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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
終章~彼にとってのハッピーエンド~
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12.造反

「おい、負け犬共。アズマ知らね?」


 今村は姿の見えないアズマを探して屋敷の中をうろついていた。その際にキマイラと【全】に出会ったので取り敢えず声をかけてみた。


「……知らん。」

「見て、おりません……」


 非常に屈辱そうな表情を浮かべる両者に向けて役立たずだなぁ……と言って今村はその場から立ち去る。その後ろ姿を見て両者は愉しげに嗤った。





 その日の夜、結局見つからなかったアズマを別に危機感知も作動していないし黙ってどっかで外泊してんのかなと今村が諦めて禁書庫に入った瞬間。今村の家の結界が突如として崩された。


「にゃっ!」

「大変……!」


 屋敷のメイド組と化しているマイアとレイチェルはすぐに結界の間へと直行してそこで縛られているサイフォンを発見する。


「にゃにがあったのにゃ!?」

「マイア……口塞がれてるから先に助けないと……」

「さっさと起きるにゃ!」


 手荒い方法でサイフォンを起こすとサイフォンはすぐに覚醒してマイアに何があったのか告げる。


「にゃに……?あの気持ち悪いのと、新入りが、これをやったのにゃ?」

「……キマイラと、【全】が父さんのペナルティというもので死にながら再生し、無理矢理……壊したみたいです。」

「これは別にみゃーたちでもにゃおせるから別にいいにゃ……でもそこまで頑張って、にゃにがしたかったのにゃ……?」


 既に復旧に取り掛かっているレイチェルのことを見ながら不思議に思うマイアだが、何かを感じ取ってその場から素早く後ろに飛び下がった。


 その数瞬後にマイアが居た場所に何者かの手が現れる。


「チッ!」

「にゃ、にゃんにゃ!?……!気持ち悪いのにゃ!」

「……その呼び方は、流石に酷いと思う……でも、敵なら……いっか……」


 現れたのは異常なまでに筋力を発達させた状態のキマイラだった。彼はマイアを血走った目で見ながら重低音で端的に告げる。


「死ぬ前に、良い目……見させてもらう……」


 咆哮を上げるとキマイラは服を引き裂き、その肉体をマイアに見せつけるように前に出る。


「キモいにゃ!」

「言ってろ……逃がさん……クック……ゲハハハハ……」


 マイアは装置の復旧に勤しんでいるレイチェルのことを少し見てキマイラを倒してから逃げるしか問題解決できないと判断し、敵対の姿勢を取る。


(勝てにゃいけど、時間稼ぎ位にゃらできる相手にゃ……)


