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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
終章~彼にとってのハッピーエンド~
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11.何故ここで?

「……思いの外、早かったな……」


 アズマたちが通っている中学校の卒業式が来た。神時歳では15歳を越したのはアズマと華凜、それに日香理だけだったが、能力的に非常に優秀と判断された子どもたちは全員卒業することにさせられたのだ。


「さて、恒例のアリアの泣かせる歌……」


 卒業式の中で今村は歌のために起立した中でアリアに目配せして子どもたちを泣かせにかかる。


 だが、子どもたちは多少顔を顰めたものの泣くことはなかった。


(お父様……これ以上の出力を出そうとしますと範囲指定を解かないと厳しいです……)


 アリアからのテレパスに今村は頷いてアリアの能力を使うのを止めた。そして子どもたちの方を見る。


(成長したな。)


 少し前まで1mもなかった子どもたち。彼ら、彼女たちは今となれば今村と変わらない程の身長、龍一などは今村の身長を越している程大きくなった。


(……優也は、まぁ……)


 一部、まだ子ども服の大きめのサイズで事足りる少年もいるが、それでも大きくなった。そんなことを思っていると歌も終わり、閉式の辞を以て子どもたちの退場になる。


 拍手を以て見送った後、今村たちは同窓会などの話を受けてから子どもたちの教室に移動する。


 女性の保護者陣たちの魅了の力が強すぎるため、今回も特例措置で全員隔離されたかなり強力な子どもたちと同じクラスでの卒業だ。


 恒例となる3分間のスピーチではA組のアズマと華凜から話し、二人とも進学して将来は「レジェンドクエスターズ」に独力で就職できるようになること。

 B組の龍一と優也は何か腐った連中が怪しい目線を向ける中で進学、それにこれまでの謝辞を。

 C組の日香理がかなり具体的な将来の夢を語り終えたところで最後のザギニにバトンが渡る。その際に今村はマキアを睨んで何もしていないかどうか確認しておいた。


「信用ないですね……」

「当たり前だろ。」


 今村とマキアが小声でそう言い合っているとザギニはにっこり笑ってきっぱりと断言した。


「パパを独占したい。結婚して、他の全員を排除する。勿論、ママも。それが私の目標です。」


 沈黙が舞い降りる。そんな中でザギニは笑顔のまま続けた。


「ねぇパパ。私たちに黙ってること、ない?」

「……まぁ、今は質問に答えよう。いっぱいあるがそれが何か?」

「血縁関係、この前、調べたんだ……」

「……で?」


 言葉の意味を理解した女性陣たちの臨戦態勢を制して今村はザギニに尋ねる。


「繋がってないよね?ただ、事象として、ママたちにパパの能力と可能性を付与しただけで……ザギニ達とパパって、血が繋がってない。」


 いきなりのザギニの発言に子どもたちの視線が今村に集まる。それに対して今村はこともなさげに頷いた。


「血の定義にも依るんだが……まぁ、この世界においての定義なら、確かにそうだな。」

「そ、そんな……」

「ち、父上……?」


 驚く優也に龍一。薄々察していたという感じのアズマ。俯いて表情の視えない華凜と日香理。何でこんな場面で言うんかねと思いつつ周囲の時を止めている今村。妙な均衡で沈黙が再び落ちかけたその時、無駄に綺麗な声が響いた。


「キタァアァァアアァァアァッ!華凜、逆転大勝利!これで何でもできる!世間の目も怖くない!何て言ったって、養子みたいなものだから!」


 拳を突き上げて叫んだ華凜に周囲がギョッとした目を向けるが、それとほぼ同時に陰鬱な氣が漂い始めて戦闘態勢に入って全員がそちらを見る。


 発生源は、日香理だった。


「何で……何でその事実をもっと早く……せめて、半年前とは言いませんが、3か月前に……もう、ダメ……はぁ。」


 今村たちは見なかったことにしてザギニに視線を戻す。混乱していたり落ち込んでいたりした息子たちは自分たちより変な姉を見て落ち着きを取り戻して勝手に解決して成り行きを見守り始めた。


「……華凜姉ぇが諦めてなかったとは……誤算……!くっ……夢は、破れた……」

「何がしたかったんだよ……」

「夢を……叶えたかった……」

「今際のヒロイン感出して誤魔化せるもんじゃねぇぞ……何で言わなかったのかって言われたら誰も訊かなかったし、俺の基準に則するなら血は繋がってると判断するから。それでも一応言おうかと思ってたが、それは全員が15越して成人迎えてからだな。」


 他に何か質問ある?的な視線を子どもたちに向ける今村。それに対してアズマが手を挙げる。


「はーい。百合姉ぇって、俺らと一緒なの?」

「こいつ?俺の能力に対して副産物的に生まれたからお前らとは違うな。ほぼ俺みたいなもんだが、月美の影響が入ってる感じ。」

「俺らは?」

「お前らはお前らの母親に俺の要素がちょっと入ってる感じ。……つーかその辺は帰ってからにしようか。時を元に戻すから全員前を向け。」


 今村の発言に応じて子どもたちは前を向き、時は正常に流れ出す。ザギニは先ほどの発言を冗談だとして、適当なことを言ってこの場を終えた。











 子どもたちの学ランや制服のボタンを全てむしり盗られ、布地まで引き千切られて帰って来た後、今村は百合やサイフォンなど子どもたちを集めた。


「はい、質問があるなら言え。」

「結婚してくれる?」

「俺の基準じゃ血は繋がってるっつったろうが。だから無理。次。」


 ザギニはその場に打ちひしがれた。


「……父上は、私どものことをどう思われてますか?」

「子ども。次。」

「どんな態度で……」

「変わらん。次。」


 龍一も何かもういいやと思ったらしく黙った。


「じゃあ、母さんたちとの初夜って……」

「ない。一切ない。つーか、大体からしてそれはしてないって話だろ?俺の能力で生殖細胞を外部から受精させたって話にしてるはずだが?」

「恥ずかしがってなかったことにしてるけど本当はしたって言ってる。」

「……シメるか。」


 アズマは本当に性欲ないんだ……と今村に変な感心をした。


「あのー……私、先輩とのお付き合いってなかったことに……」

「いや、知らねぇけど?好きにすればいいじゃん……あ、でも次はなるべく強い奴にしてな?」

「……はぁ。」


 日香理はどこか別の場所を仰いだ。


「お父様は、お父様だもんね。これまで通りで、いいんだよね?」

「やっとまともな……その通り。何も気にすんな。でもまぁ、今回の一件で全員15過ぎたみたいだから大人扱いするけど。」


 優也はそれならいいと頷いてソファに座り直す。今村は用もないが、百合の隣に座らせたかったので呼んでみた頬を緩ませるサイフォンと冷徹な表情で頭上に幸せオーラを漂わせている華凜を見て手を打った。


「何もないなら終わり。百合はサイフォンと一緒にここの片付けしておいてくれるか?」

「私一人で十分なので、サイフォンくんは……」

「い、いえ!手伝いまっす!」


 何もないようだったのでこの場を解散にして今村は自室に戻る。そして外部の全てを遮断した後に歪んだ笑みを浮かべた。


「また、早まったなぁ……まぁ、早まったら早まった分だけ仕事も早めるんだが……やっぱり強くなり過ぎて世界がもたなくなって来てるのかね?なら、やたらと優しい世界さんにありがとうって話だが……」


 そんなくだらないことを独りごちながら、今村は更なる準備の前に眠ることにしたのだった。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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