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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
最終章~終わりの幕引き~
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死亡

 本日2話目の投稿で、最終話になります。

「ハッハァッ!チートでも、消し切れねぇとは……流石っ!」


 今村は一方的な攻撃を繰り広げていた。尤も、相手は攻撃意思がなくとも触れるだけで消失させる力を持っているので互角の戦いとも言えるが。


「消えろ、失せろ。今、ここにあることすらをもなかったことに!」


 自らの能力を自在に使うことが出来るようになった今村は【永久黑之闇蓮華とこしえくろのやみれんげ】という触媒なしにそのような技を繰り出せるようになっていた。


 だが―――


「効かねぇか……」


 相手に変化はない。


「んー……相手に変化がないようにこっちもこの能力が起きたから一切疲れると言うことはないんだが……どうしよ?消滅するって張り切って言ってたのにずっとこのままここに居座るのは……」

「兄様兄様。」

「あ?」


 絶え間なく大技を繰り広げる中で今村は突然後ろから声をかけられて割と驚きながら後ろを振り向く。


 そこには白髪のシュティがいた。


「……いや、シュティじゃないな。」

「負の、陰陽の陰、無を司る方の、私だぜー?」

「何故そこで首を傾げた……?」

「自信、なかった……」


 術式の行使の片手間に話をすることにすると、いつの間にか黒い方のシュティもこの場に現れていた。


「私が結界消して、」

「…………私が有ったことにしたの……」

「ふむ。まぁどうでもいいけど……何か用?あ、消の方のシュティは何か俺の中で色々してたみたいで、悪いね。」

「うん。私は兄様が生きて行けるように頑張ったー!でもー、最後の方はぜんぜんだったぜー?虚脱でー死のうと思われてたしー」

「まぁ、でもお蔭で比較的長生きしたぞ。」

「私はー全っ然、話してないのに消えるとかーズルいと思わないー?」


 会話中、【暴食現象】が人型の腕から黒い何かを伸ばして進路上の全ての物を食い尽くしながら今村に迫るが、それを消しつつ今村は白いシュティの言葉に頷く。


「確かに、黒い方だけ可哀想だよな。こんなのと……」

「びしょーじょパーンチー!」

「……まぁ、確かに認めるが……」


 ふざけた名前のパンチを避けて今村はそのままの勢いで飛び込んできた白い方のシュティを抱きかかえる形になる。


「あ……ごめんなさい……」

「いや別にぃっ!?」


 構わない、そう言おうとして今村は体から氣がもの凄い勢いで奪い取られていることに気付き、後ろを向く。


「あ、どうも。」


 そこには【暴食現象】の触腕があり、【暴食現象】がそれに手繰り寄せられるようにもの凄い勢いで近付いて来ていた。


 そして、【暴食現象】は今村に背後から抱き着くかのような形で力を奪い始める。


「うっそぉ、俺、流石に消滅するとは言ったけどこんな間抜けな死に方は嫌なんだけど!?えぇい、『在り得べからざる今を成せ』……」


 ありとあらゆる矛盾を包括し、不都合を消し去る力を以て今村はそれに抗う。


「ごめん兄様ー」

「お前ホントマジでふざけんな。ボケが。」

「有の私ー超回復のキスしたげてー」

「…………医療行為……だから……失礼……」


 無の白いシュティを台にしてその上から濃厚なキスをぶちかます有の黒いシュティ。


(お前らマジでふざけんなよ!これで死んだらマジで一生、俺の一生が最悪の形で幕を下ろすんだからな!?大体、加勢は要らん!)


