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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第四章~新しい客~
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6.恋愛君一号 前編

「…よし…これで行けるな…ククククク…」


 今村は天界から帰って来ると何かを徹夜で作り上げ非常に邪悪な笑みを浮かべて部屋を出た。












「はっらえ!」

「…どうしたんですか?」


 朝から今村が非常に上機嫌で祓の部屋に現れた。祓は訝しげに今村に応対する。


(…何があったんだろ?)


 見ようにも今の今村には何故かテレパスが通じない。そんな状態の今村は祓にお守りを渡してきた。


「これ!今日一日中持ってな!」

「…はぁ…」


 なんだかよくわからないが祓は折角今村からのプレゼントだし貰っておこう…と受け取る。


「じゃあオッケー!じゃあね!」

「えっと…どこかに行かれるのですか…?」

「少しね!」


 今村は異様に爽やかに祓の部屋を出て行った。そしてすぐさま「ワープホール」を使用して自世界に移動して爆笑を始める。


「うっははははははは!『恋愛君一号』完成!いや~元々から面白い素材だったが…魔改造しがいがあった…」


 今年初めに祓の婚約者と初対面し、そこの神社で買ったお守りだ。今村はそれを素材に「恋愛君一号」を作り上げた。


「さぁ強制フラグメーカー…その力を見せてくれよ…はっはははははは!…ん?」


 笑っていた今村に月美から通信木に連絡が入った。


 ―――あのー…掃除したいんですが、どこからどこまでを…―――


 ―――あー…言ってもわかんねぇと思うから今からそっちに行くわ。―――


 ―――了解です―――


 これからが楽しみだったのに…というところだが下手に物を捨てられればたまったものではない。今村はとんぼ返りで「ワープホール」を使った。


「うおっ!」

「…え?きゃっ…」


 飛んだ先に何故か・・・祓がいてその上から覆いかぶさってしまう。


「とっとっとぉ……これは…」


 突然顔を塞いだ部分を押しのけようとして今村は顔の横にある柔らかいものを掴んだ。そして直感的に何をしたのか分かった。


「あの…そこ胸です…」

「…わかってる。…ごめん。」

 

 覆いかぶさってから今村は偶然にも・・・・顔を祓の胸にうずめる結果になってしまう。そこからは唯々気まずさだけを感じた。


「…悪い。」

「いえ、そんなに謝られると…」


 最初祓の胸に埋もれていることを知った今村が少し照れたのを知って寧ろ少し嬉しい祓の胸中なんぞ知らない今村は気まず過ぎて死にたくなった。それらは全て余す所なく祓に伝わる。


「あの…ホントに気にしなくて大丈夫ですよ…?」

「…強制猥褻罪で訴えない?」

「はい!」

「…何かごめんな…」


 今村はとぼとぼ自室に戻り、整理整頓を指示し始めた。


「あ、お待ちしてました。まずは…」

「あー…あ、とりあえずそれに触ったら爆死するから。」


 手を伸ばした先にあるものの処遇について訊こうとする月美の言葉が終わる前に気だるげに今村がそう言って月美は慌てて手を引っ込めた。


「か…かしこまりました…では…」

「あ、それも触ったら死ぬよ?…まぁ悪魔だし大丈夫かなぁ…魂を吸収されるだけだし…」


 次に手を出そうとしたものに触れる前に今村は月美に言って月美は慌てて手を引っ込める。


「…すみません。危険なものを先に言っていただけませんか?」

「…どれくらいから危険?硫酸に手ぇ突っ込んだら溶ける?」

「溶けますよ!悪魔だって生きてるんですから!」


 思わず突っ込んでしまった月美はすぐに口に手を当てて失礼しましたと付け加えて説明をする。


「私は悪魔と申しましても人間と大した変わりはございません。ですから普通の人間に危険があるものは…」

「じゃあ…置物は触っちゃだめだね。死ぬから。」


 なんてものを借り物の部屋に設置しているのだろう。壁一面にある置物を見て月美は逃げ出したくなった。


「…薬品系なら大丈夫かなぁ…瓶だし。」

「…分かりまし…」

「あ!それは駄目!」


 了承と月美が空の瓶に手を伸ばした瞬間今村が鋭く言ってローブでその手を止めた。


「…危ないなぁ…これに触れたら瓶になるから触らない方がいいよ?」


 月美の顔が引き攣った。


「え…ど…どういう意味なんですか…?」

「ん~…この瓶は瓶を作るための瓶で、有機物は瓶を作る時の燃料にするってこと。勝手に貯蔵してくれるから便利なんだよね。序でに言っとくなら虫を惹き付けるから超便利。」

「…それで危うく死にかけた私として見ればいい顔は出来ませんけど…どの瓶は大丈夫ですか?」

「空瓶以外は大丈夫だよ。」


 その言葉に安心する月美、だが続く今村の言葉にその表情は再び凍りつく。


「ただ中にある薬品は危険だけどね。まぁ零さなければ死なないから大丈夫。」

「…どの辺が大丈夫なんですか…零したら死ぬって言ってるんですよね?」


 だんだんジト目になって行く月美。だが、仕事は仕事なのでとりかかる。要するに零さなければいいのだ。

 そして扉付近の薬品の上の段に手を伸ばした。


「あの…さっき聞き忘れ…」

「キャアっ!」

「危ねぇっ!」


 その途端祓が入って来て月美は過度に緊張していたところを下手に刺激されてバランスを崩す。そして今村が声を聴いて振り向き、薬品をローブで零さないように支えに入った。

 そこまでは良かったのだが入って来た祓がバランスを崩した衝撃で落ちて来た空の・・瓶が割れないように空中で取ろうと手を伸ばしたのを今村が見て咄嗟に開いた手で祓を引いてからが不味かった。

 思ったより強烈に引いてしまったようで祓はバランスを崩しそのままの勢いで今村の首筋にキス。それでバランスが戻ることはなく、そのまま横転。俯せに倒れた今村の上に乗っかる。


「…で…何?退いて。」


 今村の方は首筋のキスに気付いていない。下敷きになったまま祓に何しに来たのか訊く。だが祓の方は顔が近いのと唇に触れた感触とでいっぱいいっぱいだ。


「えと…朝食をどうするか…その…ご…」

「…とりあえず退いて。」

「ご馳走様でしたっ!」


 まだ退いてなかったということに気付いた祓はテンパるあまり逃げ出した。


「…朝食作ったけどどうですか?と先に食べましたが混じったのか…?」


 残された今村は首を傾げながらそう解釈して月美の方を見た。


「…もう棚の掃除はいいや。床掃除だけしといて。」

「はい…」


 疲れた様子の月美はそれ以上何も言うことが出来なかった。



















「はぁ…何か…何かぁ~もうっ…」


 先程からの衝撃が強い体験に祓は自室で顔を赤くして悶えていた。


「うぅ…先生は気付いてないみたいだけど…」


 そう言って桜色の唇を指でなぞり一層顔を赤くさせる。


「なんか少ししょっぱい感じで…でも首でこれだと…口と口でしたら…うぅ~っ」


 自分の想像で更に悶える。心臓は今まで感じたことのない高鳴りを見せている。


「何か…今日は凄い…もっと色々ありそう…」


 祓はこれ以上の事があったらどうしようと思いつつも珍しく期待して心を落ち着かせようと努め始めた。




 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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