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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第四章~新しい客~
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11.訓練2

ルカが何で今村のこと好きなんだ…?と思った方へ、「弟子として」をどうぞ。




「じゃあ…まずこれから行こうか。…あ、その前に動きやすい恰好になるか。」


 今村はそう言って「ウェアーアップフレーム」に全員を通すと全員が動きやすい体操服姿になった。それを見て今村は苦痛に歪む人間の顔に取っ手が付いたものを手に取った。


「魔力測定器。…デザインが古いけど正確に測れるからこれにしてる。…で、やり方はこれを持つだけ。ルカは魔力なしだから先に握力測るか。」


 今村は普通の握力計をルカに渡し、月美には魔力測定器を渡した。その途端苦痛に歪む人間の顔から絶叫が迸る。


『ぎゃあぁぁあぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁああああぁああああっ!』


「きゃあっ!」

「っ!何ですか!?」

「こ…壊してしまいまし…」


 祓が腰を引かせながら今村の方を見ると今村はどこから取り出したのか分からないバインダーに紙を乗せて記入していた。


「14秒でレベル2か~結構あるね…はい次、祓。…ってどうした?」


 書き上げて周りを見ると自分に視線が集中していたのに気付いてきょとんとした顔になる今村。そんな顔にも少しときめく祓だったがすぐに我に返って今村を問いただす。


「えぇと…今のは…」

「…?測定だけど…」


 何を当然なことを聞いているのだろうかと言った風の今村。首を動かして早く次と促している。


「も…もう少しマシなのはないんですか?」

「マシぃ~?今『シェルシェール』ってのを創ってるが…まだ完成してないからなぁ…ちょっとうるさいかもしれないが…まぁ頑張れ。はい次。」


 祓はしぶしぶ納得してそれを手に取った。すると魔力測定器の苦しみに歪んだ人の顔の目から血涙が流れ出し、先程とは比べ物にならないほどの絶叫が響き渡る。


『うっぎゃあああぁっぁぁあああああぁぁぁっぁぁああああっぁぁぁぁっ…ぁ…ああぁ…』

「ご…ごめんなさい…』


 絶叫を迸らせた後痙攣している魔力測定器の人間部分。何となく悪い気がしたので魔力測定機に祓は謝った。対して今村は何事もなかったかのように記入を続ける。


「45秒にLv.5…流石って所か。『魔下落崩帝まからくほうてい』」


 何かの術を使って今村が恐ろしい魔力を持つ状態になった。そして魔力測定器を手に取ろうとする。その光景を見てこの場にいる相馬以外の人間が耳を塞いだ。

 だがその心配はいらなかった。


「な…何て穏やかな微笑みを…」

「お師匠様…流石です…」


 今村が魔力測定器を手に取ると魔力測定器は穏やかな笑みを浮かべて目を閉じたのだった。今村はそれを無造作に閉鎖空間に放り投げた。


「『解除』…さて、ルカ。握力はまだか?」


 魔力を消して今村はルカの方を見る。ルカはすぐに行動に移した。


「…右18Kg 左17Kgか…かなり成長したな…次月美。」


 ルカが照れて頭を掻く中、今村は月美にルカが持っていた握力計を手渡す。月美は全力を持って握力計を握った。しかし、針は全く動かなかった。今村は別の握力計を手渡す。


「…右700g、左500gか…まぁまぁ強いな。」

「…この計測結果では全く納得いきませんが…一応悪魔ですので…」


 月美は額に汗を浮かべながら祓に握力計を手渡す。


「…測定不能っと。祓こっち。」


 月美に渡していたものからルカに渡したものに持ち替えさせる。


「右…14.25Kg、左13.5Kgか…うん。おっけー。次行ってみよう。」


 次に今村は急に3人の目の前から消えた。そして少し離れた所から3人に声をかける。


「50メートル走!誰からでもいいぞ!」


 その声掛けにルカが一番早くスタンバイした。


「はいよーいスタート。」


 一気にそう言うとルカは全力で駆け出す。結果は5秒23だった。次に月美が走る。結果は11秒78。そして最後に祓が走ったのだが…


「ちっ…」


 舌打ちをするルカに憮然とした顔になる月美。結果は8秒24だったのだがルカは完敗の気分だった。


 ―――ぶるぶる震わせてぇ…私だってまだ成長期なんですから…―――

 ―――大きいですねやっぱり…やはり比べると…―――


 そんなことを聞きつつ祓は本命の心の声を聴きにかかる。


 ―――…体の使い方がまだまだだな。あと祓が走る時に相馬ががん見してたから余裕あるんだろうなぁ~腕だけじゃなくて腹筋背筋も鍛えよっかな?―――


 自分のことは全然見てなかったようだ。記憶からして何故か顔を怪我している相馬の方を見ていた。…相馬のだらしない顔に今村は態々ピントを合わせていたようだ。


(…こんなの見なくても…)


