社長の孝徳2
「頼むよ」
入社してすぐに握手してくれたのは社長である。
「はい。よろしくお願いします」
僕はそう言って、社長の手をとった。がっちりとして、暖かい手だと思った。
その後も、
「頑張ってるかい!」
こんなふうに社長に会うと声をかけられたり、肩をたたかれたりした。ひじょうに親しげである。
役職持ちのベテラン社員たちにも威張らず、もの柔らかだ。かといって舐められることもなく、自然と敬意を払われている感じである。
こういう会社の雰囲気を作り出すのは、社長の人徳のたまものであろうと思う。
同僚たちとも、
「うちの社長は、なんか格が違うよな」
などと言いあっている。
【孝経八章より】
明王の孝を以って天下を治むるや、敢て小国の臣を遺さず
而るを況んや公・侯・伯・子・男に於いてをや
故に万国の歓心を得て、以ってその先王に事ふ
(賢明な王が孝徳で天下を治めていたとき、身分の低い臣下だからといって捨て置くような事はしなかった。ましてや公・候・伯・男のような爵位ある者に対しては言うに及ばずである。ゆえに万国の人びとは喜び心服して、王に仕えた。)
【ビジネスへの応用】
立派な社長が会社を経営するのに、新入社員だからといって侮るようなことはしないものだ。
ましてや、役職を持ったものを無碍にすることなく、その地位にふさわしい扱いをした。
こういう社長の下では社員たちは心服して、会社のために一生懸命働くものである。