて座っても士達全員が難なく座れるほどに。しかし、これまでは大体座る位置は決まっていた。男連中が下座に固まり、その横に女子達がという感じだ。もっと具体的には零治、謙也、聖と並びその対面に士、優花、美織、葵と並んでいた。上座にはユリスが座っていたが割愛する。
そして、今回は士、葵、優花、美織と並んだ。そう、いつも一席ずつ空けて座っていたところに葵が座ったのだ。それ即ち、優花と士の間に隔たりが生まれるということである。
そうして何故か妙な緊張感を持ったまま朝食へと突入した。
「それじゃあ、魔術はまだ後ってことかい?」
「はい。現在、我が国最高の魔術師と呼ばれる賢者様がこちらに向かっています。彼女にケンヤ様達の指導をお願いしています」
ユリスが謙也の問いに答える。
今、行っているのはこの後行われる訓練についての説明だ。そしてそこで話題に出たのが元の世界には無かった異能──魔術についてだ。しかし、ここで言っておくと魔術とは違うが士は元の世界でも似たようなことは行えていた。気を使用しての物質破壊や身体能力の強化がそうだ。まあ、それはおいておこう。
兎に角、訓練と聞いて皆が魔術を思い浮かべるまでは早かった。だが、士からすればそんなものは既に終えたステージである。それに賢者と呼ばれていても彼の禁忌魔導書を造った賢者とは全く縁も所縁もないことは分かっている。まず、彼の賢者の縁者はもはや存在しない。たった三名の弟子も既に全員が死亡しているし、賢者には親類も存在しなかった。それらの事は禁忌魔導書を取りに行く際に【叡智】によってわかっていた。
結論としては賢者などという者の教えはほぼ無駄である。
余談だが、賢者の【七罪魔術】、別名【禁忌魔術】【禁術】【禁呪】──まあ色々あるが──について知っているものは現在では極々僅かだ。
「それでは二十分後にここに集まってください」
士がぼんやりとしているとユリスのそんな言葉と共にこの場はお開きとなった。
二十分後
「全員揃ったようですね」
各々、服を着て食堂へ集まった勇者達を見てユリスが声を掛ける。だが、よく見ると不機嫌そうな少女が一……いや二名。それと怪訝な顔をした者が三名。前者は優花と葵、後者は聖、美織、零治の三人だ。
その理由は……また士である。正確には士の服だが。士の服は普通の布製。しかし、葵達は魔錬糸と呼ばれる糸で作られた服を着ている。
要するにこの国はまたやっているわけである。士への全く効かない嫌がらせ(笑)を。それに士の能力をもってすればこの様な服も最高級品となんら変わりなくなる。ジョブ【魔神仙】により取得した【刻印魔法】。それによりこの服は軽く国宝級へとなっているのだ。
そろそろ、この国は士の能力を理解するべきである。
「それでは向かいましょう」
そして、そんな空気を気にすることなくユリスは供の騎士と共にケンヤ達を案内する。相変わらずケンヤに媚びているユリスである。
ユリスの案内に従い歩きながら数分後。士達は初めて城内部から出ることとなる。その更に十数分後、王城の敷地内に建設された修練場へと到着した。大きさは東京ドーム一個分ほど。それほどのものが敷地内にあるのだからこの国の大きさが窺えるというものだ。
中に入っても空がよく見えた。
それが意味するのはこの修練場は屋根が無いということだ。しかし、ここは王城の敷地内でありなにかがあってからでは遅い。さらに屋根が無ければ雨の日の訓練ができない。
そんな疑問をユリスは解消してくれた。
「この修練場は全体に強力な結界が張ってあり、雨などの天候や魔術の流れ弾を気にすることなく訓練できるんです」
ユリスが説明をしていると後ろからガチャガチャと金属音が聞こえた。その音の主はどうやら騎士のようだ。
「殿下!」
「なにごとですか?」
「は、悠久騎士団団長ランパート将軍が勇者の訓練に遅れるとのことです」
「……はぁ、そうですか。
それならば自主練習をしていていただきましょう。
将軍はどれくらいで来ると言っていましたか?」
「早ければ1時間ほど……とのことです」
「わかりました。下がって結構です」
騎士はユリスの元へ走っていき跪くと報告を行う。
話の流れから察するに士達の訓練をする予定だった者が遅れるようだ。
「皆さん、此方の不手際で将軍が遅れるそうなので一旦自主練習ということでよろしいでしょうか?」
「構わないよ」
ユリスは士達の方へ向き直るとそう訊く。
答えるのは謙也だ。そして、ここのところ妙にでしゃばる彼に士が「でしゃばり謙也」という小学生のようなあだ名を付けたのは内緒だ。
「ありがとうございます。
訓練用の木剣が用意してあるので、そちらを使ってください」
「霊装じゃダメなのか?」
「これは訓練ですので。それくらい考えてください」
珍しく士が質問するがいつもよりも棘のある口調でユリスが答える。愚者の子は愚者なのだろうか。
「へーへー、そうですか。んじゃ、さっさと始めますかねぇ」
士はその返答にぞんざいに返すとツカツカと木剣の入っている籠の方へ歩いていく。優花達もそれに続く。
「お……しっかり木刀もあるな」
士は独り言を言いながら木刀を物色し、一振りを選びとるとさっさと籠から離れていく。
そして、準備体操を始める。
準備体操を怠って怪我をしましたなんて格好がつかないから当たり前だ。
数分後。
念入りに体操を終え、士は足を組み精神統一を始める。その頃には葵や優花達も武器を選び終わっている。
士が精神統一をしていると葵が近づいてきた。
士は目を開き、その姿を視界に入れる。
「手合わせしてもらってもいいかしら?」
葵は士の近くに寄ると突然そんな事を言い出した。
「なんで俺と?
