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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第三章~異世界その1~
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11.決戦

 今村は首都近くの森にいる烏の目の情報を見ていて歪んだ笑みを浮かべ、独り言を呟いていた。


「…今回は本気みたいだな。クック…術使ってきてるけど見えてるぜー?…さて、この分じゃこいつらがローゼンリッター本隊ですね。」


 人の群れを森の高い木から見下ろしているとその目の前に矢が接近していた。烏はそのまま撃ち抜かれ、地面に落ちる。


「…良い腕してやがるけどまぁまだ遅いな。」


 その辺にいた普通の烏に心の中で詫びながら式神烏と場所を入れ替えた今村。撃ち手は落ちた烏を拾って何か言っているようだが今村はそこで視覚情報を打ち切った。


「さて…今回で首都まで攻め落とすか。体感的に3ヶ月ちょいもこっちにいたしな…まぁ実際は5日しか経ってないが…それに元の世界だと3ヶ月が3時間って所だから…10分ちょっとか…」


 今までのことを思い出す今村。結構なことをやった割に時間の経過が全然だった。


「…こんだけ時間過ぎた気がするのに帰って新刊の一つもないとか…」


 そして落ち込んだ。本隊と首都を潰せば後は今村とタナトスの合作軍隊でその他の地域は何とかするだろうから潰したらもう帰ることにした。


「…さて、そうと決まれば仕込みから行きますか。…まずは五月蠅そうなのから黙らせてっと…」


 今村は決戦前の準備に取り掛かった。



















「さぁて、全員良いかな?今から最終決戦にかかります。で、俺は本隊率いて潰してくるからお留守番任せた。」

「そんな無責任なことできないです!ルゥリンも行くです!」

「私も行くわよ!」

「俺だってまだ何もしていないしな…」


 今村の言葉に色々な反応が返ってきて今村は苦笑いでそれらの意見を聞く。


「じゃあルゥリン。」

「はいです!まず今の革命軍には今村様がいないと困るです!万一のことがあるといけないです!ルゥリンがいると『ワープホール』で逃げれるですよ!」


 ルゥリンは拳を握りしめて言ってきた。今村はその申し入れを受けた。


「で、次、小野。」

「今村の足手まといかもしれないけど私だって何もせずに帰れないわ!ルゥリンの事も放っておけないしね!」

「…そうか。…じゃあまぁ…危なくなったら何があってもすぐに逃げろ。いいな?何があってもだぞ?」


 今村が念を押してそして小野が頷いたことで今村は小野の申し出も受けた。そして次、美川。


「お前は何があっても小野を守るように。以上。…と言うことで蜂須賀はここに残れ。万が一にも勝てなかった場合は戻って来るから。オーケー?」

「あぁ…頑張れよ。」


 どちらかと言えば美川に向けて蜂須賀はそう言うと今村の方も見た。


「…頼んだぜ。」

「まぁ頼まれた。」


 アイコンタクトを取る二人。そんな二人を前にルゥリンが小首を傾げる。


「そう言えば天明さんはどうしたですか?」

「…あぁ、祓なら蜂須賀と一緒に城でお留守番。流石に蜂須賀に全部任せるわけにはいかんからローシも置いて行く。」

「…ローシ師匠戦争には加担しないって…」


 美川が呟くと今村は首を傾げた。


「ん?涙流して喜んでたけど。」


 誰も何も言えないかった。今村はそんな微妙な雰囲気になった場の雰囲気を変えようと手を打つ。


「さて、そろそろ敵もこの城のテリトリーに入って来るだろうし、全軍に出陣前の号令的なものをやろうかね!」


 そして今村は全軍が集結した城門前にローブで一っ跳びに駆ける。そして拡声木を口に当てて全軍に語りかけた。


「さて君たち。今回の戦で俺ら異世界から来た者たちは帰ることになっている!」


 辺りがざわめきに満ちる。今村は一呼吸おいてから息を吸い込んだ。


「ここまでは俺がすべてやった!訓練!指揮!建築!内政!軍備!その他にもいろいろした!…そこで君たち。今回は君らの成長を俺に見せてもらおうじゃないか!」


 兵たちのざわめきが不安なものに変わる。今村は軽く笑って言い直した。


「だが安心しろ。すべて俺が手を出さないわけじゃない。危ないと思ったら手を出すし、作戦の最初は俺が決める。…そこからの戦争はお前ら次第だ。作戦は…あの訓練の中で一番鍛えたこと・・・・・・・だ!わかったな!」


