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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第四章~新しい客~
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10.訓練

 ―――あ~昨日は死ぬかと思ったねぇ…―――


 今村は起きて生きている喜びを噛みしめる…ということもなく、まだやりたいことがあったのにすぐに死にに行く自身に愛想を尽かしそうになりながら起きた。記憶の整理があまり必要なく、夢を滅多に見ない今村は今日珍しく死ぬ夢を見て起きたのだ。


「まぁ俺が死んだら結構な人が狂喜するがろうけどなぁ~」


 そう呟いて自宅のベッドから起き上がり、頭を掻きながら頭の中で生きよう!と十回言いつつ部屋に貼っている人避けの札に力を入れ直して部屋から出る。


(まぁそいつらを喜ばせたくないから生きたいとも思うが…傀儡で十分かな…)


 朝から陰鬱な今村は適当に身支度をするとまだ眠っている妹だけがいる自宅を出て行った。


「はぁ~何か良い事ねぇかなぁー」

















 


「先生。私に戦い方を教えてください。」

「?何で?」

「先生の負担を軽くしていからです。」


 「幻夜の館」に着くなり祓が今村にそう言ってきた。今村は首を傾げながら裏の理由を探り、そして歪んだ笑みを浮かべた。


 ―――あ~昨日相馬が瞬殺されたからか?私が守らないとって…なっさけねぇな相馬…あっち鍛える方が優先事項だな…―――


 その考えは間違っていると言いたいところだが直接言うこともできず繰り返して頼む。


「私が弱いからです。お願いします。」

「オッケ~…じゃあ相馬も呼んでくるか。月美!」


 今村が「幻夜の館」の玄関口で少しだけ大きな声を出すと月美はすぐに今村の目の前に現れた。


「御用は何ですか?」

「相馬を持ってこい。」

「畏まりました。」


 そう言うと月美は音もなく消えていき、寝ている相馬を担いで持って来た。


「…起きろよ。…まぁ面倒くさくないからこれでいいけど…『ワープホール』」


 今村は相馬の能力の低さに呆れつつ「ワープホール」を形成して崩壊しかかっており、管理者がいなくなった世界にここと空間を繋げた。


「…月美も護身術程度にやってみるか?」


 今村は繋げたと同時に相馬を軽々と担いでいる月美に訊いてみた。すると月美は少し考える。


「そう…ですね。ご主人様がそちらの世界に行かれるのでありましたら私がこちらですることはないので…」

「じゃあ行こうか。…あ、ついでに相馬の着替え持って来てくれ。」

「畏まりました。」


 月美は相馬を担いだまま消えてそして荷物を抱えて目の前に戻って来た。


「…よし、行くかね。」


 全員が別世界に飛んだ。



















 異世界に飛ぶとすぐにスライムたちが歓迎してくれた。


「よしよし。良い子だ。…さて、ルカも序でに連れて来るか…」


 今村は「ワープホール」を形成。ローブだけを突っ込んでルカを引き摺り出した。


「ふぇ?おひひょーさま?」


 どうやら寝惚けている様子なのでそのまま地面に捨てた。


「ふぎゃ…どうしたんですか?」

「修行。」


 普通に受け身を取って何事もなかったかのように接するルカに軽い戦慄を覚える月美と祓だったが今村は未だに肩に乗って眠っている相馬しか眼中にない。


「…月美。それ地面に投げ捨てろ。」

「畏まりました。」


 月美は何の躊躇いもなく相馬をポイッと投げ捨てる。


「フグッ!」


 地面に顔から落下して目を覚ます相馬。驚いて周りを見渡すと「幻夜の館」のメンバーに加えて昨日自分を倒した少女が見下ろしていることに気付き、そして更にその周りを色とりどりの不定形の水の塊が囲んでいるのを見て大混乱に陥る。


「こ…これ!う…後ろぉっ!」


 今村の後ろを震える指で指し示す相馬の頬をローブが引っ叩いた。


「目ぇ覚めたか?先に言っとく。このスライムは敵じゃない。」

「え?…こ…ここはどこで何で俺が…」

「ここは終わった世界でお前は強制的に修行に連れて来た。」


 今村は質問に答える。その後の質問にも次々に答えていき、相馬はようやく納得して着替えた。


「…よし、んじゃ…先に言っとくが無理なら相馬以外は止めていい。ルカ!」

「はーい?」

「昨日教えたことの復習。…祓にそのまま教えろ。」

「えっ?」


 ルカは固まった。


「…出来ないわけないよなぁ?『呪具招来』…」


 今村は少し口角を上げてそう言いながら重りを閉鎖空間の中から出した。


「じゃ、相馬はこれを持て。」


 今村は重りを無造作に相馬に投げた。


「ん。…って重っ!」


 相馬がそれを受け止めるとあまりの重さに取り落してしまった。


「何やってんだ…持てるだろ?」


 今村はそう言ってローブを伸ばし、もう一度相馬に重りを持たせる。相馬は今度は辛うじて持つことが出来た。


「それはお前がギリギリ持てる重さに変化し続けるから持てないってことはない。とりあえず月美の指導が終わるまで持ってろ。」

「う…腕千切れそうなんですけど…」


 相馬はすでに額から汗を流しつつ今村にそう告げると今村は歪んだ笑みを浮かべて言い返した。


「だから持てる限りの重さにしかならないっての…まぁ最悪千切れても祓が治すさ。…俺が改造なおしてもいいが…」

「…何か嫌な予感がするんで祓…の方でお願いします。」

「遠慮すんなって。…ところで金色に光る腕と黒色の腕だったらどっちがいい?」

「黒…って違いますよね!千切れるんですか!?」


 重りを投げ出そうとした相馬の腕を今村は「グレイプニル」で縛り付けて離せないようにしてなおもぎゃあぎゃあ騒ぐ相馬は無視することにして月美の方に行った。


「…え…と。明日の業務に差し支えのない範囲でお願いします…」

「ん?うん。…ル~カ~まだ動いてないのか~?お前から習いたいって言ってきたのに忘れてるってこたぁないよなぁ?」


 相馬の無駄な叫び声が五月蠅く響く中今村はルカがまだ動き出していないのを見てルカをじっと見る。


「え…は…ハイ勿論ですよ…」

「何で目を逸らすのかな?」


(全く。人が文字通り命懸けで教えたというのに…)


「じゃあ…とりあえず全員体力測定から始めるか…」

「俺は!?」

「五月蠅い『自聴他黙じちょうたもく』」


 悲痛な叫びが聞こえたので今村は自分の声が自分以外には聞こえなくなる呪いをかけた。


「…あ、相馬。体力測定が終わるまでずっと持ってることになったから。男の子だし頑張ってね~」

「――――――――」


 相馬が何か言っているようだが聞こえないので今村は放置。月美、祓、ルカの三人に向き直った。


「…じゃあアレから行くかぁ~『αモード』、『結界生成:負荷隷帝ふかれいてい』」


 今村は絶世の美男子になると特殊な結界を生成。祓たちは体が重くなることを感じた。


「さて、全能力を等しく百分の一にした。それじゃ測定項目は…50メートル走、射撃、連続ラッシュの上下、上体起こし、背筋、握力、魔力…後は軟体に動体視力でいいか。」

「…あの、所々分からないんですが…」

「やる時になったら説明する。『呪具招来』さ、始めるか。」


 今村が召喚した物の禍々しさを見て引き攣った顔を浮かべる祓と月美を前に今村は笑ってそう言った。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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