課長の孝徳
「近藤くん、課長昇進おめでとう」
「ありがとうございます」
近藤は上司に昇進祝いで飲みに連れてきてもらっていた。
「ところで近藤くん。君はそのスーツはどこで買ったものだい?」
そう聞かれて、近藤は少し恥ずかしくなった。自分がいま着ているスーツは、総合ショッピングセンターで1〜2万円で購入した安物だったからである。
「やはり、そうか」
と上司は笑ったていたが、まじめな顔をして、
「これからは、得意先の幹部に会うこともある。しっかりしたものを一着仕立てておきなさい」
と言った。
「はい。わかりました」
近藤は素直にうなずいた。
上司のように服の良し悪しもわかる人にはわかる。自分ももう平社員ではない。これからは自分も会社もあなどられることのないようにしなければいけない。
「人はまず見ためで判断しますからね」
「そうだよ。服装と言葉使い。そこをクリアしないと、人間性がどうとか、仕事ができるかどうか、と思われることもない」
「昇進を機に見直していきます」
「そうだね」
【孝経四章より】
先王の法服に非ざれば、敢へて服さず
先王の法言に非ざれば、敢へて道はず
先王の徳行に非ざれば、敢へて行はず
三者 備はり、然る後に能くその宗廟を守る
蓋し卿大夫の孝なり
(むかしの立派な王が定めた制服でなければ身につけず、むかしの立派な王を規範とする言葉でなければ使わず、むかしの立派な王が示した徳ある振る舞いから外れたことは行わない。三者が備わってこそ宗廟を守ることができる。これが卿大夫の孝徳である。)
【ビジネスへの応用】
課長クラスの人間は、
きちんとした服装を心がけなければならない。
礼儀をわきまえた言葉使いをしなければならない。
見苦しい行動をとってはならない。
服装・言葉・行動をしっかりしてこそ会社に貢献できる。