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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
終章~彼にとってのハッピーエンド~
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14.吐露

「む、忘れてた。えい。」

「酷くない!?」


 別世界に来た今村は思い出したかのように胸ポケットの連中を投げて、元の世界に送還してから既に治っているのに未だ意識を失った振りをしているアズマを地面に転がす。


「おい、起きろ。」

「てて……あ、あれ?」

「そういうのいいから。」


 状況が分かっていないと言った風な行動を取るアズマに今村は端的にそう告げてテーブル、そして椅子を出して軽い茶会を開き、アズマに座らせる。


「……さて、今回の一件だが……普通に誘拐に監禁、婦女暴行に加えて強制猥褻罪及び、その教唆で……有罪。」

「ちょ、ちょっと待って!?俺、何も……」

「そういうのはいいと、言った。」


 鋭い目で今村はアズマを睨む。それでも尚言い逃れをしようとするアズマに対して今村は「死鬼魔破氣」を威圧に乗せて睨みつける。


「お前、自惚れんなよ?お前がバレないと思って使ってる技はどれも俺がこの世界に持って来たもんだからな?おっと、逃げられると思うな。」

「……チッ。」


 手の打ちようがないことを悟ったアズマは開き直ってその場に態度悪く座り直し、今村が淹れた紅茶に乱雑に手を付ける。


「いっつもあんなに好かれてる時は嫌そうにしてるのに、いざ盗られかねないとなったらそう言う風に出るんだな。」

「……つーかお前、完全に自分のやったこと棚に上げてるよな……流石に何回か死んどくか?」


 開き直ったアズマが気に入らないので今村は一度目の死刑を執行した。アズマが死んだのを自覚するとほぼ同時に今村はその蘇生を行う。


「な、何を……」

「罪は贖わせるからな……まぁ、少年と言えば少年だから更生を主に念頭に置いた判決を下す予定だが……俺の判決だ。あまり甘いものになるとかいう期待はするなよ?……で、まぁ……取り敢えず一番大事なことを訊いておくか。」


 そう言って今村は紅茶を再び飲む。アズマが緊張する中で行われた動作に飲み込むまで喋れないだろうとアズマの警戒が一瞬だけ緩んだ瞬間を見計らって今村は発音する。


「お前は、祓が好きで、誘拐したのか?」

「えっ。あ、うん……」

「……そうか。」


 今村は紅茶を飲みながら頷いた。


「……じゃ、任せた……」

「えっ……そ、それで終わり……?」

「まぁ、まだ早いから……もう少しの間、ダメだけどな……どうだろ。もう、いいのかもしれんな……」


 アズマの驚きに対して今村の方は何やら微妙な返しをして、苦笑した。


「あぁ、それと……まぁ何だ。口に出すのは何かアレだが……俺、そこまであいつらのこと嫌いじゃないぞ?寧ろ多分、好きなんじゃないか?分からんが……」

「えっ?あれで?」

「多分な……もう、本当の感情があるのかどうかも分からんが……あ、一応これ内緒な。調子に乗ってエスカレートするし。」


 容易にエスカレートする母親たちのことが思い起こされてアズマは今村の言葉に頷く。それに対して今村は曖昧に笑った。


「どうなんだろうなぁ……俺の記憶が及ぶ限りじゃ、一緒になってもいいかな的な感覚はあっても、これが好きって感じたことはないし、はっきりとは分からないが……うん。まぁ……多分、な……」

「……何か実の父親のそんな話とか聞かされても微妙なんだけど……どんな顔してそんな話聞いてりゃいいのさ?」

「気にすんな。忘れればいい……それに、どうせ忘れるし。」

「精々忘れられるように頑張るけど……」


 微妙な顔をしてアズマは頷き、今村は完全に油断しているその顔を見て笑いながら質問した。


「あぁ、ところで今回の一件は【全】の封印式に干渉して反逆の手伝いをしつつ兄弟たちに不安の種を押し付け、自分のやりたいことのための時間稼ぎと、もし失敗した時の為の保険を掛けたってことでいいな?」


 急な話題転換について来れずにアズマは硬直する。それを見て今村は笑みを深めて続けた。


「ま、この辺がまだまだだな。でもまぁ……祓に対する思いは何か良く分からんが本物みたいだし。今回は手打ちってことで。」

「……一回死刑執行されたけどね……」

「そりゃしゃあない。無理矢理は嫌だってことは俺がよく知ってるし……ところで何で祓?フォンの息子で、お前くらいのレベルだったらもっと上でも……」


 ついでに気になったことを訊いてみる今村。アズマは凄く微妙な顔をした後、観念したかのように答えた。


「……母さんの息子だからこそ、見てくれはあんまり気にしなくなった……いや俺から見たら祓さん超可愛いけど、魅力量的にね?」


 にやにやしながら今村はアズマの心情を聞きつつ続きを促す。渋々と言った態でアズマは顔を赤くしながら続けた。


「それに、俺が小さい頃から面倒看てくれてたし……あの屋敷でも俺、結構強い方で、周囲から近づきがたいみたいに思われてるし、父さんの愛人候補は大体男っていうのを嫌ってるけど、祓さんだけは気にかけてくれて……」

「あ~俺紅茶に砂糖入れ過ぎた気がする……お前、大丈夫だった?」

「……真面目に聞かないんだったら訊くなよ糞親父!」


 ニヤニヤしながらそんなことを訊いて来る今村にアズマは怒るが、今村は冗談だと言って手をひらひらさせる。


「ま、今度からはちゃんとした手順で、真っ向勝負しろ。それなら俺は何も言わないからな……」

「……真っ向勝負じゃあの人達は絶対拒絶しかしないでしょ……」

「いや?案外、今回の一件で好感度は上がってるかもよ?あの、最悪計画が失敗した時でも俺は頑張ってあなたの味方しましたよ?的な小芝居のお蔭で。そう言えば、あの小芝居って計画が成功してたら【全】から逃げるために緊急的に二人で辺境の世界に逃げ、事故の所為で帰れないっていうオチでいい?因みにあの世界の名前は……」

「そうだよ……はぁ……」


 煮るなり焼くなり好きにしてくれと言わんばかりに脱力するアズマの頭に今村は手を置く。


「まぁ、好きな相手のために裏工作はしていいと思うよ。作為さえ見せずにすべて成し遂げればそれは結ばれる運命で片付けられるんだから。焦るな。勝つために努力はしろ。ただ、倫理に反することはするな。いい?」

「……はーい。……その、ごめんなさい……」

「謝る相手が違うけどな。俺は高々殺されかかったくらいだからいいが……龍一とかフィトに言い寄って四肢捥がれてボコボコにされたりしてるんだぞ?」

「……あの人いっつも眠そうにしてるだけの人じゃないんだ……」


 強いとは知っていたが、そこまで容赦ないとは知らなかったアズマは龍一にはしっかり謝ることを誓った。


「それと、俺をイラッとさせたせいで消滅した奴とかに謝ってくれ。キマイラとか。」

「……あれは、俺あんまり関係ないし……気付いた時には何故かいて、元々何か壊れかかってた……」


 原神の影響を抜け切れていなかったかと黙って思った今村は一先ず聞きたいことと恥ずかしい話は済ませたので帰りの道中はゆっくり帰ることにしてその最中に説教をすることに決め、この世界を後にした。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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