 それを受けつつ念話でブチ切れる今村。怒られたのでこの場は仕方ないとばかりに黒いシュティが退くと今度は白いシュティが迫って来た。


「だか」


(だからふざけんな!何なの?俺のこと嫌いなの?いや、嫌いなんだろうけど、もっと別のやり方があるんじゃないかな!?嫌がらせとして、非っ常に効果的なのは認めるがな!とにかく、今のままじゃマズイな……)


「大好きだよ、兄様……」


(そう言うのは要らん。そうか、『在り得べからざる今』を使ってそれ自体の上限すらなくせば……)


「兄様兄様。」

「あんだよ。」

「兄様の好きな作者の、高見東志って、実は志藤さんって知ってたー?」

「…………………………は?」


 今村は今しようとしていたことを全て投げ捨てて思考停止した。一応、反射的な感じで思考せずとも【暴食現象】には抗えているがそれ以上は何もできない。


「は?何言ってんのお前。あんなまともな恋愛をあんな穢れた奴が……」

「にやり……そうだぜー?兄様用にウケる奴だから、4刀流から、一般的に邪道とされる3つの愛の形を引-たんだぜー?しどう。からまず、点になってるのを2本抜いてー」

「しとう。……アナグラムも出来てないぞ?何だ?」

「…………まだ……一本、抜け切れてないよ…………?」

(4)(3)に変えるんだーよー?」


 言われるままにして「みとうたかし」になった。それを瞬時に頭の中で入れ替えて「たかみとうし」。


「……回りくどっ!」

「それくらいしないとー、兄様すぐ勘付くからー」

「……今話す必要あったかなぁ?まぁいいや。予想外の事実でいい冥土の土産にくらいにはなった。さて、そろそろ……」


 今度こそ、と術式を行使しようとした今村に再び白い方のシュティが変に抑揚をつけた口調で告げる。


「暴露その2~兄様はー、最近テンションが上がった時に、蒲鉾とかーちくわとか作って食べてましたー」

「……それが何だ?今忙しいんだけど。」

「実は!両方とも蒲鉾でーす。そしてー、実はパチものだからーガマぼこと称するべきでしたー」

「……で?」


 先程の衝撃の事実により、シュティの言葉に耳を傾ける間は少し手を止めて聞いてみる今村。するとシュティの可愛らしい唇は適当なことを告げる。


「でーがまはー降魔、って書くのーぼこはー矛ー足してー降魔矛~!体の中にあった虚無がー暴れすぎないようにー体が求めたんだよ~!」

「いや、それには無理があると思うな。苦しい。……もういい?」

「えっと、えっと…………兄様大好きー」


 もうないらしい。キスして誤魔化しに来ているが今村は無視して術式に移る。


「私も、です……」

「え、誰?」


 だが、聞き覚えのない、耳を蕩かして理性を破壊しかねない美声に今村は思わず白いシュティのキスを無視して振り返った。


「か、っは……『在り得べからざる今を……』」


 そこにいたのは原神を越える美女。いや、美女なんて言葉では表せない程の美しさと可愛らしさを放つ何かがいた。


「あ、何かイラッ……」

「おま、マジで、ぶっ殺すぞ?」


 思わず隆起した一部分を見て自分たちには欲情しないのに……とイラッと来たらしいシュティが隆起した部分を握って今村は思わず結構な力で蹴り飛ばし、軽く結界に皹を入れた。


「うふふ……大きくなられたのでしたら、話は早いですね。始めましょう?」

「いや、待て、大体想像はついてるが……あんた、誰?」

「そうですね……現象名は【暴食現象】ですが、可愛くないので別の名前を考えてくれませんか?」


 やっぱりか、と思いつつ今村はこちらを離さない終世の美女を前にして適当な名前を考える。


「……じゃあ遍くモノを喰らうとか聞くからアマネで。」

「……かなり、安直ですね。……ですが、旦那様となられるお方からの命名ですから従います。では始めましょう?」

「待て。何を始める気だ?」


 終世の美女は艶やかと言う言葉が陳腐に思えるほど美しい美笑で答えた。


「この世界が始まる頃から、封印され、眠りに就いていました。そして【暴食現象】と名を付けられるほどの食事を摂り、今初めて自我を保てるほど満足致しました。では最後に来るのは、お分かりでしょう?」

