13.異世界その1戦終了
「…何だ?あ!ってか折角張った結界が!」
辺りの喧騒が近いものになって今村が女神を逃がさないように張った結界が崩壊したことを今村に知らせる。
(…まぁ今更逃がさないけどね。)
すでに足首に髪を結んでいるので逃げることはできない女神から目を離して今村は轟音がした方を向く。そこには悪鬼羅刹たちがいた。
「…おい…」
流石のタナトスも顔を引き攣らせている。そこに丁度今村の傀儡「夜壊傀儡」からの連絡が入った。
「…やったの…近衛の方か…あ~『魔壊傀儡』の方付けてれば…」
今村は後悔した。そんな様子の今村を悪鬼の一人と化した者が見つける。するとすぐに一人の美しい淑女になった。
「みなさぁん!今村様ご存命よぉ!」
その言葉で悪鬼軍は美女揃いになった。今村は現実を見たくなかったので全く関係ない考察を始める。
(何で美人揃いなんだろ?あ、この世界のルールとして美形が強い。なら逆説的に強いなら美形ってことか。それで強くなってこの世界に再び入って来たこいつらは俺の薬の効果と相まって美人になったってことか。よしQ&A…)
「こうなったら…『英霊召喚』」
女神が何か言った瞬間、誰もいなかった土地に大勢の軍隊が現れる。今村はそれで現実に帰って来た。
「フフフフフ…弱体化した『冥魔邪神』と平和惚けしたシエテ程度から逃げることぐらいなら私でも可能!」
「あー…大将。これめんどくさそうだぞ。」
大勢の軍勢を見てタナトスが今村に報告を入れる。
「見た所魂が入ってない。唯の肉人形だ。…最初から死んでるから殺すこともできない。」
「はっははははぁ!さしもの『冥魔邪神』も弱体化してる今なら…」
そこで女神の顔に影が落ちる。女神は自身が創造した世界での突然の異変に顔を歪め空を見上げた。そして女神の勝ち誇った笑みは完全に打ち砕かれた。
「『ジリオンランス』…さぁ狂ったように踊れぇっ!『踊り狂う槍の革命劇』」
今村の宣言と共に空を覆い尽くしていた槍が猛烈なスピンをしながら降り注ぎ肉人形を単なる肉塊に変えていく。
「え~こちらの地方では晴れ時々槍が降るでしょう。皆様お出かけの際にはお気をつけて。」
「…どう気をつけろと…」
今村がふざけているのに律儀に突っ込みを入れるタナトス。
「…それにしても…久々に見たな。でも珍しいな…順を追わないでいきなりジリオンって…正直『ミリオンダガー』で足りたと思うぞ…?」
凄惨な光景の前でタナトスは今村に尋ねる。それに今村は苦笑いと共に答える。
「いや~まだ『倍数系』は作ってねぇんよ…」
その答えにタナトスは一層不可解な顔を見せる。
「なら何でいきなり『ジリオンランス』…?『サウザンドナイフ』ならまだしも…」
「あぁ。アーラムがお守り代わりにくれたから。一回限りだけどね。」
今村は事もなさげにそう言ってのけると最終奥義と思われる技を一瞬で破られた放心状態の女神に邪悪な微笑みを浮かべて声を掛けた。
「…で?他には?」
「ヒィッ!」
女神はおびえた表情で今村を見る。そして次には今村の足元に縋り付いた。
「お…お願いします!殺さないでください!」
「…でた。身勝手な都合…」
今村はうんざりした顔で女神を見下ろす。女神は続けた。
「この身全てを使ってあなた様にご奉仕させていただきます!昼も夜も何でも致します!どうかご慈悲を!」
「何でも…ねぇ…」
今村の顔がもの凄い邪悪な笑みを浮かべた。それを横で見ていたルカが今村の腕を引いて必死に止める。
「だ…駄目ですよ!?え…エッチなことなら私が頑張りますから!確かに女神様の方が美人かもしれませんが私は…えと…その…頑張りますからぁ!」
