名をあげよ
本内容は、十八章からなる『今文孝経』をテキストとして話を進める。
別系統の二十二章からなる『古文孝経』との違いなど、興味のある方は各自で調べていただきたい。
「田中さん、この間テレビに息子さんでてたじゃないか! 東証2部に上場して、すごいじゃないか」
「いやぁ。そのうち潰れちゃうんじゃないかって、心配してるぐらいなんですよ」
そう言いながらも、知人に誉められ田中は嬉しそうである。
「いやいや、たいしたもんだよ。勇気くんは」
田中の息子の勇気は、40才半ば。田中の始めた小さな会社を引き継ぎ、あれよあれよと大きくしていった。
当初は大丈夫かと心配したものだったが、今は自分がとやかく言わないほうが上手くいくと思っている。すでに引退して会社が大きくなっていくのを眺めている。会社の景気も良く、息子もどんどん立派になっていくのを見ているのが一番うれしいことだ。
「あの小さい頃からよく知ってる勇気くんがね〜 立派になったもんだよ」
田中はそう言われてうれしいのだが、つい口では、
「なにをおっしゃる。まだまだですよ」
と言ってしまう。
「厳しいね、親父さんは。ま、ともかく勇気くんによろしく言っといてよ! じゃあね」
「ありがとうございます」
そう言って二人は別れた。
田中は息子が成功者になったおかげで、自分も鼻が高かった。
【孝経一章より】
身を立て道を行ひ、名を後世に揚げ、以って父母を顕すは、孝の終はりなり
(身を立てて孝道を行い名を後世に残す。そのことが父母に栄誉をもたらして孝徳は完成する。)
【ビジネスへの応用】
ビジネスで成功し名声を手に入れ、こんな成功者を育てた「親は立派な人だ」と世間に言われるようになって、親孝行は完成する。