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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第四章~新しい客~
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22.虐殺

 …残酷な描写あり?

「カ…カカレ!」

「死ね。」


 尋常じゃない気配を感じて部族の男たちは今村を殺さなければならないと直感的に理解した。だが、今村は興味もなさそうに一言呟いて歪んだ笑みを浮かべて襲い掛かって来る者の頭部を掴んで握り潰した。血や脳漿が辺りに飛び散る。


「コ…コイツガ…」

「黙れ。死ね。」


 部族の代表と思われる男が縛られた祓を人質にしようとして無理に立ち上がらせる。その直後「呪言」で呪い殺された。


「ウ…ウワァァァアァッ…」

「弾けろ。」


 恐れをなし、逃げ出した者の頭部が突然膨張して弾ける。


「コ…コロサナイデクレ…タノム…!」

「『遡及禍罰そきゅうかばつ』無惨な死。」

「ふごっ!ガ…ガァァァアアァッ!」


 命乞いをした者の口からはらわたが無理やり出て来た。そこで今村は笑みを消した。


「…はぁ…あぁもうやってられん…『サウザンドナイフ』」


 今村はローブからナイフを5本取り出した。それは見る見るうちに増えていき、空中で待機する。


「…『呪言発剄』〈其は咎人を切り裂くモノであり、咎有らざる者は傷つけるべからず。此度の疑わしき者は此にある者の関連者なり…〉『断罪のレーゲン』」


 ナイフは勝手に動き出して次々と原住民を襲っていく。この場から離れて行くナイフも多くあるようだ。


「〈其は断罪者にて虐殺者に非ず。汝らが罪を裁くものなり。罪あらば死をもって償え。〉」


 今村はぼそぼそそう言って呪氣で散々に殺して回る。魔力が使えないこの場所に置いて術を見るのは初めてだった者が多く、部族の者たちはなす術もなく殺されていく。


「…終わり…だな。」


 今村がそう呟くころには見渡す限り部族の者たちが死んでいた。ナイフも5本に戻り、それを回収すると今村は月美の下へ進んでいく。そして少しだけ抱き起した。


「…死んでるな…はぁ…」


 確認して完全に死んでいる月美を静かに横たえると祓と相馬の縄を爪で斬った。


「…先生っ!」


 祓は自由を取り戻してすぐに今村に飛びついた。今村は黙ってそれを受け止める。


「おひひょー様~?どうしたんですか?ってうわっ…」


 ルカが呑気にこの場所に現れた。今村は一瞥を加えると無言を貫いていたが不意に口から漏らした。


「…何が弟子だ…化物が何やってるんだか…」


 自嘲気味な笑みを浮かべて今村は祓を抱えたままルカの方を向く。


「…弟子ごっこは終わりだ…お前ら全員自由にしていいぞ…ルカは元の世界に帰してやる…『ワープホール』…」


 ルカはその言葉を聞いて固まった。


「え…?私…何かしましたか…?」

「…いや、お前は頑張ってたよ。…ただ俺が駄目だ。災厄の化物。無形の化物、破壊の忌み子…そんな奴がといられるわけがなかった。現に月美は死んだ。」

「つ…月美さんが…死んだ?」

「ゴミみたいな奴の無駄な試練でな…」


 今村が指す方を見ると明らかに致死量と思われる出血をして横たわっている月美がいるのが目に入った。


「…で…でもっ!それはお師匠様が悪いんじゃなくてこっちの班に何かのトラブルが…」

「それも込みで考えてなかった俺が悪い。」


 ルカの言葉を切って今村は断言した。


「お…お師匠様だって万能じゃないんですから…そんなことだって…」

「師を名乗るならそれ位の事は出来てないといけないんだよ!」

「うっ…」


 今村の感情が昂り、ルカが気圧される。ルカは今村が意思を変えることがないのを見て取った。今までとは違う雰囲気が流れてルカはしぶしぶ引き下がる。


「…分かったみたいだな…じゃあ帰れ。俺なんかに…」

「…お師匠様は他のどんな人よりも絶対に凄いんですから…」


 ルカは今村の言葉に被せて言った。今村は眉を顰める。


「…絶対にそれを証明して見せます。今は月美さんのことが気にかかって駄目でしょうけどいずれ…私がそれを証明します。」


