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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
最終章~終わりの幕引き~
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二層

「…………さて、はて……そうか……私とこの人らは……まぁ、今更どうにもできないけどなぁ……」

「どうしたの?」

「……まぁ、色々わかったんですよ。」


 心内にて、今村の様子がおかしいことに突っ込みを入れるクロノ。後ろでは今村が今村と認めていない存在が出て来ているのを捕獲して甘やかしまくりながら一行が付いて来ている。


「……あの、そいつらをあんまり甘やかすと私が混乱するんですが……」

「でも、これもひとくんだし……無下にできないよ……」

「困るんですがねぇ……俺から私に代わるくらいには……まぁいいです。」

「ねぇねぇ、ところでチビおっぱい。」


 安善が今村と手をつないだまま移動をしているクロノの袖を引いて暴言を吐いた。


「ち、チビおっぱい?……クロノのこと……?」

「そーだよ?ねぇ、いつまでご主人様と手を繋いでるの?交代してよ。」

「いーじゃん……早い者勝ちだよぉ……」


 クロノと安善が争いを始めるとヴァルゴがその間に今村の手を取る。その様子を見て道中で現れた今村を甘やかしていた祓が案内者の今村に尋ねる。


「そういえば、先生……嫌がりませんね?」

「……まぁ、仕事ですし。一応幾つかが統合された理性を司ってますから……何とも思いません。そんなことより2層に着きました。」


 踊り場に出た今村はそう言って立ち止まり、後ろを振り返る。


「何してるんですか……取り敢えず、中に入る際にはそれ、おいて行ってくださいね?私たちは私たちのことが大っ嫌いなので、多分連れて行くと殺します。いいですか?」

「……こんなに可愛いのに……」


 今村は共感出来なかったが、アリスの呟きにミーシャが手を挙げる。


「……じゃあ、私が面倒看てます。皆さんは中に入って下さい。外で待っているので……」

「……まぁ、いいでしょう。」


 今村はそう言って黒の両開きの扉を召喚し、一行を中へと導いた。



「……あぁ、言い忘れていましたが……この階層はいるだけで死ぬ恐れがあるのでお気をつけて。右が黒縄、左が尼刺部陀になっていますので。」

「……何で地獄なのかしら?」


 白崎の突っ込みに今村は淡々と答える。


「憤怒と厭世の私がいるからです。……まぁ憤怒の方は縛ってありますし、厭世の方も基本的には何もしないので大丈夫でしょうが……」


 そう言いつつ扉から架けられている橋を通りながら今村はそう告げる。それに対してヴァルゴが尋ねた。


「でもですよ~?それなら温度が混ざって普通の温度になるのが普通じゃないですか~?」

「エントロピーが……まぁ、説明は省きますが職人の私と、秩序の私が結託して折角だしと言う理由で右と左を綺麗に分けました。なので今渡っている境界線だけが常温です。」

「……よく見れば、この橋のディティール無駄に凄いわ……何か。何となく。」


 職人の今村と言うことを受けてフォンがそう言うと、シュティが熱気の方にいるフォンを見て言った。


「…………あんまり、近付くと……焼肉…………な……」

「……神農、あんたが言うと洒落にならないわよ……?」

「着きました。」


 シュティに変な記憶が蘇り、フォンが介抱する羽目になった中で橋を渡った一行は空中に浮かび、右では灼熱の炎が上がり、左では氷山が聳え立つ奇妙で巨大な円盤の上に着いた。


「それではしばしの間、ご歓談を。」


 椅子に座った今村たちの前で、自分も椅子を準備し、そこに腰かけて先程の本を出して読み始める今村だが、安善が首を傾げて尋ねる。


「ねー……説明してほしいな……」

「……あぁ、皆さまから見て左から過剰秩序、職人、厭世、自己本位です。自己本位が憤怒ですので。」


 興味なさ気に行った後、本に目を落とす今村。それに対してアリスは目を光らせて厭世の今村を見る。


「つまり、あのひとくんを何とかすればいいんじゃ……?」


 思い立ったが吉日とばかりに進み始めるアリス。それを見た職人が勢いよく席から立ち上がりアリスの前に立ちはだかり、それを止める。


「……?どうしたの……?」

「……いや、綺麗だ。」

「へっ?」


 思いがけない一言にアリスは理解できずに止まり、理解するにつれて顔が赤く染まり始める。


「えっ、あ、……でも、フォンさんとかの方が……」

「完成物を作るのなら、俺は要らない。写真で良い。彫刻するので黙っていてください。うるさいです。」

「え……?え、あれ?あの……ちょっと……」


 アリスは職人の今村によってどこかへ連れ去られた。それを感知していた理性の今村は溜息をつく。


「…………アポーツ。」


 その一言でどこかに行こうとしていた職人とアリスがこの場に戻り、それと同時に理性の今村は職人へ強烈な蹴りを捻じ込む。


 職人はアリスを手放して氷山へ突っ込み、氷の下敷きになった。


「……何をやってるんですか。まったく……殺しますよ?」


 そう告げて理性の今村は再び本を出して椅子に戻る。それを呆然と見ていたアリスは我に返ると蹴り飛ばされた今村の方へと駆け寄って心配する。


「だ、大丈夫?ひとくん!?」


 その声に反応したのかどうかは分からないが、降り注いでいた氷がいきなり天使を模した像に変わる。


「ふーむ……いかんな。久し振りにいい題材を見つけてテンションが上がり過ぎたか……失敬失敬。すまんな理性の!」

「……彫像を作るのは良いですが、深層にいきなり突っ込まれるとこの方々死にますので注意してください。」

「スマンスマン!」


 強烈な攻撃を受けているにもかかわらず、快活に笑う職人を見て女神たちは呆然とした。


「この中でも、ひとくんはひとくんってことか……流石……」

「まぁ、その辺はどうでもいいんだが、やっぱり実物を見ると違うなぁ……としみじみと思った。ので、ちょいと付き合ってくれ!」

「えっ……あ、うん……」


 付き合ってくれの辺りに嬉しそうに頬を染めるアリスは職人に連れられて少し離れた場所へと移動して行った。

 それを見ていた安善はふと視界にちらつく物を見つけてそれを追いかけて捉えた。


「ちょわっ!……おわ~……これ、ちっちゃいご主人様だ~……えへへへ。持って帰ろ。」

「……それ、自己本位の内の逃避型です。持って帰らないでください……というか、お前いたのな……逃げてるかと思った。」

「……逃げるにも、様子を窺わないと……と思って、近付いたら何か飛んできてそれを避けたら逃げ損なった。助け……」


 安善の立派に成長した胸の谷間に押し込められた今村はクテッとしながら理性の今村に頼んだが、無視された。







「で?お前の理想のハーレムって何?つーか、俺をあのまま消してれば無駄に巨大なハーレムが手に入ったのに。」

「いや、自力でほしいじゃん……」

「まぁ、そういう物なのか?俺、基本的には何にも要らねぇしなぁ……面白いことと、この刀と、ローブとかあればいいと思う。後は俺の術式は知識だし……」

「……そう言うのどうかと思うんだけどなぁ……てか、胸とか、そういうのとか興味ないの?」

「……相手に依るだろそりゃ……」


 その頃、今村とアズマはハーレムがどうのこうのという話で比較的盛り上がっていた。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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