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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第五章~家庭の事情~
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4.面接指導

 そういうことで早速祓と実際の打ち合わせに入る。


「で…ではお願いします!」

「うん。じゃあ傾向と対策から行こうか…」


 傾向と対策?祓はその言葉に疑問を持ったが、とりあえず今はそんなことはどうでもいいか。と割り切ることにした。


「まず父親の方だが…傾向だが、アレは本能で生きてるから基本適当にあしらっていい。対策は適当に筋肉を持ち上げれば簡単におだてられる。」

「…えーと…」


 祓はこれからデートをする気だったはずの今村が何故か対策を始めたのに切り替えが追い付かない。


「次に母親。アレは何かゆらゆらしてるからよく分からん。気分家だからテンション次第。まぁ一番最初に緊張をほぐそうとアイスブローキング的な簡単な話題を提供してくると思う。対策としては自己をしっかり持つことと、質問に対して簡単にきちんと答えること。」

「ゆらゆら…?」


 人を表現する単語ではない言葉に祓はどう返していいか分からなかった。


「最後に妹…これが厄介でな。ちょっと4~5回ばっかり命救ったら軽いブラコンになった。」

「…4~5回も命に何かあったんですか…」

「ん?まぁ…家のリビングで彼氏に刺されかけたりとかしてた。血で床が汚れると嫌だから彼氏を適度にボコッたりしたなぁ…あはは。」


(…妹さんが可愛くて助けたんじゃないんですね…)


「死相が出てた時は身代わり人形渡したな。…あれ俺が前世の能力を本当に持ってたかの実験だったんだけど実際に車が突撃して来てその瞬間身代わり人形が破裂して車が逸れたって。…って話も逸れてたな。」


 今村は結構話したので月美が淹れたお茶を飲んで続ける。


「兎に角あいつが一番めんどい。俺を好きな奴とかいる訳がないのに生半可な人じゃ俺を任せることはできないとか言ってるからな。任せるも何も相手がいないっての。」


 笑う今村に祓は全く納得いかない。少なくとも祓が今までに見て来た中だけでも今村に好意を寄せている人間が大量にいる。


(…先生はもっと自分の身の回りに目を向けた方が…いや、でも向けたら私…捨てられるかもしれない…)


 恐怖が鎌首をもたげて祓を襲う。そんなことを払拭しながら祓は今村の話に耳を貸す。


「呉羽…あぁ妹については俺を褒めると多少は機嫌が良くなる。褒めるところとかないと思うが…頑張ってくれると後が楽だと思う。まぁ適当に言ってれば確かめようがないし、受け入れられると思うから当たり障りのないことを言ってくれ。」

「…はい。ですが褒めるところはいっぱいありますよ。」


 どうせ聞こえないのだろうと思って小声でそう言ったが今村は案外普通に聞いていた。


「流石フェデラシオン出身。俺がいる地域には褒める文化はないからなぁ…」


 今村は国柄でそう判断したようだ。祓はそこで気付く。


(…好意がないと先生が判断するようなことは普通に聞こえるんだ…)


 だが分かったところでどうしようもない。好意がないと判断することしか聞こえないということは聞こえるように好意を伝えたとして、反応が返って来てもそれに今村は全く気付いていないのだから。


「…何か困った顔になったが…まぁ俺の良い所は後で頑張ってくれ。あ、でもアレだ。呪具作りがうまいとか一般人向けじゃないのはなしな。」


 祓が黙ってしまったのを自身の良い所を探そうとして困っていると受け止めた今村は難しいかなと思いつつ少しばかり縛りを入れて祓にそう言って話を進める。


「で、こっからが本題なんだが…どういう経緯で彼氏彼女になったのかって言う設定がいる。この辺…出来るだけ要望を入れたいと思ってるが…まず初めにお前から告白したことにしてくれ。」

「え…」


(…寧ろもうしたんですけどね…)


 そう思いつつ了承しようとしたところで今村が遮った。


「勿論俺みたいなのに告白したとか言うのがプライドを傷つけることになるってのはわかってる…だが、俺から告白する姿が全く想像できない。」


 祓は少し考えた。…好きだと言ってほしいが今村が一方的に相手のことを好きになるというのは思い付かない。誰かを好きになっても相手に合わせるのが嫌で勝手に諦める気がする。


「…ですね。」

「告白の台詞は打ち合わせしといたほうがいい。本番でいきなり聞かれても困るからな。」

「…そこはべたに『好きです付き合って下さい』じゃ駄目なんですか?」


 実際祓はそう言った。だが今村は首を振る。


「それじゃ俺は信用しない。ドッキリの可能性が大きいって言って空気をぶち壊す。そして告白してきた相手に速攻で振られる。」

「…じゃあ何にするんですか?」


 いつか呪いが解けた時の参考に…と祓は脳内に刻み込むつもりで今村の答えを待った。

 今村は顎に手をやって考え込むと呟いた。


「…ないな。俺が告白されるってことが考えられん。やっぱりさっきのでいいや。『好きです付き合って下さい』で。」

「はい!」


 祓の言葉には二つの意味が込められていたが今村は片方しか気付かないだろう。でないと聞こえないのだから。


「じゃ、次。思い出編…これは今から頭の中に流し込むのと実際に現地に…」

「現地に行きます!」


(せっかくデートできるのに何でそれを逃すと思うんですか…)


 祓は至極当然のことを聞かれて食い気味に今村に答えた。


「…まぁそっちの方がいいわな。普通の人の目線で一般的な感想ってのは逆に不自然だよな…やっぱり個人的な感情も入れないと…でもアレだ。あんまり奇を衒い過ぎると逆に不自然になるからそこは気を付けて…」

「はあ…」


 その後も祓は今村の面接指導のような話を受けつつ話が終わるのを待った。そして話は明日行うことに決定したデートのことになる。

 今村は困っていた。


「…問題は…カメラ…魂が減るから映りたくない…どうするか…」


 実際に呪いを使う人にとっては少々困った問題だ。


(ツーショットとか撮りたいな…)


 祓は今村の写真を全く持っていないので少しそわそわして今村の決断を待った。


「…あー…でも彼女出来てはしゃいで撮ったことにして…自分で現像するか…で、面倒なことになる前に『ドレインキューブ』で回収して…これなら大丈夫か…」


 悪用とかできる人間もいないのに今村は用心してそうすることにした。祓はそれを補完することに決めた。


 それにしても傾向と対策やらアイスブローキングやら質問の内容に対する答えかた、想定外の質問が来た時の対処法など…祓はそんな話は本当に今村が好きなのだからそのまま答えればいいと思って結果聞き流した。

 今村は祓が話をあんまり聞いていなさそうだったので「スレイバーアンデッド」という薬を使って強制的に命令させろ状態にしてやろうかなどと逆恨みをしながら明日の話に移る。

 そこからの祓の食いつきに逆に引かされつつこの日の話は明日、学校を完全に無視して遊園地に行くことを決定したところで終了した。




 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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