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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第四章~新しい客~
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23.宴の後

「…何だそれ。」


 今村が月美から説明を聞いた後に放った一言はそれだった。


「…つまり元凶は呆けているあのゴミです。」

「それは聞いてたから分かるが…」

「シバいて来ていいですかマスター。」

「いいよ。」


 月美は呪具に入ってから今村のことをマスターと呼ぶようになった。呪具の概念がそう言っているようなのだ。

 それとは別に月美がムカついたので相馬はぼっこぼこになることに決まった。今村がそれを止めることは当然ない。


「あぁ、それが終わったら精神体だけ衆道地獄に落とすから殺すな。」

「はい。マスター。」


 月美は無表情に相馬をシバキ倒す。今村はその間に死なない程度に衆道地獄に入れることを事前通告しておく。今いる地獄とは別空間に存在しているそこは今村の前世の知り合いが経営しているので話はすぐについた。


「…さて、とりあえずお前は人権剥奪決定だ。今からお前専用の世界を創ってやる…まずは筋力に合わせた重力変化から手をつけるか…」


 「通信木」での話が終わると今村は結構頭に来ていたので相馬の性格から矯正すべく精神も鍛える場所を作り出すことにした。

 そのまず一歩目として相馬がボコられている間に閉鎖空間の一部を切り離した。


「改造が終わるまでは『幻夜の館』で暮らそうか…まぁ先に衆道地獄に行ってもらうが…」


 相馬は虫の息で聞いていない。月美が今村の方へ戻ってくる。


「一応…この場ではこれ位で…」

「オッケ~『魂魄剥離』行ってらっしゃい!」


 今村は相馬の魂を衆道地獄に叩き込んだ。そして近付いてきた月美に再度謝る。


「…それにしてもマジでごめんな…月美…」

「えーと…個人的にそんなに問題ないのですが…」


 月美も祓と同様に何故そこまで今村が気にするのかが全く分からない。普段の今村からすれば

「あっそう死んだ。へー。よっとこれでいい?」位で済ませそうなものなのだが過剰に気にし過ぎなのだ。祓は深く知ろうとしたがここでは不可能で断念せざるを得なかった。


「…まぁそれはそれとして、依頼人の所に戻ろうか。」

「あ、はい。…?茂みに何かいる…」


 祓の気配探知に何かが引っ掛かった。かなりの強さを感じとり、祓は臨戦態勢をとる。


「GRRRRR…」

「で…出ました!」

「あー…派手にやったからな~あ、お前らを祀ってた部族皆殺しにしたから。」


 驚く祓に対して今村は現れた巨大な肉食獣サーベルライガーと親しげに話し出した。


「GRR?」

「あぁ…弟子を殺したんでな。」

「GURR…」

「え?うん。これ。」


 隣で目を見開いている月美を紹介する今村。月美はそこでようやく我に返った。


「…は…初めまして…マスターの道具である月美と申します…」

「GR。」

「え、どうも…」


 月美とも会話が成立していて祓は仲間外れの気分になる。


「え、何て言ったんですか…?」

「お綺麗ですね…と…」

「…え?このライガーが?」


 まさか社交辞令を使う野生の獣がいるとは思わなかった祓は訊き返してしまった。月美は大きく頷く。


「でさー。弟子一人死んだし後一匹はアレだったから精神から鍛え直しでもう一人は危険だから帰したんでもう試練とか言ってる場合じゃなくなったんだよ。」

「GURURRRRUE?」

「あ~どうしよっかな。お前はそれでいいの?」

「…GURRO」

「あ、嫁の事も気になるからね。んじゃ分かった。軽く縛っとくから暴れんなよ~」


 今村は軽く浮かした状態でサーベルライガーの手足を縛る振りをしておく。


「んじゃ行きますか。」


 これで地獄での依頼は完了した。あとは現在結界で保護しているラバーの下へ向かい、研究所に引き渡せば終了だ。



















「…これで終わりだな。」

「は…はひ…」


 血の宴の後、今村は帰る途中でサーベルライガー長男を捕まえて、結界の中でおそらくルカに物理的に寝かされたラバーの下に戻った。


 ラバーはサーベルライガーの親子を見て狂喜したがそんなことは適当にあしらって「シルベル君」という呪具をラバーに渡して研究所の位置情報を入れると(その関係で一時的にラバーは右と左が分からないレベルの方向音痴になったりした。)「翔靴しょうか」と呼ばれる呪具で空中を駆けて「シルベル君」のナビゲーションに従って移動した。


