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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
最終章~終わりの幕引き~
634/644

深化

「あ、サラお姉ちゃん。」

「おぉ……あれは、4歳児相当の仁……!」


 扉を開けた向こうには白崎に刺された後、「ヲチ水」の影響で子ども化していた時の今村、こちらのことなど一瞥しかくれずに食事に没頭する今村。そして完全にこちらのことを無視して睡眠を続ける今村とほぼ全裸で強制的に腰巻を巻かれてアイマスクに猿轡を噛ませて椅子に厳重に縛り付けられた今村がいた。


「……正直、俺は自分を見ると吐き気がして嫌なんですが……子どもは庇護・依存心の私、食事をしているのが暴食・食欲の私、寝ているのが怠惰・睡眠欲の私で、縛りつけられているのが色欲・性欲の私です。」


 今村の説明を聞いている半分の面子と、それぞれの性質を現す今村の方へと移動する一行を見つつ今村は溜息をついて本を出す。


「ん?これは?」

「……アカシックレコードの秘蔵本ですよ。見たら発狂するので、こちらには来ないようにしてください。終わったら、少し離れたところから声をかけて頂けば分かります。」


 案内している今村がそう返すと縛られた今村の方に真っ先に行ったマキアが大きな声で今村に声をかける。


「すいませーん!この先生と封印解いてお話したいんですけどー!」

「ダメです。喋ると妊娠しますので。」

「してもいいですからー!ちょっとだけ、……いや先っぽだけ、先っぽだけでいいんです!思い出に……」

「……弾き出しますよ?」

「うー……」


 入室を認めはしたが、そこまでは許さないとばかりに今村はマキアを睨みつけて肩を竦める。


「まぁ、子ども以外の俺とは話も出来ませんしね……ここには来ていないみたいですし……あの方を置いてさっさと次に行きますか……」


 サラを置いて一行は更に深い場所へと潜って行った。







「貴様ら……これで我らに勝てると思っているのか……?」

「思ってるんじゃないんですよ。勝たないといけないんですよ……」


 ところ代わって別の世界。頑丈で、原神たちとも争うことが出来る場所において【始まりの神】は特殊魔導装甲人ゴーレムのルーネ、要塞精霊ミーア、クワトロシスターズのウノ、イスナ、アルバ、サラサに囲まれながら静かに怒気をまき散らしていた。


 その近くでは【完成された美】がトリックスター シャルロッテ、そして今村側の女神たちの加護によって原神に劣らない陰の魅力を放つ美女に成長した【血染め黒兎】ハニバニ、更に負の原神、瀬目野が対峙している。


 また、その他にも【勇敢なる者】は同じく成長した【消血妖鬼】桜花、そして

また同じように滅世の美女に成長している【破壊魔導姫】魔女マホ、また今村の悪友であるミカドと負の原神、神谷が対峙している。


 そして、残る敵性原神【芽生えし者】はワンマンブラザーズのジョージ、ナンシー、マイケル、そしてバーバラ。また軍神であるシャルデ・アテル・ルウィンス、愛称シャルルに、負の原神カトラス。最後に加護でもほとんど成長しなかった【狂危きょうき凶瀾(きょうらん)恐厭姫(きょうえんき)】のアルマが攻撃に出ていた。


(……何か、真面目に戦ってるんだが……サキには浮気と誤解されそう。大体仁のやつは何を考えてこいつらを……)


 唯一の既婚者で、この場において数少ない男性のミカドは真剣な激戦と舌戦の中でそんなことを考えながら全力を尽くしていた。










「……あ、終わった。」


 その頃の今村は、迷宮をクリアし、のんびりしていた。その近くではアズマが予想以上のスピードに対策を次々と足しつつその言葉に動きを止める。


(まさか、もう読み終わったとか言わないよね!?)


 そんな心配は要らなかったようだ。まだ本は半分以上残っている。だが、今村は微妙な顔をして溜息をつき、頭を掻きながら本を一度閉じた。


「え、どうしたの?飽きた……?」

「そりゃないな。……まぁ、飽きたとすれば生きることに対してだが……ふむ……どうしたもんかな……やっぱ死んだ方が良いよな俺。」


(やっば。何?何があったのこの人?)


 アズマがそう思いながら今村に何があったのか尋ねると今村は一度言うことを躊躇ってから観念したかのように告げた。


「……俺さぁ、取り敢えずこの世界が繰り返されるリセットの前までの人生を見終えたんだが……あ、それ以前は知的生命体じゃなかったから再生されなかったんだけどね?はぁ……」

「え、もう前世全部見たの……?」

「おぉ。割と短命だったからな……4つ前の世界の400年近く生きる大妖狐以外は割と短命だった……」


 それで落ち込んでいるのかと思ったが、今村は違った。


「……6個前は……まぁ、まだいいよ。何となく……嫌って言うか変な予感はするが……で、問題は5個前の世界なんだが……あれは、予感と言うか……どう見ても何か……祓っぽいのが、いた……」

「え、あ……そう……」


 アズマは非常に何とも言えない顔になった。


 彼は祓のことが異性として好きで今回の一件も、自分の親が自殺することが嫌ということ以外にも現時点においてその好きな人を泣かせたくないという思いがあったのだが、その親と好きな人がそんな運命的な出会いをしていると聞くのは何かアレだったのだ。


 だが、今村はアズマのことを見ていないので続ける。


「おぉ……何か、祓と白崎を足して2で割った感じの……んで、問題はそれだけじゃないんだよな……何か、マキアとクロノとヴァルゴを足して3で割ったやつみたいなのと、アリスとサラ……いや、問題はそこじゃないか。」


 今村は疲れたかのように溜息をついた。


「……何で、毎回毎回ハーレム作ってんの俺!?死ねよ!いや、死ぬけど!つーかその時点では死んだけど!」

「うわぁ……肉欲に爛れてたんだ……」


 アズマは引いた。だが、それに対して今村はキリっとした顔で答える。


「いや、全部ちゃんと童貞。理由は色々あるけど。5個前は俺が組織のトップで、後継者を指名したのに子どもたちで派閥が出来ないように。4つ前は普通に俺が狐だったから。3つ前はそういうことする前に廻夜……あぁ、【全】に裏切られて刺殺された。前世は……色々あってそういうことしたら大変なことになるからしてなかったら死んだ。」

「それはそれで……」


 どっちにしろ引いた。その間にも今村は自分のことを性欲の権化、気持ち悪いから死ね……などと責め続ける。


「あー……死ぬのは、まぁいいけど……その本はもう飽きたの?」

「いや、まだ。……死ぬのはアレ読んでからにするか……うわー気持ち悪い。何てキモいんだ俺は……」


 自己嫌悪を深める今村にアズマは尋ねる。


「僕さぁ、ハーレム作った「よし、案内しろ。どんなのを囲んでるんだ?面白そうじゃねぇか……安心しろ。姿は完全に消して、誰にも見えないように行動してやる。こんな恥が親って知られたくないだろうし、挨拶してすぐ消えられると結納前に葬式とかなるのは困るだろうからな。さぁハリーハリー!見せないと邪魔するぞ!具体的には増やす!」……何で?」


 今村自身の時と、自分に対するハーレム結成の反応の違いにアズマは納得いかなかったが、一先ず消滅などから視線を逸らすためにしばらくその話題を続けることにした。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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