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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第五章~家庭の事情~
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5.爆発しろ

 100話です!まだまだ続きます!

 待ち合わせの時間の5分前。今村がそこに着くと人だかりができていた。


(…このパターンは…祓だな。)


 人の間を難なくすり抜けるとドーナツの中心地帯に祓が待っていた。祓は今村を見ると駆け寄る。


「先生!」

「…よぉ。待たせた?」


(…何かもの凄い場違い感が…睨むなよ殺したくなるだろ…)


 祓に挨拶をしながらうっかり殺意に反射的に反応して睨んでいる人を殺しそうになって苦笑する。祓は白いワンピースにボストンバッグの出で立ちで今村を見る。今村の服装はローブだ。…が、一応「錯視錯覚」で適当に弄ってあるみたいだ。


 ―――あー敵意で思ったけどこんなに人が集まってると皆殺しにしたいな~―――


 今村を見たついでに祓が感想を聞こうとテレパスをしたら今村はそんな感想を持っていた。しかも表面上は笑顔だから怖い。


 ―――ってか平日の真昼間から何やってんだこいつら。…まぁあっちの台詞かもしれんが…―――


「行こうか。」

「…はい。」


 いきなりの思考の切り替えに戸惑いつつ祓は今村に付いて行く。そこで今村が「あ」と声を漏らす。


「似合ってるよ。うん。」

「え…は…あ…ありがとうございます…」


 突然何を言うのだろうかこの人は。臆面もなくそう言ってのける今村に周囲がざわめく。


(…まぁ一応恋人設定だからな。キモいとか思われても言ったという事実はあるにこしたことはない。)


 今村はそんなことを考えていたのだが、祓のテレパスは混乱状態で使えていないので聞こえていない。


「さ、行こうか。」

「はい。」


 祓は今村に付いて行った。


 まず最初に向かったのはジェットコースター。


「…平日だから空いててすぐに乗れたが…」

「…正直自分たちで飛ぶ方が速いですからね…」


 あんまり楽しくなかった。次、高速メリーゴーランド。


 ―――これが本当の馬刺しだよなぁ…胴体串刺しって感じの…こいつら平気な顔で回ってるけど可哀想に…ん?もしかしてこれは輪廻転生を表しているのか?淡々と同じ場所を回り続ける…だとすればこの馬は比喩。意味もなく馬車馬のごとく働かされる現代人のことを…?―――


(…何か悟りを開こうとしてる…)


 因みに今村が前に乗って後ろに祓が乗っている。今村が変なことを考えている間祓はくっつくかくっつかないか悩みに悩んで腰に手を回し少しだけくっつくことにした。


 ―――そうか!この串は社会における現代人の…―――


 今村も悩んでようやく串が現代人の心の持ちように関連すること、つまり…と自身で納得できるような答えを見つけた所でメリーゴーランドが止まり、二人は馬から降りる。


「あ、止まった。…ってアレ?今俺何考えてたっけ…」

「…行きましょう?」


 折角のデートなのにメリーゴーランドで悟ってずっと変なことを考えられても困る。祓は今村の手を引いて次の場所へ向かおうとさせる。


 ―――手…気を付けないと溶かすな…―――


 ロマンチックの欠片もない今村。祓の白魚のような指が絡んでいる自身の手を見てそんなことを考えた。


(…ちょっと…何か…違う…)


 祓はそう思いつつ次にめぼしいものを探していく。その途中で今村が祓の手を引いて止めた。


「?どうしたんですか?」

「お化け屋敷行こうぜ。」


 今村の顔には笑みが浮かんでいる。


「わかりました。」


 祓はすぐに了承した。若干の下心を持ってその提案を受けたのだが祓は気配探知を覚えさせられたので従業員が出て来るだけのお化け屋敷では驚けそうにない。


(…悲鳴を上げて抱きついたりしたいけど…タイミングが…)


 そんな感じで祓と今村はお化け屋敷に入った。そして、


 ―――おーいっぱいいるな。―――


(え?)


