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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第四章~新しい客~
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8.恋愛君一号 後編

 祓ちゃん攻めます!

「『αモード』解除…さぁて…返して貰おうかはぁっ!」


 「幻夜の館」に戻るや否や「αモード」を解いた今村は突然全身に痛みが走り、とてもじゃないが祓と取り合いを出来る状態ではなくなる。


 ―――くっ…「αモード」の使い過ぎで全身筋肉痛っ―――


「…どうしたんですか?」


 祓はテレパスで今村の状態を知っておきながら白々しく尋ねる。今村はよろけつつ壁に手をやり諦めて祓に背を向けて言った。


「あー…まぁちょっとな~」


 ―――ん?ローブで全身マッサージしようと思ったが…流石に別空間に新しい物質を作りまくったし今日はもう止めて大人しく寝るか―――


「…何か辛そうですし、送りますね。」


 祓は今村に肩を貸して部屋に戻ろうとする。が、今村は拒否。仕方がないので背負うことにしようと祓が今村に提案をするが今村はそれも拒否。そして祓は今村を強制的に抱き上げた。


「…マジでやめろ。」


 ―――もう一回「αモード」使わせる気かぁ?って―――


 そして今村が行動を起こす前に部屋に戻った。



















「…で、今の状態は前に冥界で起こった状態と同じですよね?」


 祓は今村を自分の部屋のベッドに腰掛けさせてそう言った。今村の方もよろけて自室の薬品をこぼすと軽く学校中から生物が死に絶えるので異論はない。そして祓の質問に軽く応じる。


「まぁそうだな。それの弱めの状態。マッサージすれば治るから放っておいていいよ。ローブでマッサージするし。」


 祓は事前情報として今村が今日はローブを使うことはないのを知っている。そんな嘘は通じない。


「…ローブ…使えるんですか?使えるなら私が抱えた時点で使ってると思うんですが…」


 ―――げ、鋭い。これはいかん。こいつ過保護の気があるからなぁ…前日のヴァルゴへの戦闘指導に加えて徹夜で「恋愛君一号」を作ってた上に別位相の迷宮作って…俺何やってんだろな…昔みたいに力はないのに…そんだけやってリャ疲れて当然か…―――


 そう考えつつこのままじゃ不味い方向に行くと思った今村は殆どタイムラグなしで祓に別の話題を提供しようとする。が、祓によってそれは防がれた。


「使えないんですよね?それで…マッサージすればいいんですよね?」

「う…いや、要らん…」


 視線を泳がせる今村を祓は問答無用で俯せに寝かせた。そして馬乗りになる。


 ―――っ!これはマズイ!『百蘭冷棄却法』―――


 背中から伝わる温かさに今村は「冷棄却法」を迷わずセット。寸分違わず平静状態になる。…が、一瞬の焦りで祓には満足だ。


「マッサージしますね。」

「っくぁっ!」


 ―――あ~もう何かどうでもいいか~…「不殺結界形成」…―――


 気持ち良さそうにする今村を見て満足しつつそれでも心のどこかで敵になるかもしれないと思われて悲しくなる。しかし触れ合い自体が珍しい祓はじっくり頑張った。

 マッサージ終了後、今村は少し回復してまともに歩くぐらいは出来るようになった。


 ―――そんじゃま…風呂行きますか。―――


 これには真正面から行くとどうやっても拒否されると知っているので祓は黙って今村を送り出した。

 そして居なくなってしばらくしてから準備を開始する。



















「…はぁああっとぉ…何気に全裸って久し振りだな…」


 ローブを手に入れてからは風呂にも基本ローブを着ているのだが今日は力を使って脱水等をしたくなかったので全裸で風呂に入ることになる。一人ぼっちの大浴場で今村は楽しげに体を洗おうとして扉が開く音を聞いて振り返った。


(相馬かな?…ってうおいっ!ダイナマイッじゃねぇよ!)