あっちのケンヤ様ーってちやほやされてる奴とやればいいだろ」
「言い方は悪いけど…相手にならないのよ」
「ふーん、まいっか。やるよ」
士は木刀を持って立ち上がると少し離れたところまで移動し、葵の方を向く。
「どうやって始める?剣道と同じルールでやるか?」
「いや、やめておきましょう。そうね……なら、誰かに開始の合図をしてもらいましょう」
「いいんじゃないか」
「ならそれで決定ね。美織ー!」
葵は美織を呼ぶ。
「なにー?」
「仕合するから開始の合図お願い!」
「誰とするの?」
「士とよ」
「士……えっと神居さん?」
「そうよ」
「なんで呼び捨て?」
「そう呼べって言われたから」
「そうなんだー。ん、わかった」
「お、なんだなんだ」
二人が話していると零治が会話に入ってきた。訓練用の盾と木剣を持っている。零治の隣にはちやほやされている謙也も居る。
「葵が仕合するんだって」
「仕合?誰と?」
「神居さんだって」
「あー、あい「え、先輩が仕合するんですか?」
美織が零治達に説明していると優花が割って入った。
しかも若干興奮している。
「え…うん」
「そうなんですか!」
さすがに飛び跳ねたりはしないが優花はその感情を隠そうとしない。
「なにがあったんですの?」
「葵が仕合するんだって」
そこに聖とユリスも入ってくる。
「兎に角、美織は開始の合図お願いね」
「わかった」
葵は美織に再び頼むと士から凡そ8メートル程離れたところに立った。
「なんか知らんが観客ができたな」
「そうね」
「まあ、始めようぜ」
「ええ」
その言葉と共に葵は木刀を正眼に構える。
だが、士は右手に木刀を持ってダラリと下げているだけだ。
「構えないの?」
「構えてるさ」
「……無行」
「そっちでもその言い方か」
士と葵は言葉を交わす。
「もういい?」
「ああ」
「ええ」
美織の確認に二人はしっかりと答える。
「じゃあ……始め!」
「はぁあああ!!!」
美織の合図と共に葵は突撃。一切の容赦のない突きを放つ。
速度もあり、避けるのは至難の技だろう。だが、士はそれを避ける。体の中心目掛けて放たれた突きを左足を引き体を90度回転させることにより避ける。
しかし、葵は途中で突きを払いへと変化させる。士はこれを下から振り上げた木刀で弾く。と、同時に葵は弾かれた勢いを利用し距離を取り、再び攻めようとして動きを止める。
その視線の先では士が先ほどまでとは違い、木刀を中段に構えていた。
動きが止まったのは別に構えが変わったからではない。隙が見付からないからでもない。第一隙が無いのは先ほども同じだ。だから開始と同時に仕掛けた。
だが……これはさすがに……と葵は思う。
隙はない。それは変わらない。しかし、先程までとは全てが根本的に違う。先程まではせいぜいが反撃を受けて退かざるを得ない程度のイメージを受ける程度だった。
だが、今は違う。少しでも間合いに入れば……いや、ここから動こうものなら即座に殺される。そんな明確なイメージが脳内に幾つも流れる。
「なあ」
「なんですか?」
「神居は強いのか?」
零治が動かない二人を見て優花に訊く。
「強いですよ」
「言い切るんだな。その理由を具体的に教えてもらえるか?」
「中学一年から全国大会に出場、すべて優勝。
他には全日本剣道総合連盟……連盟と協会が合併したやつですけど…それの剣道部で3段、剣術部で8段。連盟主催の中学生以上年齢制限無しの全国大会で9連覇ってところです」
全日本剣道総合連盟というのは剣道連盟と剣道協会が合併したもので、剣道部は当て身などが無しの一般的なモノ、剣術部が当て身などありのモノだ。前者は年齢によって取得できる段位が決まっているが後者は強ければ段位を取れるという制度となっている。
「ただ…」
「ただ?」
「これは剣術に限った話で、柔道、空手などでも似たような成績を持ってます」
優花は淡々と士について説明する。
「それは、すごいことなのですか?」
ユリスが美織に訊く。
「すごいですよ。国の中では剣では同年代で敵無し、さらに剣をやる人間の中でも敵無しってことですから」
「つまり……国で一番強いということですか?」
「簡単に言えばそうです」
美織は簡潔に答える。
そして、顔を向き直したとき、状況が動いた。
「どうした?」
「はぁっ、はぁっ」
士は荒い息をする葵に声を掛ける。
この二人は最初の攻防以外動いていない。葵がこうなっているのは何らかの動作が原因ではない。
「(まさか…こんなに差があるなんて)」
ただ、構えて睨みあっているだけ。
ただそれだけで葵は消耗し、士との力の差を実感していた。
構えて、相対して初めてわかる士の内包する圧倒的なまでの力。その片鱗を見ることでさえ不敬だと言わんばかりの圧力。
そして……今までに受けたことのないような剣気。
ただ、そこに居るだけ。それだけで葵は潰されそうになる。
剣気というのは別に士の使う気のようなものでは、ない。剣の気迫とでも言おうか。一流の剣士だけが持ちうる相手を萎縮させる空気感のことだ。
葵は今まではこの剣気を叩きつける側だった。
今までで叩きつけられた剣気は祖父が一番強かった。
だが……もはやそんなモノは人間によって潰される蟻のように小さな存在としか思えなくなった。
「……降参よ」
「……わかった」
そして葵は屈した。
だが、折れてはいない。
「……また、お願いするわ」
「ああ」