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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
終章~彼にとってのハッピーエンド~
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16.望まない結果

「まずは、雑魚どもには引っ込んでいてもらおうか……『死鬼魔破氣』!」


 開戦と同時に今村はそう言って下級神やその眷属を黙らせにかかる。そんなことは大前提とばかりに今村は目の前の相手を見据えながら笑いつつ、油断なく小さく口遊む。


「……でもって、っと。」


 既にモードに入っている今村だが、わざと隙を見せるようにモードの切り替えのようなモノを行うが、相手の反応はこちらに向いてはいなかった。


「バカな……中級神以下全員を一瞬で……」

「……中級神以下?後、油断してんな!死ね!」


 微妙な行き違いを感じつつ今村は敵の隙を見逃さずに本気の一撃を繰り出し、それと同時にその技を逃れた相手のために連撃を繰り出す。


 果たして、それは全て命中した。完全に想定外の状態に敵、味方問わず違和感を強くしながら戦闘が始まる。


「……オイオイ、処刑見学に来てるつもりか?抵抗するに決まってんだろ。出し惜しみしてっとすぐ死ぬぜ!?【白礼刀法】!【零之型・白髪鬼】!」


 今村の黒髪が白髪に変わり、「呪刀」から色が抜け落ち、ローブも真っ白の和服、所謂死に装束に代わって不敵に笑いつつ「呪刀」を左手に持ち替えた。


 そこで、相手の反応が鈍いのを見て今村は憤慨する。


「だから、何をしてんだって!?やる気ないのか!?あぁん!?自分は死なないとでも思ってんのか!?舐めやがってぇ……!」


 右手に「呪刀」、「カースローブ」、そして黒髪から漂う瘴気のようなモノが集まり、剣を形成する。そして今村は怒鳴りながら剣を横薙ぎに振るった。


「【白礼刀法】、【奥義一之型・閃】!」


 「呪刀」から放たれる光の斬撃、そして新たに形成された剣から放たれた漆黒の奔流に全てが呑み込まれる。

 確かな手ごたえを感じつつ、これで相手が本気を出すか……と意識を切り替えながら今村は連撃の手を止めない。


「【奥義二之型・双牙】!『頭取り』『陰王発剄』、『魔下落崩帝』、『無撃総乱舞』、『ランガッカ・シジュ』、『飛髪操衣・魔我』、『ドレインキューブ・セオイアル』、『死鬼魔破氣』……【白呪怨】!」


 ここまでやって、この世界に予め張ってあった凶悪な罠群に連鎖反応が起きて世界全体に多大なダメージを負わせつつこの世界を覆う結界にも揺らぎが生まれる。


「はーっ……はーっ……流石に、結構減ってくれたら、嬉しいかな……」


 無理矢理息を大きくつかせて自らの体のコントロールをしながら今村は相手の反撃と対応を待つ。勿論、その間にも現在行った総攻撃レベルの技ではないが上級神程度であればそれなりに効くような技を放ち続けるのは止めない。


「……オイ……」


 しかし、待てど暮らせど敵の攻撃は起きなかった。それどころか今村の感知に掛かるモノ自体がいない。

 攻撃を開始した初期はどこから来るのか分からないという感覚でときおり全体への攻撃を放ちながら最初に吹き飛ばした方向へと猛攻を続けた今村だが時が経つにつれて疑念を生じさせる。


「オイ……オイ……」


 少し、攻撃の手を緩めてみた。しかし反応はない。


「……世界の、秩序だろ?……正義の、構築者で、創造神。光の神々……こんな、簡単に……」


 一度、本気の、後先考えない全力の技を繰り出すことにする。大きな隙が生じるそれだが、邪魔は入らなかった。


「【白礼刀法】【奥義終之型・無明】……」


 もはや剣撃とは思えないそれは世界を壊し、全力で貼ったはずの結界すらをも容易に消し去った。そして、ようやく今村は認めることになる。


「……勝った、のか……?しかも、こんなにあっさり……」


 攻撃を止めても目の前には何もない空間、防御したであろう跡は辛うじて存在している空間があるその前で今村は軽く忘我の境地でそう呟く。


「……オイオイ。俺がどれだけ頑張ってここまで来たと……何でだ?」


 まず生じるのは疑念。次いで起きるのは笑いだ。


「クック……無駄だったってことかよ……ここまで、あー……月並みな表現をするなら強くなり過ぎたってことか……そりゃ、そうかもなぁ……笑うしかないか。」


 哄笑を上げる今村。敵対勢力は滅ぼし、親交勢力は術で眠りに就かせた中で、この世界において今村以外に動くモノはいない。

 ここまで来ていたハジメですら、今村は凍りつかせて別の世界に投げ込んでいるのだ。


 しばらく、一人きりの世界で笑い続けた今村は空虚な笑いを収めると今度はそれを一転させて激怒する。


「あー……ハハハ……はぁ……ふざけるなよ……!【破壊者】、【世界を終わりに導く物】、【世界の敵】が勝っていい訳ねぇだろ……!この世界は、まだ終わらせねぇぞ……?世界が、終わりを求めても!俺が、勝って良い訳がない。」


 断言した後、今村は大きく息をつく。そして、あることに気付いて苦笑した。


「あぁ、そうか……原神すら、取るに足らない存在なら、これも最早意味を成さないか……なら、やり直せるな……」


 そう言いつつ可視化するのはここに現れなかった、彼を慕う原神、【可憐なる美】と【無垢なる美】の両者と自分を繋ぐペナルティと言う名の繋がりだ。


「クック……実は、壊せるのに気付いていて壊さなかったのかもなぁ……いや、もう今度こそ、間違えないでやるから問題ないが……」


 その術を握り潰して今村は再び告げる。


「仕切り直しだ、原神ども……最早喜劇としか言いようがないこの戦いで、今度はきちんと間違えずに俺を殺せよ?」


 懐から取り出すのはアズマに本気で、世界が壊れるくらい困った時にだけ使うように無意識中に覚えさせて遺産代わりに渡していた「永久黑之闇蓮華とこしえくろのやみれんげ」、望まない現実をなかったことにする呪具だ。


 それを呼んで起動させる。


「……はぁ。何で俺がねぇ……まぁ、今度は本気でやらないでおくか。折角、生まれたこの世界をまたやり直しさせるのは忍びない。今度こそ滅ぼせよ?俺は油断に油断を重ねて煽りまくってやるから……」


 「永久黑之闇蓮華」を発動させながら今村は自殺行為を開始する。


「む……壊れなかったなぁ……よしよし、これできちんとした遺産が残せるな。あ、でもそう言えば酒を飲もうと思って……もう戦闘始まるなぁ……」


 逆再生していく世界の中で今村は呑気にそう告げる。


「……死亡フラグ、命いっぱい立ててから戦闘に入るか。それくらいしとかないと厳しいでしょ。」


 ハジメがこの世界に戻って来た時点まで戻り、「永久黑之闇蓮華」は役目を終えたとばかりに光を収めて今村の手の中に戻る。


「はぁ……始めようかね。」


 以前とは異なる、全くもってやる気のない声音で今村はそう告げ、戦闘直前の世界が幕を開き直した。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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