 入るなり今村の思考が流れてくる。祓の気配探知にはが感知できていない。…だが、テレパスに何かが引っ掛かった。


 ―――羨まし…妬まし…生者ども…はらわた食い千切ってくれる…―――


「え…」

「ん?どした?」

「い…今変な声が…」

「あ、霊感あるんだ。多分そこにいるのが何か言ってるやつだろ。」


 今村は薄く笑って部屋の墨を指す。祓がそれを認識しようと思ってしまったのが間違いだった。見えてしまったのだ。それが。

 それはぽっかりと空いた眼窩から黒ずんだ血を流し、腸をはみ出させて髪をざんばらにして祓の方に顔を向けた。


「ひぅ…」

「…ホルモン喰いたい…」


 間違ってもそんな感想を抱くのはおかしいと思いながら祓は冗談抜きで怖かったので今村にしがみつく。


 ―――おぉ…何か役得。…一応彼氏としていいとこ見せないとな。―――


「『悪しき者よ、咎人よ。汝ら我が目の前から疾く往ね!』」


 今村がそう命令するとその霊は消えていった。


「…大丈夫か?」


 今村は祓の華奢な背中をさすりながらそう聞く。だが頭の中が怪談でいっぱいだった。祓はお化けが怖いと初めて思った。


「…あ、」


 ついでに今村が新しい霊を発見した。体が変な方向に捻じ曲がったまま不自然な動作でこちらに向かってくる化物だ。


 ―――何でこんなに霊が多いんだろ…そう言えばここの遊園地って大戦で大空襲にあって死亡者がめっちゃ出た所だったな…あぁ、成程。…―――


 今村はお化け屋敷のオブジェである墓石にぺたぺた触ってみる。


 ―――間違いないな~これ本物の墓石だ。…罰当たりな…―――


 祓が今村に抱きついて色んな意味でドキドキしていると四肢がねじれた化物と目が合った。そしてその化物はにちゃっとした笑みを浮かべるとあり得ないスピードで祓に向かってきた。


「きゃぁぁあっ!」


 祓は迎撃しようとするが相手は霊体。一切の攻撃が通じない。あたりに被害が出ないように小規模の魔法を使ってみたが消えない。


(こ…こうなったら…『我が願い…)


「『死神の大鎌』あいよっと。」


 今村が難なく化物を斬り捨てた。祓は潤んだ瞳を今村に向ける。


「しぇ…せんしぇえ…も…出ましょ…?」

「え?お前幽霊怖いの…?」


 祓の顔を見て初めて今村は祓が本当に怖がっていたことを知った。


「こ…怖いですよ!」

「…そうか。じゃあ俺が守るから頑張って外まで耐えてくれ。」

「え…は…はい!」


 今村の何げない言葉にもの凄い感情の高鳴りを見せる祓。今村の思考を見てどういう意味だったのかなどは聞きたくないし、関係ないと思った。

 因みに今村の思考中にはこうあった。


(まぁ外に出ても結構いるけどね。)


 と。


 その後は祓を胸にくっつけたまま今村はお化け屋敷を踏破。途中従業員がリア充粉砕!とばかりに果敢な攻めを行うと先程から色んな霊を見てきている祓が怯えて今村を思いっきり抱き締める。

 今村じゃなければ背骨を折られて死んでいるレベルで抱き締めているが、他の人間が見ただけで力加減など分かるはずがない。

 結果従業員の攻勢は激しくなり、怨念も増す。


 するとその怨念に釣られて霊が寄って来る。そして祓が怯えて…という循環を何回かしてお化け屋敷を出たころには祓は自力で動くことが出来ず、今村に背負われていた。


「…も…もう無理です。少し休憩させてください…」

「…そうだな。」


 頭の後ろからかかる澄んだ声にそう反応して今村は祓に従って軽いフードコーナーの方に向かった。




 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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