「「「「「オォーッ!!!!!」」」」」


 兵士たちの雄叫びが響き渡る。今村は最後に告げた。


「決戦はヴァルトナーレ!地形は覚えてるな!期限は今から3時間後!各々全力を尽くせ!尚必要となりそうなものは今回に限り準備してあるからな!足りなければ自力で調達しろ!以上解散!」


 兵たちは迅速に行動に移った。それを横で見ていたルゥリンが今村に問いかける。


「…こんなのでいいのですか?負けたら死んじゃうですよ?」

「負けないから大丈夫だ。」


 自信ありげに言ってのける今村。ルゥリンはそれが本当かどうかを知るために今村の顔をじっと見る。そんなルゥリンを見て今村は全く別のことを考える。


(保険も打ってあるしな。)


 内心の歪んだ笑みを浮かべそうな心持ちとは全く違う真面目表情を浮かべ、今村はルゥリンを見返した。ルゥリンは慌てて目を逸らす。そんなルゥリンを見て今村は笑って言った。


「まぁ大丈夫さ。」


 その笑みは歪んでいなかった。



















 ヴァルトナーレ。今回今村が選んだ地域は今村達が今いる城から森を抜けてしばらくしたところにある丘陵地だ。険しい山はないもののそれなりの高さがある丘に囲まれたその場所で今村達はローゼンリッターたちと対峙した。


「よぉ!ロリコン!」

「…何を言っているのだ醜き者は…」


 今村は先頭に立ってローゼンリッター全国指令統括本部長エルモソに呼びかけた。どうやら悪口を言っているのはニュアンスで伝わったらしい。


「あ!ごめん!学がない奴に言っても分からないか!じゃあ言い換えよう!幼女趣味!ちょっといいか!?」

「悪いが醜き者は言語を解さないとお見受けする。…そんなものに率いられた者どもも哀れなものだ!」


 何か自分に酔っているエルモソに今村はローブから小瓶を取り出して一滴舐めた。その直後今村は絶世の美青年になる。


「何か言った?」

「っグ…」


 流石にこれを醜いと言えるほど彼らはイケメンではない。因みに今村の後ろでは近衛兵たちが見てもいないのにキャーキャー言っている。


「で、何?ナルシスト腐れロリコンの学なしエルモソ君は何しに来たのかな?お使いかな?道間違えてますよ~ここは君たちが好き勝手出来る首都じゃないですよ~」

「…女神様のご神託に従い貴様らを滅ぼしに来たんだよこの逆賊ども!今こそ使命を果たすとき!全軍かかれっ!」


 エルモソの命令でローゼンリッターの軍勢が革命軍に襲い掛かる。今村はその様子を嘲笑いながら後ろを見た。


「はっは!口で勝てなかったから暴力に訴え出て来たぞ!全軍…」


 だがその嘲笑は途中までしか言うことが出来なかった。その代わりに今村の口から出て来たのは黒い血。


「な…」


 空気が凍る中今村の近くにいて反応できたのが一人いた。


「今村ぁっ!」


 小野だ。小野は今村の方に駆け寄ると今村を刺し、すでにその半身と今村の体をを黒い穴の中に隠した少女を睨みつけ、叫んだ。


「何してるのよっ!ルゥリンっ!」


 今村を突如襲ったのは今村の傍にいた美少女。ルゥリンだった。




 

 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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