 祓は全く狙ってはいなかったものの少し疲れて入って来た心の声で期待してしまった自信を恥じつつ次に移った。


「次、上体起こしと背筋だが…ちょっと休憩。すぐに戻って来るから待ってろ。」


 今村はそう言い残して相馬の方に向かった。





「…さて『自聴他黙』解除…そろそろ腕が上がらないはずなんだが…」

「もうマジで無理です…助けてください…」


 顔を腫らした相馬が泣き言を言ってくる。今村は歪んだ笑みを浮かべて相馬に言った。


「へぇ…こっから祓は上体起こしとか背筋とかラッシュとかするんだけどなぁ~」

「っ!」

「やめるってことは…まぁ見たくないってことか。いいよ。先に実世界に…」

「誰が止めるなんて言ったんですか?俺はまだまだ行けますよ!」

「そうか。」


 今村は「グレイプニル」を外した。


「おぉ…マジですか…」

「こっからお前には特等席を与えてやるよ付いて来な。」

「はい先生っ!」


(クックック…楽しいなぁ~)





 そして3人の前に戻る。相馬は鼻息荒くその横に立っている。祓はその様子を見て怪しく思い相馬の心を読んで僅かに形のいい眉を顰めついで今村の心を読んで憐憫の眼差しを向けた。

 そんな眼差しにも相馬はときめきつつ今村の言葉を待つ。


「じゃ、相馬はこれに腰かけろ。」


 今村はそう言って相馬に無骨な立方体の石を渡す。相馬は何の疑いも持たずに椅子に腰かけた。その途端に今村の目が光る。


「『呪具発剄』ぃっ!」


 石が目にもとまらぬ速さでばらけて一面を残して消えると相馬の前の地面から相馬の足を垂直に伸びて膝の1㎝上で90度で相馬の方に曲る。そして太腿の辺りは真っ直ぐ行き、腰の辺りで顔目掛けて90度。そしてく最後に顔を載せる台座が出来上がる。


「な…何ですかこれ!」


 相馬は慌てて今村の方を向く。今村は口角を三日月の様に吊り上げて笑っていた。


「今から特等席。空気椅子をプレゼントだ。…因みに俺がいいって言うまでに地面に腰を下ろしたら衆道地獄にご招待。」

「鬼!悪魔!」

「はっはっは!ありがとう。最高の褒め言葉だ。さて、石を退かしますか。」


 そして相馬を支えていた部分が地面へと消え、黒い穴が空く。相馬は必死に空気椅子を保った。


「ぐ…ぐぅっ…」

「ところで俺は優しいから目の前にある石の壁を手で持つのは禁止しないよ。」

「手が上がらないんだよ!さっきの重りの所為で!」

「何だ…重かったら下に置けばよかったのに。」

「置いたら跳ねて顔を殴って来たから!」

「はーい!皆ー上体起こし始めようね!」

「聞けよ!」


 今村の言葉に相馬の前で月美が上体起こしを始める。その光景を相馬は何も言わずに食い入るように見つめた。


「…さて、さっきお前俺に生意気な口を叩いたな?」

「…すみません。我を忘れていたんです。」


 今村が隣に立っても相馬は前方の光景を食い入るように見続ける。風通しのいい体操服は生地が薄く、相馬のテンションを鰻登りにした。


「俺…何時間でも耐えれる気がしますよ…」

「そうか。余裕なら重石を載せよう。」

「へ?ぐっぎゃぁああぁっ!」


 石が隙間を無くし、その上に今村が置いた重りの重さをダイレクトに伝え始めた。相馬は必死に抵抗し、それを上に上げようとするが相馬の脚が90度になる以上は上に行かない。


「く…悪魔!外道!」

「…そんなこと言いながらしっかりルカの上体起こしを見ているお前に脱帽だよ…あ、ところで無理ならいいよ。…向こうで・・・・休憩すると良い。向こうでな・・・・・


 今村はそう言って「ワープホール」を形成する。その目の前では祓が表面上何事も無いように…表面化ではしっかり相馬に見られているのを自覚して嫌々ながら地面に腰を下ろしていた。


「くっ…諦めませんよ…勝つまでは!」

「何にだよ…」


 今村はそんなことを言いながら相馬にばれないように重石をちょっとずつ足していく。相馬は祓しか眼中にないようで見向きもしない。


(…恐るべきは煩悩の力か…)


 そう思いつつローブの手は休めなかった。




 ここまでありがとうございます!


 あ、一応言っておきますけど八大地獄に衆合地獄ならありますけど衆道地獄はないですよ。…今村君たちがいる世界は知りませんけど。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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