ビジネスマンと家庭
はあ、と陰気なため息を山形はついていた。
彼は最近家庭のことでまいっていた。子供の進学のことで妻と意見が一致しなかった。連日ケンカのような言い合いが続いているのだ。
「これまで私に任せきりだったのに」「あの子のことに関して口だししないでほしいわ」
などとさんざんに言われて腹も立っていた。言われるとつい、その子供の学費を出しているのは誰だと反発してしまう自分がいる。だが、一人になると、
(考えてみると、子供に関してはノータッチだったからなあ)
と弱気になってしまう。妻の言い分のほうに分があるような気もする。
ここにきて自分は家長として家族としっかりコミュニケーションをとったり、きちんと率いてきたかと考えると肯定的に考えられない。
いや、家族のことだけではない。
「会社でもそうだった」
部下をしっかり率いているのだろうか? 惰性のように毎日仕事をこなしているだけではないか?
なんとなく仕事をしているだけ、なんとなく家庭があるだけ。そんなふうになっていないか、彼は自分を見つめ直していた。
【孝経十四章より】
家に居りて理まる
故に治官に移すべし
(家に居て筋を通す。そうすると、その道理に士官さきの統治もかなう)
【ビジネスへの応用】
家をしっかり治める。
同じようにしっかり会社も務める。
すなわち、家もおさめられない者は会社もおさめられない。