先人への敬意
私は毎日社長室に飾ってある三人の写真を見上げる。
歴代の社長たち、私の曽祖父・祖父、そして父だ。みな他界しているが、こうして写真が飾ってあるとまるで天から三人が私を見ているようだ。
私で四代目。そしていずれはこの座を息子に引き継がせることになるのだろう。
息子は、
「俺が継いだら親父の写真を三人の横に飾ってやるよ!」
と言っている。
やめろやめろと言うのだが、そのほうが気が引き締まるのだという。確かにそういう側面もあるだろう。わたしもそうだった。
今の世の中、流行も移ろいやすい。会社をこれからも安定して存続させるために向上心を持っていかねばならない。息子は会社を守っていくために人脈を大切にしたり、研究を怠らないように気を配りながらしっかりやっているように見える。
「ずっと続いてきた会社を俺の代で潰したくないからね。しっかりやっていくよ!」
息子ははりきって言う。
そうあってほしいものである。
【孝経十六章より】
宗廟敬を致すは親を忘れざるなり
身を修め行を慎むは先を恥むるを恐るるなり
(祖先を祀って敬意を表するのは、親を忘れないためである。身を修め行動を慎むのは、先祖の名を穢すのを恐れるからである。)
【ビジネスへの応用】
歴史ある会社が立派な創業者や歴代の経営者を尊敬して忘れないようにするは、会社の看板に泥を塗るようなことを避けるのにつながる。そうするために社員は自己啓発に勤しみ、おろかな行動を慎むようになるからだ。