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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
終章~彼にとってのハッピーエンド~
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7.誘因者

「きゃぁあぁぁっ!ひ、ひとく……それ……」

「……む、美しいな貴様……我の伴侶としてやろう……」


 【全】を自宅に連れて帰ると当然のことながらアリスや前世のことを知る面々がパニックになった。それを冷静に見つつ一々説明をするのは面倒なので今村は混乱を招きそうな面々を連れて来させて告げた。


「隷属化した。【全】くんだ。自己紹介しろ。」

「…………」

「あ゛?反抗的だな……」


 沈黙を保つ【全】に今村は「死鬼魔破氣」で威圧して無理やり話させる。すると彼は苦々しい表情で口を開いた。


「……何も、分からない……が、【全】と言うらしい。取り敢えず、この方の奴隷として目を覚ました……」

「……あぁ、そう言えばそうだった。」


 この様な美女たちの前で屈辱的な仕打ちを受けたという顔で【全】は全員にそう告げる。そう言われると恐々と女性陣たちは臨戦態勢を解いて行く。


「だ、大丈夫なの……?」

「……それほどまでに警戒されるようなことをしたのか我は……」

「あぁ、強姦未遂とかストーカー規制法違反とか動物愛護法違反とか無差別大量殺人未遂とか環境破壊とかそんな感じで色々。」


 そんなレベルの話ではないのだが、今村はそう告げておく。そうしていると何やら集まっていることに気付いたフォンがこの場にやって来て【全】を見るなり怒気を噴出させる。


廻夜めぐるや……よくも、おめおめとぉ……!」


 怒気とともに噴出される神氣により世界が震え、凹んでいた【全】も臨戦態勢に入り、今村の方を見る。しかし、それらを今村は手で制した。


「まぁ待て、殴るなら普通にな。わざわざ戦闘態勢に入るんじゃない。」

「仁……あんた、記憶が戻ってるならこいつが黙って殴られるような奴じゃないのは分かってるでしょ……!」

「オラ。」


 怒気を発するフォンの前で無造作に強烈な一撃を【全】の腹部に入れる今村を見てフォンの怒りが止まる。


「……まさか。」

「隷属化した。記憶も無くて哀れな奴に成り下がったが……まぁ、仕方ない。俺に恨まれるようなことした奴が悪い。」


 腹部を貫かれて虚ろな目をしながら神氣を無駄に流す【全】の回復を行ってから今村は先ほど自分が行ったことの記憶も抉り取り、呆然としている全員に告げた。


「サンドバッグにしたいなら置いて行く。しないならちょっとこいつに第3世界を見せて回らせるから。」

「勿論、恨みを晴らさせてもらうに決まってるでしょ……」


 フォンの宣言と共に【全】はサンドバッグにされ、その間に今村は誰にも気付かれないようにこの場を離脱し、カモフラージュの為の別の場所へ行った後学校へと戻って行った。











(……そういや、俺ってやたらと学校に拘るけど何かあるのかね……行くまではやる気あって急になくなる辺り何かありそう……まぁ今更関係ないけど。)


 学校では体育の時間は終わって家庭科の授業に入っていた。微妙に不機嫌な華凜たちのことは放置して今村は縦一列が同じ班の調理実習に入る。


「華凜様、お料理も上手なんですね……!」

「王子は座ってていいですよ!私たちが……」


(……これ、いい魚使ってんなぁ……こんなの割と真面目に料理するしかないだろうに……)


 子どもたちが周囲に持て囃されている中で今村は一人、そう思いつつ星鮃を見てそう考える。


(ムニエルにしたいが……つーか材料がやたらたくさんあるが何を作る気だ?メインがどれか分からんのだが……)


 大量の食材を前にして今村は少し困る。しかし、特に指示はないまま今村たちの班の調理も始まった。


「……あ、そう言えば尾藤君は課題、よくわかってないか。えっとね、先生を納得させる一品を班で作り上げれば終わり。何でも使っていいらしいよ。昼食もこっから作っていいらしいし。」

「……そうなんだ。ありがと。」


(……無駄に予算をかけてるな……いや、もしかしたら自分たちで獲ってるのかもしれないから分からんが……取り敢えずマキアに探らせておくか。)


 そんなことを考えつつ今村は星鮃の内臓を抜いて切り身にし、それに下味をつけてある程度水気を切りフライパンを温めて自作のバターを溶かす。

 そして植物油を足して諄くなりすぎないように油を調節した後、星鮃に更に自作のムニエル用のパウダーを塗して一気に焼き上げた。


「……ふむ。」


 周囲の目などミリ単位で気にせずに焼き上げると今村はそれに少し術を掛けてから裏返して綺麗に焼けるまで待った後、それを取りだし、食べた。


「まぁ、うん。素材がいいからな……」

「って、提出しないの!?先に合格させてもらうべきでしょ!先生もうそこに来てるよ!?」

「……昼食作っていいんじゃねぇの……?」

「尾藤……今は、授業中だ……まぁいいからそれを寄越せ。」


 家庭科の教員、30代間際と言うべき女教師が険しい顔をして今村から星鮃のムニエルを略奪し、それを食べる。今村は別にいいかとオーバーリアクションを取る彼女を置いて他の素材に目をやった。


「嘘……父様って、料理も出来たの……?」

「……これ、俺もやんないといけない流れじゃん……」


(あーそう言えば家で料理作ったことなかったか……誰かが勝手に作るし。誕生日くらいで……まぁいいや。この誘因者、思いの外強いし……)


 ムニエルを焼く際に少し術を掛けて調査した結果、自覚のない少々面倒な相手であることが判明し、今村はこの学校にいる暇はないことを知る。


(にしても、滅茶苦茶なんだよなぁ……父親が実は女で魔族の上、650歳。義理の母親が実は男で獣人族の2歳。兄は姉で妹は弟の上、魚人。ペットの犬の本当の姿は2次元に夢中の98キロで眼鏡かけたおっさん。ベッドの中にはおっさんとおばさんが交互に入り、椅子も本当の姿はドMのイカで、本棚には何入れても翌日にはエロ本に代わるという……)


 誘因者のイカレた日常を見て今村は忍び笑いを漏らす。その上、何が驚きかと言われれば本棚に何を入れても翌日にはエロ本に代わる以外のことに彼は気付いていないと言うことだ。


(小学校の時の親友が担任と婚約をしたことにショックを受け、部屋に監視カメラがあることに気付いて驚いてるが……残念だが、その親友はおめでた婚な上にカメラは残り30台あるからな……つーか大体その家改造ロボだし……)


 ここまで滅茶苦茶なものたちを誘因するのだから、今村も何となく呼ばれたかのような気分で来てしまったのだろう。そんな考えに至ると反抗したくなってきた。


「辞めた。『魔傀儡』。」


 今村は「傀儡」を出すとその目を通して観察するだけにして後はマキアに全てを任せ、学校を辞めて行った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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