 そう言い残してルカは「ワープホール」の中に消えていった。そして今村は残っている二人を見て口を開く。


「…お前らは…って来やがったか…『死神の大鎌』!」


 今村は漆黒の刃に金の意匠が施された大きな鎌を取り出す。


「『ウォシャス』!…さぁて…くよくよしてる時間はお仕舞にして切り替えないとな!」


 祓は虚空を鎌で切り裂く今村を見て不思議に思った。だが、テレパス越しに何かを斬っているのが分かった。ついでにそれは一太刀浴びると驚いて逃げだした。


「じゃあ準備も整ったところで!『我ここに代償として多くの魂魄を捧げることによって彼の者を召喚せん!』」


 それを見て笑うと術を詠唱。そして月美の体に光が降り注いだ。


「え…あれ…私は死んで…」

「うん。悪いな…俺の所為で死んだ。」


 そして月美の霊が現れた。月美の霊はもの凄い混乱している。


「…え…と…今どういう状態ですか…?」

「『死霊術』で霊になったお前を召喚中。因みにこれは一人に対して一回しか使えないし時間制限アリだから早目に用件言っとくぞ。」

「え?あ、はい。」


 呆然としている祓と未だ混乱の最中にある相馬。今村は無視して続ける。


「今からお前に三つの選択肢をあげる。好きなの選んで。」

「あ…それより私ご主人様に言いたいことが…」

「あ~それは選択肢次第じゃ後でも言えるから俺の要件を済ませてからにして。」

「…はい。」


 月美はこの際だから告白しようと思ったが今村に止められた。


「まず選択肢一。このまま死んで転生する。」

「え…とそれを選んだらどうなるんですか?」

「うん。説明するから黙ってて。現在の記憶を無くして別の個体になる。まぁ来世の自分を好きにできるようにアーラムに頼んどくよ。メリットは来世での希望溢れる人生。デメリットは今世での記憶がなくなること。」


 月美は記憶する。今村は十分に理解したなというところで次の選択肢に移る。


「次、俺が魂を引き取って新しい体に移す。」

「え?」

「メリットは今世での活躍がまだ出来ること。デメリットは新しい体を作るのに時間がかかることと機械造りの予定だから慣れるのが少々面倒なこと。」


(…え、そんな事出来るなら何でさっきあんなに落ち込んでたんですか…?)


 祓はテレパス越しに見ていた今村の心情が理解できなかった。


「最後は…俺の呪具に概念として入ること。」

「…概念…ですか。」

「メリットは今すぐ入れること。デメリットは始終俺と一緒なこ…」

「それにします!」


 食いつきが早かった。


「…え、アレだぜ?どっか行ってろって俺が命令しないとずっと一緒…」

「はい!」

「呪具を起動してなかったら基本意識はないんだぞ…?」

「でもずっと身に着けてるんですよね?」

「…まぁ…そうだな。」

「それで!」


 死んでいるのに生き生きとしている月美に釈然としない気分になる今村。


「…これはあんまりオススメじゃなかったんだがなぁ…まぁ俺の所為で死んだんだし…希望通りにするが…ま、最悪死にたくなったら浄化魔法で昇天させればいいか…じゃあ行くぞ~」

「はい!」

「痛かったら言ってくれよ。『ドレインキューブ』でもって呪核結合!」


 月美の霊が消えた。


「でもってほいっと。シルベル君起動。」

「おぉ…」


 月美が現れた。目の前で死んでいる月美に比べて胸が若干成長して大人びているのが謎だが…そんな月美はとりあえず地面に降り立つと色々確かめてみる。


「…特に異状ないですね。…寧ろ死ぬ前より調子がいいです。」

「まぁ…呪具の概念に組み込んだし…それにしても悪いな。呪いが入るまでは目の前で死んだ奴位生き返らせれたんだがな…」

「いえいえ!寧ろ嬉しいです。ずっと傍に仕えることが出来そうなので…ある意味あのゴミにも感謝ですね!」

「…ゴミ?」


 月美は捕まった経緯を今村に説明し始めた。祓は呆然とその光景を見て何も言えなかった。ただ…


(ルカさん…可哀想…)


 ルカがあんまり意味もなく弟子を辞めさせられたことについて可哀想に思った。




 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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