 盛大なるセルフノリ突っ込みをして今村は叫んだ。


「何しに来た祓ぇっ!」

「…お背中を流しに。」


 ルネサンス期の彫像もかくやと言わんばかりの美しい体を惜しげもなく晒して祓は今村の近くにやって来る。


「てめ…この…相馬が来たら如何する気だコラ!」


 ―――こいつの行き過ぎた看病が俺とこいつが付き合ってるとかいうわけのわからん勘違いを相馬に引き起こさせたらどうする気だ…―――


「大丈夫です。月美さんにその辺の便宜は取り計らってもらってます。」

「あんの腐れメイドがぁっ!余計な真似を!」

「…といっても刀と一日中話していて部屋から出て来ていないみたいなんですけどね。」

「あんの馬鹿…折角俺が…」


 今村はその情報を得て愕然とする。


 ―――それに見たと思われたら微妙な雰囲気になるから言い辛いが…こいつ壊れたままの「恋愛君一号」を風呂場にまで持って来てやがる…ってか本当に故障なのか…?―――


 今村は一瞬でばっちり目に入った胸の辺りにお守りが首から引っさげられているのを見た。ついでに祓のとある部分が…ということは忘れることにする。が、当然祓に筒抜けだ。その後の思考が祓に引っ掛かった。


 ―――もしかしたら俺が無意識の内に祓とそう言う関係になりたかったとかそう言う反映が…―――


(え?えっ?えぇっ?)


 急にそんなことを思われて…と混乱する祓。今村の考察は続いた。


 ―――…ないな。なら俺が持ってた時点でイベントが発生してたはずだ。俺が作りあげてから祓に渡すまで全くイベントは起きなかった。…つまり…―――


(…はぁ…やっぱりそんなことはない…か…)


 ここから先の思考には専門用語や難しいことが並び立てられていた上、特に祓にとって面白くもない内容だったので祓は目的を果たすことにする。


「…と、とにかく、お背中流します。」


 それに対して今村は何もできなかった。下手に動くと壊れた「恋愛君一号」が作動して滑って大変なことになりそうだったからだ。だが、口だけは動かして何とか祓を引き剥がそうとする。

 結構酷い事を言ったりしたが今の祓には今村の心の声が聞こえるので特に効果はない。

流石に前だけは自分でやらせてもらうことを選んだ。祓もそれを拒否すれば今村が能力を解放する気だと見たので諦めた。


 そして二人で湯船に入る。今村は溜息をつ生きながらの入浴だ。


「…はぁ…そこまで心配しなくてもいいのにねぇ…」

「前に『αモード』を終えた後に冥界で『ひっくり返ったら窒息死』って言ったの覚えてます?」


 今村はあさっての方向を向いた。言われて思い出したがそんなことを覚えていたとは…と今村は祓の無駄な記憶力の良さと今の状況に至った理由がわかった。


「…そうか…ところでお守り返して…」

「何でそんなに返して欲しいんですか?」


 理由は知っているが敢えて言わない。昔読んだことを全て言って失敗したのだ。今村相手に失敗はしたくない。


「…まぁ…もういっか…」


 あれだけイベントを起こしたのだから元々一日予定しか「呪力」は入れてないから効力は薄れて来てるはずだし…そう思って今村は回収を諦める。


(…そう…か、もうお終いなんだ…)


 物悲しくなってくる祓。そんな状態に気付いた今村は何故かしんみりしている祓にばれないようにそっと湯船から出る。…だが、隣にいて気付かないわけがない。

祓も気付いて今村の後を追う。


「あ、待って…え?」

「くぁっ!ああもうっ!」


 そしてお約束。滑って転んで互いに裸で密着。普通喜ぶべき立場の今村は尻から落ちて苦虫をダース単位で噛み潰した顔。それに覆い被さって祓は自身の太腿に当たっている違和感の正体を確かめる前に今村のテレパスを見て慌てる。


 ―――打った…油断した…―――


 儚く消えそうな思念に祓は慌てて退く。今村は表面上何事もなかったかのようにしているが尾骶骨を叩いたりして何とか痛みをこらえている。まともな思考は出来ていない。そして少ししてから絞り出すように今村は祓に言った。


「…やっぱ…返せ…」


 祓はここで無駄なことはしない方がいいと大人しく「恋愛君一号」を今村に返した。




 ここまでありがとうございました…

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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