「そうだ。抵抗してくれた方が楽しい……ただ、アレ、が俺を消しに来る前に済ませないと……駄目だからなぁ……悪いが、付き合えん。」

「マイア!」


 キマイラが厭らしい笑みを浮かべたとほぼ同時にレイチェルが短く叫び、マイアは後ろからの攻撃から逃れる。


「……サイフォンさん!?」

「【全】の力で、少々心を操らせてもらっているよ……そいつの、母親と同じようにな……」

「アリ、スさん……百合……ねぇ、さん……」

「みゃーたち違うにゃ!」


 虚ろな目で襲い掛かってくるサイフォン相手にマイアは対処に困る。マイアかレイチェルは装置の復旧の為にどちらかは手を放せないのに、敵は2人。


「にゃう……近くの人に手を借りるにゃ……!」


 マイアは苦渋の決断を下して屋敷内、その最も近くにいた人物をこの部屋に招き入れる。


「えっ?な、何……?」

「アリスさん!」

「にゃっ!しみゃったにゃ!」


 偶然にも近くにいたのはアリスだった。サイフォンはアリスの姿を見るなり動きを活発化させて強力な術式の陣を作動させる。


 対するアリスは状況がよく分かっていないまま一先ず敵だと思われるキマイラの方へ臨戦態勢を整える。


「よきかな。我が、我の、前世の、想い人よ……犯す、犯す、泣き叫べ……」

「アリス、さン……禁!」

「きゃっ!な?」


 何故サイフォンから阻害を受けたのか分からないアリスは背後の攻撃意思のない術に絡め取られて動きを止められ、服を引き裂かれる。


「いや!何!?何なの!?」

「好き、デス……子どもの時、助けテくれた、あの時から……」

「知らない!止めて!」

「さて、我はメインディッシュの前に、こちらをいただくか……」

「はにゃせ!」


 両者、わけがわからないまま捕まり、そして貞操の危機に晒される。その中でレイチェルは今村が来るの遅いなと呑気に機械を直していた。


「レイチェル!助けるにゃ!」

「……もうすぐ、来るでしょ……」

「それはどうかな?」

「……どうもこうもないと思う……」


 あくまで冷静なレイチェルを物わかりが悪い生徒のような視線で見つつキマイラは恐怖を煽るために説明しようとサイフォンの動きに待てをかける。


「我らの活動が、ここだけだと思ったか?」

「今村さんなら……まぁ、それでも大丈夫……」

「ふん。根拠のない自信を……奴なら今、高見東志の新作を持って書庫に入ったばかりだぞ?」


 そこで絶望感が場を占めた。


「……出て、来ない……?」

「30分は、出て来ないだろう……そう、その顔が見たかった!さぁ、始めようぞ。肉欲に塗れた絶望の宴を……」


 いやに近い距離で醜悪な笑みと共に告げられた一言、それを契機に動き出すサイフォンとキマイラ。その怒張が顔に近づけられ、思わずそれから目を背けた先に、彼がいた。


「……いや、何か変な信頼されてるところ悪いんだけどさぁ……座敷童が大変大変五月蠅いし流石にアレだから出て来るよ?大体、新刊だけど新作じゃなくて文庫本になっただけだし……」

「なっ!?」

「ひとくん!」

「「今村さん!」」


 やる気なさそうに、指を栞代わりに本に挟めた状態で今村がその場に現れていた。その登場に驚愕の表情を浮かべているキマイラに今村は本を仕舞いながら頭を掻いて溜息交じりに告げる。


「……脳まで筋肉にやられたのかな……まぁいいや。取り敢えず潰れろ。」


 アリスやマイアたちが何もできなかったのが嘘であるかのように一瞬で肉塊と化すキマイラ。術者を失うことでサイフォンも糸が切れた操り人形のようにその場に倒れ伏す。


「母子揃って大変だな。こいつも……まぁいいや。3人掛かりならそいつ治せるだろ?それより何か屋敷にいた奴らが結構拉致されてるから出掛けて来る。」

「こ、怖かった、みゃーたちの配慮は……?」

「……来るならしがみ付け。小さくする。」


 急いで寄ってくるアリスとマイア。レイチェルも近付いたが今村の視線が結界装置に向いていたので渋々諦めて復旧に勤しむ。


「じゃ、行くぞ。取り敢えず拉致と言うか行方不明は白崎に祓、フィト、アズマに……そう言えば龍一と優也の姿も見えんらしいな。危機警報鳴ってないからいいけど。」

「……【全】に操られて誘拐したとか……」

「んー……それはないな。そんな悪意に対する術が掛けられてたら分かるし。自発的に消えて……のこのこ騙されて掘られる寸前と言うならあり得るが。」


 アリスとマイアをミニサイズにして胸ポケットに入れる今村。そして何かを待つようにその場から動かなくなった。


「どうしたの?」

「キバを待ってる。クロノとサラが日馬のとこのガキとタナトスのガキに拉致られたから救出作業を任せないといけないしな。でも行方不明の方を探す時間もないしな~……」

「……私、伝えます……」

「お、じゃあ任せた。」


 今村はレイチェルに伝言を任せてまずは比較的巨大な氣で近くに行けば分かりやすいフィトを探しに出て行った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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