「おい馬鹿ども、退け。マジで。ふざけんな。そうだ、滅茶苦茶いい男がたくさん今、外にいるんだ。案内するから。ちょっと待って?いい?」

「うふふ。えぇ。ここでは風情がないですものね……少し、待ちます。」


 全身統制を使っていても冷静な思考を妨げる程の美貌を前に今村は無理矢理理性を総動員して結界を破壊して外に出る。


 そこには命の覚悟をしていた滅世の美少女達、その他大勢が未だ戦闘を続けており、取り敢えず今村は男性の原神たちを探す。


「あらあら、可愛らしいお方が……」

「よし、そっち系の属性持ちか!任せろ!無駄に美女やら美少女の知り合いはたくさんいる!相手にゃ記憶はないだろうが捕捉は簡単だ!」

「人脈活動がお盛んだったのですね……」

「……あぁ?何か言葉が違う気がするが、何だろ……確かに、人脈を作るのに勤しんでた時もあったが……あー何か納得いかないけどまぁいいか……えーと、取り敢えず……お前らの方は用がないみたいだし五月蠅いし邪魔だから消えろ。」


 柏手1つ。今村は戦闘中の敵性勢力を全て消し飛ばして女神たちの首脳部に舞い降りて背中の終世の美女を振り落そうと身震いする。


「……はぁ。」

「おい、連れて来ただろうが、退け。お前の好きな美少女だぞ?これ以上ない位可愛いだろ?」

「……旦那様は、私の方が可愛いと思ってくれないのですか?」

「いいから降りてくんない?」


 溜息をつくミニアンに対して空気を全く読まない今村。どうせ消えるのでその辺はどうでもいいと思っているが、流石に周囲との温度差を感じ取って近くにいる【運命神】に話を聞いて頷く。


 当然、【運命神】は若干今村に虚偽の情報を与えたが、今村はそれを感じつつも周囲の真剣な雰囲気の前にはどちらにしろ軽すぎる自分の出る幕ではないと手を打つことにする。


「何か、俺が来るのは違うっぽいね。はい。」


 そして全員復活させた。そして告げる。


「えーと、邪魔して悪かったね。夫婦間の主導権「違うよ?」」

「……というより……」


 女神たちは揃って思った。


(条件クリアした……自分で、勝手に。)


「……あれ?そう言えば……何でこいつら俺を見ても攻撃しないんだ?」

「出来ました……フフフフフフフフフ……出来ましたよ。皆さん……もう、二度と逃がさない…………強力なのが……」

「コトハ……?何でここに……?」

「……また、美少女の方が……」


 突如として現れた原神級の黒髪の美少女に今村は首を傾げ、終世の美女はムッとした顔で今村を抱き締める力を強くする。


「……ふふふふふ。」

「あはは。」

「やりましたね……」

「え?何?何か怖いんだけど。」


 笑い始める女神たち。それを見て敵の神々が攻撃を仕掛けようとするが、その前に【雷竜時空神】が舞い降りて睨みを利かす。


「おぉ……念願が、成就する時が来たのぉ……」

「何?つーか、記憶戻ってるよな?」


 コトハが持っている紙にわらわらと人が集まり、女神以外の大方は笑顔で今更なことを疑問視する今村に対してお疲れ様ですや、ようこそ地獄へ、地獄に堕ちろなどのメッセージを送って解散していく。


「え?地獄に行くとかそう言う以前に消えるんだが……」

「いや、お頭が行くのは神世の墓場ですよ……」

「葬式には呼んでくださいね~」

「…………まさか?」


 その言い回しは……と今村はやたらと魅力が溢れる女神たちの中央にいるコトハ目掛けて移動する。そしてその紙切れを見て、何も言わずに笑顔で引き裂きにかかる。


「あっ。ダメだよー?そこにあるのはコピーだけど。」

「はいはい。諦めて?」

「ざけんな!そう簡単に神世を諦めてたまるか!」

「……消滅しようとしていた口で良く言えますねぇ……?」


 この場には、この件に関して敵しかいない。取り敢えず今村は書類に対して抵抗する。


「俺はサインなんて……」

「……それは私たちが心内から無理やり追い出された時のことでしたーほわんほわん。」


 シュティの過去話が適当に入る。割と適当な口調などを除いて要約すると今村が今村ではないと認定した今村や、一部が今村と同化していた大罪たちが急な排出によりこちらに来てしまい、腹いせや様々な思惑により自らの存在や今村との同化部分を使いきって調印したらしい。


