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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第四章~新しい客~
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18.ミッション

「…ということであんまりにも俺の扱いが悪いと思うんですよ!これはもう覗きしかない!と思うんですよね!」

「…頭大丈夫か?」


 宿泊してその日の夜。女性陣が地獄温泉に入っている間に相馬が今村の下に来ていた。ついでにラバーも一緒だ。


「…まぁ覗きします!って宣言してきたことは褒めよう。あれだけの実力差でその勇気は蛮勇の域に達してるからな。」


 今村は道中読んでいた本の内容が気に入って読み直し中だったのだが一度おいて相馬達に向き合う。


「…で、ラバー…お前に至ってはお仕置きで殺されるかもしれないがその覚悟はあるのか?」

「…祓さんと言いましたね?…あの人のおっぱいを見て死ぬなら…本望です!」


 真顔で言い切った。今村はこいつ大丈夫だろうかと言う視線を向けつつ聞いてみる。


「仮に死んだら…依頼は?」

「依頼は誰でもできます!でも彼女の覗きを行って喜べるのは俺だけです!それに今風呂に入ってるんですよ!逆に言えば今しか入ってないんです!」

「…まぁ決意が固いならいいんだが…」


 今村はじゃあ止めねぇからさっさと行って死んでこいよとか思いながら正座している二人を椅子から見下ろす。


「先生は!あの胸を前にして何も思わないんですか!?」

「…まぁ性欲は家に置いてきたしな~」


 相馬が勝手に今村のことを先生にして何か言っているので今村は少し考えてみる。結果、大分おかしいことを言うことになるが「ドレインキューブ」で概念を実際に吸引して置いて来ているのでそうとしか言えないのだ。


 「ドレインキューブ」は今村の体に吸収するための外部装置のようなもので、一度吸収したものは元の場所に返すか今村の体に戻すかしかできない。

 だがゆっくり自身の体に流し込むことで今の状態ではほぼ入っていないようにもできるのだ。結果、今村は学校に行くときなど基本的に性欲は置いて行っている。


「くっ…枯れている…でも!この気持ち!男ならわかってくれると思うんですよ!」

「まぁ分からんでもないな。行動はしないけど。」


 相馬が言うように確かに美人揃いでスタイルもいい。覗きたいという気持ちは分からんでもない。そんな顔をしていると相馬が一層高いテンションで言ってきた。


「じゃあ『呪具』だけでも貸してください!便利グッズじゃないですか!透明になる薬とか壁を透かして見る何かとかありますよね!きっと!」

「…まぁ無いわけではないな。」


 一応ある。それを聞いたときの相馬のテンションは傍から見れば狂っていると言って差し支えないほどのものだった。


「いぃぃぃいやっほぅ!下さい!」

「…気配探る方法教えたから透明になっても無駄だぞ…?」

「『消命しょうめい』使います!」

「…こんなことに使うなよ…不意打ちされれば死ぬんだから…」


 文字通り生命力を極限まで小さくし、存在感を希薄にするもので、風の流れもほとんど変わらない潜入の為の技だ。唯、生命力を極限まで小さくするので戦闘になった瞬間死が確定すると言ってもおかしくはないだろう。


「…うーん。確かに『呪具』の中には存在自体を希薄にできるやつとか別位相に体を移動して観測だけ行うやつとかあるが…俺しか使えないんだよな~」

「ケチ!」

「黙れ。使ってもいいがお前が使ったら死ぬどころじゃ済まんぞ?お前が考える最悪の事態をはるかに超える状態になるからな…例えば腐った死体に喰われながら犯される幻覚を目を閉じれば見続けるとか…」

「な…何でそんなことに…」


 想像したのだろう。声が若干震えている。


「呪いは代償無しに発動しない。俺の場合は白魔法の全面使用禁止。それに呪具の独占使用ってところだな。そういう契約に基づいて行使してる。」

「でも!修行の時に色々…」

「ありゃ魔具だ。違いは…能力と込められてる力なんだが…まぁ分からんだろ。で、早く行って来ないと多分上がるぞ?」


 いい加減相手をするのが面倒になって来た今村は相馬とラバーを追い出しにかかる。


「ま…魔具をお恵み下さい!」

「どんなの?」

「透明になる奴で!」

「…はいよ。」


 今村は適当に錠剤を二錠投げ渡す。それを猿のように慌てて拾って二人は出て行った。その後今村は呟く。


「…透明になっても光の屈折率の変化とかで気付かれるだろうけどな…それに水浸しの地面をどうバレずに行くつもりなのか…」


 それはそれとして自身も個人用の風呂に入ってみた。結構いい湯だった。帰って来たら2人が吊し上げられていて今村がそれをぼけ~っと見ながら入るとこっちには何故覗きに来なかったのか詰問され、理不尽な怒りに遭った。


(…まぁ薬だけ渡したんじゃ責めるに責めきれんからな…いっそ覗きにきてたら思いっきり責めれたのに…ってところか。)


 その思考を祓が読んで溜息をついたのは言うまでもない。



















 そして翌日。吊るされていた二人は逆さだったのに元気だった。常人なら死ぬところだが相馬は元々超人だった上、今村の手によって魔改造されていたしラバーも一応地獄人なのでそんなことはない。


「…クァ…さて、『白虎の森』まであと少しか…」


 朝の間に宿は引き払って今度は女性陣が昨日の詫び代わりに精神的に今村にべったりだったのでゆっくり・・・・進んだ。覗きに失敗した二人は少し離れた所を先行させられている。因みにラバーは相馬に負ぶさっている。


「ん~森が見えて来たな~そろそろ離れろ。」

「む…次は私の番でしたのに…」


 1000歩ごとに交代だった今村の隣をルカの番で止められて月美は少し不機嫌になる。因みに今村の方は基本前を向いており、隣を狙っている辺りには気付いてない。詫びだのどうのといったことは知らないのだ。


「…ん?相馬達が何か言い争ってるな…」


 前を見ていると聞き慣れない言語でラバーと森から出て来た上半身裸の男たちが言い争っている。今村は少し呪具を耳にあてて何を言っているか聞いてみた。


「…で…お前等……意味…」

「神獣……ですが……保護…」


(よく聞こえん。部分変化)


 今村の頭に黒い毛に覆われた狐耳が生える。祓はその耳をくにくにしたい衝動に駆られるが押し殺した。


「だから何度も言っておろう!貴様らの意味のわからんことに神獣様を巻き込むな!と」

「神獣様が信仰の対象なのは分かりますがこのままでは絶滅してしまいます!こちらで保護をしなければいけないのです!」

「だから…」


 そうすると同じことを何度も何度も言いあっていて議論は平行線であることが分かった。


「…さて、どうするか。」


 とりあえず今村は今回手を出さないことにしているので、横にいる3人に事情を説明して前の2人に合流させ、自身は後ろから見守ることにする。


「…ん~あの部族は結構強いな多分…」


 体術に秀でていそうな感じで、魔力は大して感じられない。ただ、下半身の筋力が見かけ倒しでなさそうなのは感じ取った今村。どうするかな~と思っていると弟子4人は部族を薙ぎ倒した。


「オイオイ…」


 手は出さないことにしているし、結構強いと言っても真正面から戦って今村の鍛えた4人に勝てる訳も無く一方的に倒されていく。幸いと言っていいのか、重点的に教えたのが「円武術」だったので死人は出てなさそうだ。


「…はぁ…先行き不安だねぇ…」


 いきなり暴挙に出た弟子と止めなかったラバーを遠目に溜息交じりに見ると今村も一っ跳びで合流した。




 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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