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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第四章~新しい客~
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9.覚悟

「ってかいい加減こっちの世界に帰って来いや!」

「はぐぅっ!」


 ずっと刀を陶然と眺めていた相馬に今村はいい加減祓との仲を深めてもらうべく拳を振り下ろした。


「お…お師匠様?これと私が戦うんですか?」

「あぁ…まぁ一応ずっと格上ばっかりと闘ってると自信無くすだろうしな。」

「…俺これでも一応『ソードマスター』なんですけど…」

「お前はまず風呂入って来い!」


 今村は相馬を部屋から叩き出した。そしてルカと部屋で待機する。


「…おぉ、ご主人様。あの阿呆を部屋から追い出してくださったのですね!これでここの掃除もできます!」


 そうしていると月美が部屋に入って来た。ルカはジト目で今村を見る。


「…この人誰ですか…?」

「…ここにいるメイド。」

「はい。月美と申します。…そちらは?」


 月美はルカに尋ねる。ルカは嫌なものを見る顔で答える。


「ルカ。…お師匠様から貰った名前だから間違えないでね。」

「まぁ弟子だな。格闘専門の。」

「そうですか。よろしくお願いしますね。」


 月美が手を差し出してルカもそれに応じる。それが終わるとルカは月美が掃除をしている中今村にべったりになって尋ねた。


「…ホントにあの人と闘うんですか?死んじゃいますよあの人。」

「その辺は俺が何とかする。…ってか『円武術』は俺が知ってる中でも敵の力を無力化するのに長けてるんだがなぁ…間違っても殺傷に一番向いてない…でも、お前自分のリミッターを外す方に傾倒してるんだよな…」

「お師匠様相手だと技を掛けれませんから!せめて自分の力を上げておこうと!」


 今村は苦笑いする。自身専用の対策では将来独り立ちできないのに…と思いルカに説明すると何故か表情を固まらせた。


「ひ…独り立ち…」

「ん?まだ不安か?まぁとりあえず女神に勝てるまでは面倒見てやるよ。」


 普通からすれば一生かけても無理そうな道のりをこの人なら難なくやってのけるだろうことをルカは知っていた。現にルカは女神の攻撃が見え始めているのだ。


「まだ…全然…」

「…もしかして『円武術』じゃ足りんのか?…まぁ確かに地味な技が多いが…お前魔力ないしなぁ…」


 そうなのだ。ルカは唯の人どころでなく魔力を持たない。その為今村からの特別訓練を受けたのだ。結果ルカとしては今村と出会えたのでそこに不満はない。


「…じゃ…人間でも一応できそうで派手なの…俺武術で派手なのあんまり使わないからなぁ…短期で習得できるやつねぇ…」

「あ!長期で!」

「…なら結構あるが…それ習得に10年単位かかるぞ?」

「望むところです!」


(…武の虜になったか…)


 変な感動をしていると相馬が風呂から帰って来た。


「よし、じゃあそんな派手な勝負にはならんと思うが…あ、まず聞いとく、相馬、斬撃で大陸両断は出来るか?」

「…まず個人でそんなことできるんですか?」


 何を言ってるのだろうかという顔付で尋ねる相馬に今村は完全に頭を抱えた。


「はぁ…」

「…じゃあ私はアレですね。リミッター解除抜きでやります!」

「えっ?何ですか?僕が悪へぶっ!」


 狼狽える相馬に今村は蹴りを捻じ込んだ。そして首を傾げる。


「…おっかしいなぁ…こんなんじゃ誰でも殺せるだろうに…態々国から依頼が来た意味が分からん…」

「あぁ…多分基準がおかしいんですよ…」


 何となく諦観めいた状態になる相馬を連れて今村はルカと一緒に閉鎖空間の中に行こうとする。


「…うーん…一応祓を連れて行くか。」

「…何でですか?」


 その途中で今村が立ち止り行った言葉にルカが不機嫌になる。そんな様子に今村は特に気付かずにしれっと答える。


「回復要員。俺呪いの力手に入れるために白魔術使う権利無くしてるからな~」

「っ!そんなことこんな得体のしれない奴の前で言ったら…」

「まぁ殺せるもんなら殺してみろ。誰かが表彰してくれると思うぞ。」


 ルカが焦り交じりにそう言うのに対して今村は能天気にそう言ってのける。ルカは今村の言葉が本当であれば秘密を知った相馬を殺した方がいいのでは…と思いながら黙って付いて行った。





















