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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第四章~新しい客~
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1.復活

「よし!異世界にはいつでも行けるようになったし!準備をしっかりしないとな!」


 今村は帰って来た翌日、「酒気円分化」を使用して速攻で立ち直ると実験を開始しようと立ち上がった。


「…んにゅ…しぇんしぇ…」


 祓が今村の姿を認めてよろよろ近付いて来る。まだ酔いが残っているようだ。因みにルカと女神に関してはすでに閉鎖空間に放り込んである。また、アーラムは昨日の時点で仕事の為にに戻っている。チャーンドとタナトスはまだ眠っているようだ。タナトスに関しては微妙に服を肌蹴させている寧々に抱き着かれているが…

 そんなことを思って見ていると祓が今村に抱き着いて来た。


「んふー…」

「…なんだこれ。」


 何か知らないが安心したらしい祓はしがみついたまま眠ったようだ。今村は少し考えて横に式神を作ると術で場所を入れ替えた。


「よし!まずはスライムの様子見だな!」


 今村はテンション高めにそう言って「ワープホール」を使用した。


「よーしよし。」


 今村は閉鎖空間から誰もいない滅んだ世界にスライムを移して大量に放し飼いをしていた。


「いや~この辺り獣しかいないけど…はぁっ!」


 首が三つある巨大な熊の頭を蹴りで2つ破砕して今村は後をその辺にいるスライムに任せた。


「これがこの辺りの最弱ってのがウケるよね!」


 スライムが遅れた方の首を再生し始めている熊を見て今村は楽しげに笑った。そして傀儡シリーズ「耕」が耕し始めている畑の方をちらっと見て考える。


「…スライムだけじゃ守りきれんか~」


 無残に荒らされた土地を見て今村は少し悲しげな視線を向ける。そして振り向きざまに「白礼刀法 44の型:無切なぎり)」を使って熊の体を横薙ぎに払い切った。


「…まぁスライムたちは大丈夫だろ。」


 巻き込んでしまったスライムを見て可哀そうになった今村がアーラムが作った世界より多い大気中の魔力を注ぎ込むとすぐに元よりも大きなスライムになる。


「…よし、まぁこんなところかな。…あとあの女神にルカの相手だけじゃなくてこっちの仕事もさせようかな…」


 対策を考えて今村はこの世界を後にした。





「…ん?」


 出て来た所に戻ろうと「ワープホール」をつなげたつもりが「幻夜の館」の外に出て来てしまっていた今村は少しビックリした。


「あぁ…そうか。」


 そこが「幻夜の館」であることを認めて今村は世界を間違えたわけじゃないことに安堵する。


 そんな所に理事長が現れた。


「…今村君。こんな所でどうしたのですか?」

「あぁ…まぁ…ちょっと間違えましてね。」


 今村は苦笑い気味に答える。それをどう取ったのか理事長は今村に言った。


「…とりあえず、ここでは何ですから理事長室に来てください。」

「…?はい。」


 何故か元気のない理事長を怪訝に思いながら今村は理事長に付いて行った。



















「…祓君は死にました。」


 重々しい雰囲気で告げられたその言葉に今村はどういう顔をすればいいか分からなかった。


「一応元世話役の君には教えておこうと思いましてね…」


(…何言ってんだこいつ…)


 今村が何も言わないことを理事長は信じられないのだと受け取り続けた。


「信じられないのも訳はないと思いますし、こんなに簡単に人が死ぬなんて信じられないことと思いますが…」


(…いや、テメェなんかよりよっぽど知ってるけど…さて、どういうことか整理しようか。)


 何か言っている理事長を無視して今村は裏の意味を取ろうとする。


(…祓は生きてる。今も「氣」を感じるしそれは間違いない。…いや、でも確かに人としての・・・・祓は死んでる。何せ「神核」を入れられてるんだから…もしかしてアーラムが何か手を回したのか…?)


 今村は可愛らしい金髪の少年を思い出す。


(…ってことは世話役解任あたりから仕組んでたのかね?)


 ほぼ理事長の話を斬り捨てて考え続ける。一応並列思考を利用して返事やら反応やらはしておくが…


(…ってか今こいつ祓を犯したかったって…もう死ねよ。…俺に同意を求めるな…俺はお前とは違って万年発情期じゃねぇんだよ…)


 こいつげっすいなぁ~と思いながら話を聞いておく。しかも本題はここじゃないらしい。


(…はよ本題入れや…)


 そんなことを思いながら「幻夜の館」に戻ってから何を作るか考えることにした今村だった。



















「…んぅ…あれ…?先生は…?」


 祓は自分が傀儡にしがみついて眠っていたことに気が付いた。記憶の中では今村にしがみついていたはず…と思いながら辺りを見渡す。だがそこに今村の姿はなかった。


(…昨日の話…先生は一体どれだけ傷ついて来たんだろ…)


 今村のことを思い出しているとふと昨日の記憶が呼びさまされてきた。今村は最後の方まで完全に酔い切らずにキス魔にならなかったのが残念だったがそれでもタナトスやチャーンド、アーラム達と一角で前世の話をしていたのを聞けたのだ。

 酔って泣き始めたアーラムの言葉が正しいなら今村は前世の影響で人間不信になっているようだ。


「…先生を除く7人パーティー中4人が先生を裏切るなんて…」


 祓はその時に自分がいなかったことを強く悔やんだ。しかしこればかりはどうにもならないことはわかりきっている。

 怒り混じりのチャーンドの言葉が正しければ今村はいつも愛していると言っていた人、一番の親友だった人、そして一番弟子に裏切られたらしい。

 祓はそんな中でも今村の状態が気になっていた。今村は怒ったり悲しんだりしている二人を前に笑って・・・いたのだ。祓にはその状態の理解が全くできなかった。


(…もっと先生のことを知れれば…でも『ディザイア』はこれを叶えてくれない…)


 明らかに能力の範疇を越しているようだった。自身の能力の無さに歯噛みしていた。その時だった。祓の中にどこか懐かしい不思議な感覚が蘇ってきた。


「っつ!これは…!『テレパス』…?何で…先生が止めてくれたはず…」


 ―――タナトス様愛してます――― ―――アリスさん――― ―――なぜ裏切ったぁっ!何故…仁は何故俺らを逃がして一人で―――


 そんな思考が流れ込んできていたとき不意に祓は自身がこれを止めることが出来るのに気付いた。


「…コントロール…出来る…?」


 祓が拒絶感を心の中で強く念じるとそれきりテレパスは通じなくなった。


「…?」


 試しにもう一度使ってみると通じるようになった。そしてうるさいので切る。


「…これなら…」


 祓はいつしか小さく拳を握っていた。そこに今村が帰ってくる。


(…少しだけ…少しだけお願いします。)


 祓は帰って来た今村にテレパスを使ってみる。すると通じた感触があった。そこまでやっておきながら祓はふと怖くなる。


(…もしも先生が他の人と同じだったら…そんなことはないと思うけど…)


 そんなことを思っていた祓だったが今村のことを知りたい一心でついに聞いてしまう。そして祓の頭の中に入った言葉は。


 ―――あ~死にてぇなぁ―――


 だった。


(は?)


 当然訳が分からなくて祓は固まった。




 ここまでありがとうございます!


 テレパスが復活した上に進化したのは「神核」の影響です。5日目で変化が起きました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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