「オイオイ。俺じゃないじゃん……ま、いいけどね。」


 色めき立つ女神たち。それに対して今村は酷薄な笑みを浮かべる。


「どうせ、消せるし!『在り得べからざる今を成せ』!」


 ……何も、起きなかった。沈黙が訪れる中で後ろにいるアマネからおずおずと発言がある。


「……あの、それを本気で最初から使われると私も困るので……ずっとそれは食べさせていただいてます……」

「はぁ!?」


 後ろからのアマネの控えめな声に今村は声が裏返りそうになる。


「じゃあ、『消滅』の術式で……!」

「陰陽の陰、無を司る女神としてその術式却下だぜ~?」

「……テメェら……じゃあ、精神介入を……」

「……僕に効くと思うのかい?」

「くっ……」


 『孤独な大帝(ソリタリーエンペラー)』はクイーンたちからのチェックから逃れようと思考を巡らせる。


「魔術……」

「お兄様、諦めてください……」


 【無垢なる美】、セイランが諦観を込めて首を振った後、世界が華やぐ笑みを見せる。


「嫌だ、俺は、諦めない……消滅を、決めるんだ……道具を使ってでも……」

「あるじ様?」

「ついでにお手付け願います!」

「「「「我ら愛人志望のクワトロシスターズ!」」」」

「ですから、仁さん……もう諦めましょうよ……」


 るぅねとクワトロシスターズ、そして【清雅なる美】、ユリンが道具を看破する。尚も逃れようとする今村に対して祓たちは逃げられないようにするのは強大な力を持つ女神たちに任せて協力者たちに謝礼を払う作業に移行したようだ。


「ならば、運命を……」

「……出来ると思うのですか?私の目の前で……」


 縁や運命を変えようとすると【運命神】が涼やかな視線で制する。


「時を……」

「お兄ちゃん呼んだ?」

「力づくで……」

「間に合ったみたいだね!よかった……ボク、本当に心配したよ……」

「お師匠様ー!私、強くなりました!」


 チェックメイト。その言葉が脳裏をよぎる。だが、今村は諦めない。


「何かないか。何かが……俺は何かまだ見落としている。妖氣、邪氣、神氣、霊氣他にも仙氣……使えるものを洗い出せ……」

「ふっふっふ……今こそ、全世界のトリックスターと呼ばれた搦め手の使い手である私の眼を使う時……絶対、逃がさない……!」

「…………有の神として、……そして、兄様の、お嫁さんとして……逃げ得る、全ての方法を…………却下……!」

「お父様……無理ですよ……」


 正攻法では無理のようだ。では、負攻法ではどうか。


「……まぁ、取り敢えず結婚成立だね。連れて行こう。」


 考え込み始めた今村を連れて女神たちは先ほどの言葉、「ま、いいか」の言霊を本人の承諾に新たに加えて、例外者を既婚者に引き摺り込みその生涯を墓場に連行することに成功した。




 ここまでありがとうございました!


 一応、完結です。これ以外は……まぁ、6月に結婚式と言う名前のお葬式まではこちらに書きますがその他は『例外者の(・・・・)異常な日常』ではなくなるのでここには書かない予定です。未定ですが。

 あと今のところなんとなく決まっているのは各奥さんとの結婚生活は各奥方と今村くんのエピローグに付く気がするくらいですかね。その辺の奥方たちの話については活動報告でお願いします。


 何はともあれ此処までの読了、本当にありがとうございました。皆さん、心が広いですね。


 さて、そんな心が広い皆さんへ。


 明日、まぁ初掲載は大体1時間後ですが……それからは今村くんが地球から帰って来た後にバカンス代わりに異世界に行ったつもりだった『緩く旅して苛烈に復讐を』という話を掲載します。

 そちらまで読んで下さる皆さんは、相当心が広いので内心で分かった分かったと思いつつ黙っていてくれると思いますが、一応私からのお願いです。今村くんの正体はその話では内密にしていただけると助かります。


 長くなりましたが、ここまで本当にありがとうございました。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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