「…お前は俺を何だと思ってるんだ…そういう事がしたかったらそういう呪具で作るわ…さて、名も知らぬ女神さんよぉ…何でもするんだな?」
今村は溜息と共にルカを自身から引き剥がすともの凄く歪んだ笑みをこれでもかと言うほど右側だけの口角を吊り上げたまま言った。
「…は…で…出来れば…痛くないことを…」
「…面倒な。」
タナトスが後ろから女神に殺気を飛ばした。女神は震え上がる。
「貴様は無条件に俺のたいしょ…じゃなくて、俺たちの大将を殺そうとしたんだぞ?それをわかって…」
「あーあーいいよもうメンドイな…とりあえず3軍の方の混乱も収まったらしいし逃げたつもりでいる砂利ガキ捕まえて城に帰るぞっとん?」
今村の後ろから何かが飛び込んできた。そしてそれに伴って鳴き声と背中が濡れる感触が広がる。
「…?あぁ小野か。」
3軍の部隊長が謝罪の報告に来たのかと思っていたら全く違う人で少々戸惑ったが少し考えて思い出した。小野の方は涙ながらに何か言っている。
「よが…よがったよぉ~いまっ…今村生きでるよぉ~」
「…あれ?美川は?」
泣いている小野をどうしたものかと思いつつ今村はもう一人連れてきた元同級生のことを思い浮かべる。彼は小野に遅れてすぐにやって来た。
「…生きてたのか。」
「生きてちゃ悪いのか。」
どことなく安堵した風の美川に不敵に笑った今村。そんな言葉に美川が反応する前に反論が飛んできた。
「そんなことありません!」
「しょんなこと言わないでぇ…」
涙ながらに反論してくる自身の後ろにいる小野と珍しく本気で怒っているルカに今村は少し引く。
(…別に俺が死んだってよかろうに…)
自身の前の足元に縋っていた女神に「白礼刀法」の初太刀の型で術を使えなくしておきながら横でどれだけ心配したのか五月蠅く言い募る弟子と最早何を言っているのか分からない小野をどうしようか考える。
(…あんまりここに長くいるとルゥリンがね~逃げてめ・ん・ど…?あ、何か城に戻ってる。…あいつ馬鹿なのかな?)
今村はとりあえず二人が落ち着くのを待って城に帰還した。
「…お帰りなさいませ。先生。」
戻るとすぐに不機嫌な祓が出迎えてくれた。そしてその傍らにはローシが封印式の札を貼ったロープでぐるぐる巻きにしたルゥリンを抱えていた。そして彼はルゥリンを投げ出して五体投地する。
「お帰りなさいませぇっ!『魔神大帝』様ぁっ!」
(…正直敵も味方もネーミングセンスが壊滅的すぎる…今回の戦いで一番傷を負ったのはここだからな!?)
そんなことを思いつつ捕虜の前でそう言うことは出来ないので黙っておく。そして投げ捨てられたルゥリンの方を見る。彼女は縛られたままで受け身を取ることもできなかったようで強かに背中を強打して顔を顰めていた。
そんな今村の視線に気付いた祓が口を開く。
「…先生たちが敗北して女神の能力で操られて城に襲い掛かってくる…って言っていたので拘束しました。」
「ん。ごくろ。」
「…で、説明いただけますよね?」
祓は怒っていますと言う表情を前面に出して今村に詰め寄った。吐息がかかるほどの近距離で今村は両手を上げてひらひらしてみせた。
「…飯の後でな~」
「わかりました。すぐに準備します。…火をお借りしますね?」
「…へ?」
「この前麺を茹でるときに使った…」
「あぁ…あれ…」
今村は本当にすぐに作る気だな…と思いつつ術式を書いた札を手渡した。祓がそれを持って消えると今村は何から始めるか…と頭を掻きまわしながら考えた。
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