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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
終章~彼にとってのハッピーエンド~
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終話.彼にとってのハッピーエンド

「お、起きた……うん。予定の日的にはばっちり。それに、やっぱり俺はそんなに睡眠欲はないな。良い消滅日和だ。」


 封印が解けた今村は軽く伸びをして姿を消す。


「さて、と……まぁ、今回は俺は飲まずに全体のバランスを取りに行くかね……姿も見せない方が良いだろ。」


 そう言いつつ今村は空間を裂き、完全に姿を消して氣も隠し「自聴他黙」をかけて移動を開始する。


「飲める歳になったら、やっぱり成長を思いながらそれを見たいもんだからな。やっぱり若干飲もうかなぁ……?でも、これが終わったら高見東志の新作読むから理性が弱いとテンションのままに何かしかねないし……うん。やっぱり飲むのはダメだ。」


 自分を納得させながら今村は目的地に入る。来たのは美食大世だ。そこでアニスがアズマに愛想を振りまきながら料理を出し、初対面のアズマのことを今村と認識しながら和解している。


「……ん。何か良く分からんが……あいつ、前に俺が居なくなったの嫌だったみたいだな……まぁ、アズマがいるし、もう俺は違うから関係ないが……」


 その後も続々と現れる関係者たち。盛り上がる場の中心はアズマで、時折今村が予想していなかった客人が現れ、術の効き目が微妙な者が来て訝しげに思う度にその整合性を今村はつかせる。


 そして場の空気が温まって来たところで今村は頷いた。


「……あー。うん。これぞ、幸福って感じで、楽しそうだね。いかんな。破壊したくなる……だから滅ぼされにゃあならんのだよ……お、また……」


 そう言いつつ前世の息子で現世で娘になってしまった魔神大帝軍の「魔」の自称四天王、マキと出会った年代と年齢と性別などの整合が合わずに混乱が入る前に今村は互いの認識をすり合わせて違和感なく宴会を続けさせる。


 場が修羅場になると、今村は手を打って笑い、逃げるアズマを上空から見えないように追いかけて自らの能力の使い方を頭の中に思い浮かばせる。


「うん。まぁ……大方の能力については大丈夫かな?」

「ちょ、こんなところで、やめろって……!おい、見てないで助けろよ!」

「……ん~……まぁ、もう少し自立してほしいが……」


 後ろでニヤニヤしている今村の旧友たちに助けを求めるアズマを見て今村は若干難色を見せるが、次の瞬間には頷いておく。


「でもまぁ、他者を必要とする思考だから俺みたいにはならんということが窺えるからいいかもね。だからお前は生きられるよ。原神との確執も俺が消滅することでなくなるし。」


 誰にも聞こえていないことは分かりつつも今村はそう言ってアズマの頭を投下させるように撫でる。


 アズマが捕まり、超近距離で美女たちに迫られ、叫ぶのを見ながら今村は目を閉じて穏やかな笑みを浮かべ踵を返す。


「じゃ、元気でな……願わくば、もう俺が二度と復活することがない安定で、適度な刺激ある世界になるように……」


 そして今村はこの場から消えて行った。










「……で、っと。まぁこんだけ頑張ったんだし、死ぬ前には自分が楽しいことやって死ぬべきだよね。うん。」


 再び閉ざされた空間を創り上げて、今村はそう言いながらいそいそと紙袋を開き、簡易術式で生み出した短期だけもつ「雲の欠片」に上体を乗せて本の目次から開く。


「あーざわざわしてきた。いいねいいね。っと、呪具はないんだった。」


 読む前の愉しくなり始めたところで今村は自分の読書スタイルに入るために準備を整える。


「焦らすね~……まぁ、別に消滅するのに時間は自由だからいいけど。」


 飲み物を球体にして顔の近くに浮かし、食べ物も準備した。加えて、伏線を考えるための全巻に、ミスリードを防ぐための辞書までを揃えて今村は仰向けになり、術で本を読み始める。


「あ~いいねぇ。1章から、飛ばしてくるねぇ……テンション晴らしに原神たちを皆殺しにしたくなって来るわ~」


 独り言すら今の自分にとっては楽しい。いつもBGMにしている電子精霊たちもいない無音の空間の中で今村はその本を読みつつ言葉を紡ぐ。


「……何だかんだ、純愛もの好きなんだよね。男女の真剣なこういう話は……どうしようかな。消滅前にこの世界創ろうかなぁ……?いや、ダメか。俺が創ると変なの入れたくなるし。」


 骨の髄まで負の神、王道テンプレは破壊したくなる。狂ってるなぁ……と思いながら今村はその思考にも笑みを漏らしながら読書を続け、ふと時間が気になり時計を見る。


「む。予定の時刻より大分遅れてるなぁ……宴会の時間が開始が19時で俺が出てくるのが5時過ぎだったし、もうすぐ朝ってのも分かる話だが……夜の間に、消える予定だったけど……まぁしょうがない。」


 読書の時間は変にずらせないと力強く頷いて今村はそれをすべて読み終わる。


「ふぅ。満足。……最後まで時間を気にして死ぬ辺りは何かアレだが……概ね満足だわ。」


 そう言って、今読んだ本を既にアズマに所有権を移してある個人図書館に移して、今村は読書のために準備した全ての物を消し、最後まで持っていた「呪刀」と「カースローブ」を空間に浮かせる。


「じゃ、今までお疲れ。もう、楽にするが……まぁ、頑張ってアズマを支えてやってくれ。『解呪』『ドレインキューブ・セオイアル』」


 漆黒の色をした両者の色が白く塗り替えられ、何かが浮き出る。そのナニカを今村は体内に収納した後、その武器をアズマの場所へと飛ばした。


「おーおー……行った傍から使ったか……修羅場抜けるためとはいえあんまり無茶すんなよ?って、爺かよ俺は……まぁ爺だが。」


 面白くないなと自嘲しながら誰も聞いていない空間で今村はこれまで通り一方的な言葉を残す。


「じゃ、この世界はありがとなー。死ぬほど面白いことには出会えなかったけどそれなりに楽しかったよ。結構恨んだり、色々あったが、まぁ感謝するさ。恩は2倍にするから、壊さないように消滅するわ。ま、もう一回の恩返しが訪れないことを祈って、さらば!」


 そう言って、笑いながら今村は消滅して逝った。






 ここまでありがとうございました。「例外者の異常な日常」はここまでです。


 長らくのお付き合い、お疲れ様です。







 ここからは、「例外者」としての最終章に入ります。ある意味で、違う話ですがこれじゃ終われないと言う方はよろしくお願いします。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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