「相馬とルカが喧嘩するから付いて来てくれ。」

「…はぁ。」


 今村の思考を見てもよく分からなかったが、祓は回復要員ということはよくわかった。先日の件もあるので黙って今村の言うことに従っておくことにする。

 そして「ワープホール」を使い閉鎖空間に移動した。


「よーし、制限時間は気分で、決着は…まぁ気分かなぁ…なるべく死なないくらいで終わればいいと思うよ。…で、後は…何やってもいいよ。」

「ルール雑くないですかね!?」

「うるっせぇ!ここじゃ俺がルールだ!そいじゃスタート。」


 そして今村はテーブルセットと紅茶のようなもの・・・・・・をいつもの様にセットして観戦を始めた。


「『剣神魔王死閃』!!!」

「…はぁ…『流禍るか』」

「…相馬のネーミングセンスを一刻も早く改善するべきか…」


 気合の入った一撃をルカは自身の名前の由来となる「円武術」の基礎「流禍」でため息交じりに受け流した。今村はその掛け声を聞きながらクッキーに手を伸ばしながら相馬の技について考える。


「くっ…まだまだぁっ!」

「…成程。お師匠様はこんな気分なんですね。はい。足!」


 余裕たっぷりに足を蹴り飛ばして―――


「…へ?ちょ…ちょっと…」

「ん?」


 突然ルカが焦り始めた。今村はその様子が聞こえてクッキーから手を引いて紅茶を啜りながら戦闘の方を向きなおす。その直後、相馬がその場に転倒して呻き声を上げた。


「お…お師匠様ぁっ!こいつ!足折れましたぁっ!」

「…は?」


 今村が呆気にとられていると祓が自身の役目を果たそうと相馬の方に駆け寄る。そしてその行動を後悔した。


 ―――ほう。もうそんなに心配するくらいの仲になったか。いつの間に…感心だな…にしても…弱っ!相馬弱っ!しゃあないなぁ…今日の紅茶は一口であの世行きの猛毒だから動くと俺でも死ぬかもしれないが…まぁいいか。―――


「仕方がない。ルカ、俺が稽古をつけるぞ。…まぁこの紅茶を俺が全部飲んでからだが…」


 ―――折角の神殺しの猛毒なんだし…調合がめんどくさいからな~無駄にできない…―――


 今村は紅茶を一気に飲み終えテーブルセットを片付けつつこっそり血を吐いた。それに気付いたのは心を見続けている祓だけだ。


「な…何で…?」


 思わず相馬の目の前で呟いたその言葉は相馬の呻き声で誰にも聞こえなかった。


(何で…何でそんなに簡単に死を受け入れるんですか…?おかしいですよ…薬の材料が無駄になるからって死ぬ覚悟を侵してまでやることじゃ…それに闘わなければいいじゃないですか…)


 祓は日常的に今村が飲んでいた紅茶のようなもの・・・・・・が毒だと知った。しかし、それをどうすることもできない。心を読みました。危険なのでやめてください。などとはとてもではないが言えるわけがない。


「…『キュアモーラル』…」


(…先生に拒絶されたら…私はもうどこにもいられない…)


 怖いのだ。手に入れてしまったものを失うのが、今の状態が壊れてしまうのが。


「は…君は…祓だったね?ありがとう。僕の怪我を治してくれて…」


 怪我を治されて祓が落ち込んでいることに全く気付いていない相馬が無駄にイケメンな顔つきで一人称を僕にして笑顔を決めて来た。…が、祓の眼中にはない。


 遠くでは戦闘音が鳴り響きこちらまでその振動が伝わってくる。その戦闘音は祓が人間を辞める前の今村との戦闘では考えられない音だ。少なくとも今の状態の祓が混じれる音ではない。


(…これじゃ…駄目だ…)


 祓は目の前にいるウザったいものを無視して一つの考えをまとめることにした。




 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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