 結果、研究所には30秒かからずに着き、ラバーは目を回している。


「…何か凄いですね。」


 自身が呪具になっているので使われることで何となくだが今村が何をやっているのかが分かり月美は尊敬の念を禁じえなかった。


「さて、そんなことはどうでもいい。さっさと中に入ってこいつを引き渡さないとな。」


 そう言ってサーベルライガーの鬣をちょっと撫でまわす今村。この時点で祓はテレパスを使えるようになっていたのでサーベルライガーの心が読めるようになった。


『あー…ボコされたらどうしようか…あ、最悪守ってくれんかのう。』

「いや、微笑ましく見守る。」


(…超呑気ですね…)


 祓は会話の内容を聞いてどんな顔をしたらいいのか分からなかった。


『というより妻の怒鳴り声がここまで聞こえてるんじゃが…』

「どれどれ?…あ~うん。荒れてるな。」


 狐耳を生やした今村は唸り声を聞きとった。


「何かここに居るって匂いでバレてるっぽいね。」

『ですのう…腹ぁ括って行きますか…』


 今村はローブで普通に持ち上げて中に入って行った。


『貴様!人間め!よくも我が家族を!』


 入るとメスサーベルライガーがガラス越しに吠えて来た。


「あー…思ってたより元気そうじゃね?」

『おかーさまー!』

「あっコラ折角『錯視錯覚』掛けてにんげんには見えないようにしてるんだから落ち着いてろ。バレたら色々面倒なことになるぞ。」


 今村はローブの糸一本で繋いでいるサーベルライガー長男に小声で注意した。勿論サーベルライガーたちの聴覚なら普通に聞こえる。


『…『作詞作曲?』というより子供たちの匂いがして姿が見えないから殺されたかと思ったけど…どういうことかしらパパ?』


 サーベルライガーオスは今村にやられてます!といった感じで身動きをとらなかった。


「あ、一応娘たちとも再会といくか?えーと…視覚改竄してっと『我が世よ開け』」


 今村は話が進まなそうだったので研究員たちの目をちょっと弄って敢えて空気を読まずに娘たちを召喚した。


『ん~?あ、ママ。』

『そだね。元気そう。』

『…おめでとう?』

『…相変わらずマイペースだね…』


 サーベルライガーメスは苦笑したらしい。見た目で判断できたのは今村だけだがテレパスやら呪具越しに色々わかった。


『ところでご主人様~帰りたい~』

『そ~スライムたちと遊ぶの~』

『うん~触手責め~』

「ちょっと待て、今不穏当な言葉が聞こえたぞ?何が起こってる?ってかお前らの家あそこに決定したんか?親の前でアレなんだが…」


 ちょっと一回自世界に戻ってスライムたちにお話をする必要が出て来たようだと思った今村。その間サーベルライガー母の鋭い視線が動かないオスに突き刺さる。


『…どういうこと?説明しなさい。』

『…はい…』


 大人しく従うことにしてあらましを言ったら母ライガーは思いっきりガラスに突っ込んできた。


『ふっざけるなぁぁぁぁっ!舐めてるの?初対面の人間に子供預けるとか舐めてんの!?』

『か…堪忍してくれ…』


(…夫婦喧嘩は犬も食わんらしいが食えないの間違いだな~)


 ガラスの中に今から入れられる父ライガーが怯える姿をほのぼのと眺めて見送る今村。


『ちょ…ちょっと助けて…』

「さっきも言ったろうがお前がボコられる時は微笑ましく見守るって…」


 今村は笑顔で職員に運ばれていく父ライガーを見送った。消えていくと母ライガーに子供たちのことを頼まれる。


「…あ、これはあんたらが育てろ。そっちがいいって言ってるから頑張って隠し通しな~『ワープホール』」


 今村は長男だけそちらに投げ込むと人界に帰って行った。




 ここまでありがとうございました!


 一応言っておきますけど別に衆道自体が地獄のものとかは思ってませんからね?ただ望んでないのに無理やりそう言った状態になるのは地獄と思いますけど…

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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