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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
終章~彼にとってのハッピーエンド~
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6.起動

「えー……今度は何であいつが……」

「父さんが普通の相手だったら俺らの運動にならないって言って体育の担当者変えたんでしょ……」

「身内ばっかりで面白くない……」

「はい、皆さん整列ッスよー」


 体育の時間になった。そしてそこでキバが教鞭を振るっているのを見て今村のやる気はまた下がる。


(……ここで遊ぶのをメインにしようと思ったが……ここは隠れ蓑にして隠蔽工作の方をメインにして早めようかな……)


 今日は能力が2級以上と判断された者の身体測定と体力測定を2限続けてやるらしい。退屈な時間だと思いつつ高見東志、今村の気に入っている作者の本を頭の中で読みながら列に並ぶ。


 しかし、読書をしようとした頭の中はすぐに成長を逐一念話で伝えてくる子どもたちの念話で五月蠅くなる。


 ―――父様父様!華凜もうちょっとで母様に胸囲勝つよ!―――

 ―――やっと150後半……175は欲しいなぁ……父さんって本体はどれくらいの慎重なの?―――

 ―――む……もう178か……このまま大きくなりすぎるのも困るもんですが……どうしたらいいですかね?―――

 ―――……前の皆どんな生活してたら150㎝とかなるんだろ……ぼくはぼくで頑張ればいいか……目指せ、140㎝……お父様、見ててください!―――

 ―――お父さん……質問なんですけど、何で男子は胸囲を図らないのに女子は測るんですかね……?―――

 ―――……よし、順調に成長中……日香理ちゃんにも、華凜姉ぇにも胸だけは負けないから……お尻も、安産型……勝った―――


 ―――家で聞くから、一気に喋んな。―――


 ザギニの順調なマキア化に一抹の不安を覚えつつ今村はそう返した。測るも何もそう言う風に見えるように外見を変えているので特に何の含みもない身長体重などを測り終えるとさっさとグラウンドへと移動した。


(にしても、眼を使えば一瞬で測定できるだろうに……まぁ機具はあるし自動筆記なんかを使えば大した手間でもないが……)


 そんなことを考えながら何となく固まっている集団を見てやってることはどこでもいつでも変わらないな……と空を見上げて目を止めた。


「うわっ……UFOだ……しかもめっちゃUFOって感じの……あの形何て言うんだったっけな……?まぁどうでもいいけど……」


 誘因者の力なんだろうなぁ……と思いつつどうやら不時着を学校の屋上にしようとしているらしいので一っ跳びして軟体動物のような生物を「レジェンドクエスターズ」のフォンがいる部署に送って地上に戻る。


「……っと、大規模無差別召喚陣……異世界にまた召喚されるっと。」


 召喚陣の源泉を叩き潰して再び空から外部の力を感知して空を見上げ、相手の状態を確認し、友好勢力ではないことを認識すると一先ず排除して「レジェンドクエスターズ」の安善がいる部署に送って再び座る。


 しかし、そろそろ体力検査が始まる頃になっていた。


「……面倒臭ぇ。やっぱ向いてないのかね……」


 急な倦怠感を覚えた今村は傀儡を出して参加をどうするか考えつつ、張り切っている子どもたちの視線を感じる。


(……一応見て傀儡を置いて行くか……まぁ傀儡越しでも見れると言えば見れるんだけどな……バレないとは思うんだが……思いの外俺のことを見てるみたいだし……さっき異世界に召喚されればよかったかね……)


 幸い、能力の高い者順だったので子どもたちの活躍はすぐに見終えることが出来た。それを見届けてグラウンドを囲むネットを支える柱の上に立つとすぐ隣にフォンが現れる。


「……子煩悩ね。その半分でもいいから私たちのことも気にかけてほしいな。ところで異世界の変な星がSOS出してきたからデートがてら行かない?」

「……ちょいと用があるから無理だね。誘因者が来たし……下準備は大事だ。」

「……誘因者が。そう……」


 剣呑な表情になり目の色を変えて学生たちを見降ろすフォン。殺気が入り始めたフォンのことを今村は止めて肩を抱いて別の場所に飛ぶ。


「……何、これ……」

「俺の仕事、今日の分。忙殺されかねないから代わりにやっててくんない?そのお礼にあんまり変なことじゃなけりゃ何でもするからよ。」


 日頃の仕事量と大して変わらないが、それでも初見の者であれば旧神だとしても言葉を失うほどの量の資料を見せられてフォンは固まった。


「ホンット、勝手にやればいいのに全権を俺に押し付けるからねぇ……会議とかで決まった物まで俺の許可を得ないと次に行けないと言うシステムは止めてほしいんだが……」

「……止めさせればいいじゃない……」

「一回そうした。で、何かダメになった。」


 仕事量が減り、自由になった今村が何かしたんだろうな……とフォンは勝手にあたりを付けて頷く。


「……これ、終わらせたらデート連れて行ってくれる?前々世みたいに遊園地がいいな。」

「……お前、怖がってなかっただろ……そう言えば最近俺の考案した遊園地を更に凶悪化したんだったな……そこ行ってみるか。」

「じゃあ頑張るわ。」


 契約成立とばかりに仕事部屋の書類の近くにあった「契制約書」に今の内容を記入してフォンは仕事を開始した。


 その光景を見て今村はその場を後にして魔界へと飛ぶ。


「……さて、誘因者が出て来たってことはあまり時間はないな……残り時間は約1年を切ったって所か。……俺が居なくなった後のガーディアンとしてキバとキマイラだけじゃ微妙だから奴を起こそうか……」


 目指すは最奥の地、過去、自らが相討ちがてら封印した男が氷漬けにされている場所だ。


「……クック。まぁ、第1世界の戦闘型の中級神、しかもそいつが創造した世界の真っただ中。その上封印中に力を溜めまくっているという相手だが……」


 程なくして着いた場所で今村は扉を開ける。一切の動植物のいない場所、魔界を統べる女帝であるマキアも学校におり、ここの様子は知る由もない。


 重厚な扉が自動的に閉まると今村は氷柱に近付いて不敵な笑みと共に告げる。


「よぉ、【全】……起こしに来てやったぜ。」


 強大な力が流れ出るが、扉越しに感知できる実力者はほとんどいない。厄介な相手であるフォンも外部の状態を一切伝えない仕事部屋におり、安善もたった今生まれた仕事に追われているだろう。


 邪魔をする者は誰もいない。


「じゃ、解放っと。」


 氷が弾け、魔力も弾けるように流れ出る。それを今村は見て歪んだ邪悪な笑みを浮かべながら歌うように唱えた。


「で、『呪言発剄』【隷属しろ】……思い出したんだよなぁ……こいつ、前々世のときにも俺のこと殺してくれやがったんだよ……」

「……ぐっ……あ、あがぁぁああぁぁっ!」


 起き抜けに漆黒の雷に撃たれて苦悶の声を上げる【全】。そんな彼に今村は嘲笑の笑みを浮かべながら続ける。


「でも、その辺色々全部面倒だからリセットさせてもらうわ。お前の人格とか要らないし。必要なのは能力だけだ。前世の記憶も前々世の記憶も全部捨てましょうか。」


 かなりの実力者である相手を玩具のように扱いながら今村は全ての記憶を改竄して【全】の首に首輪を巻き付ける。


「じゃ、行こうか。」

「おおせのままに。」


 用は済んだとばかりに今村はその場に合った自らの全ての魔力や器具などを回収して一度屋敷へと戻って行った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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