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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十九章~次世代と共に~
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25.小学校卒業式

「う……また、悲しくもないのに泣かせる……!」

「甘いですね……」


 卒園式同様にアリアを呼んで子どもたちを泣かせる今村だが、今回何と華凜はアリアの歌声に負けずに泣かずに卒業式を終える。大量の泣き顔などを撮った後はホームルームが始まった。


「はい、一人1分間のスピーチをお願いします。今年の最短コースを卒業できた人数の都合上、クラスごとと言う訳には行きませんでしたが、学校での思い出などで構いません。それでは阿久津くんから前に出て……」


 教師の言葉と共に1分間のスピーチが始まる。今村はそれを黒歴史量産会場だななどと変な視点で見ながら眺めるが、今村ということで出席番号順が早いため、子どもたちの出番は割と早く来た。


「はい、今村 アズマです。この学校では皆さんに色々とお世話になりました。とても感謝しています。」


 何か含みを持たせるような言い方に今村とフォンだけが気付いて微妙に笑いを堪える形になるが、アズマの話は続いた。


「……ここで学んだことを活かして私の将来の目標につなげ、一層の精進に努めていきたいと思います。」


(面白くないな……)


 廊下の外では「王子~行かないで~」などと言う声や号泣する声、全然関係ない人々が犇めき合っている。その割に中は大して面白くないのだ。


「……今村華凜です。この学校での思い出は特に「姫ぇっ!」」


 廊下のバリケードと結界が破られて華凜の下に結界を破ったことによるダメージで血塗れになった男が突入してくる。それを見た今村はまず華凜のことを好きだと言う宝岩族の美少年を見てそれが動かないことを確認すると嘆息して一足飛びに移動し、その男を蹴り飛ばした。


「うっせ。どいてろべジ……雑魚。」

「父様ぁ……」


 今村にだけ聞こえる音量で陶然とそう言う華凜。今村はその男を蹴り飛ばすとついでに殺気も飛ばして誰も入って来れないようにすると結界を張り直して席に戻った。


「……失礼しました。乱入によって時間が短くなりましたので簡潔に一言。この学校に入ることで私は少しだけ周囲に目を向けることが出来るようになり、それにより私の目標に一歩近づくことが出来たと思います。以上です。」


 続いてザギニに移動する。


「はい。私はここで多くの体験をすることでまた一歩成長し、パパのお嫁さんに近付くことが出来たと思います。」


 続くザギニの言葉を頭を抱えて聞きながら今村はマキアに告げる。


「……マキア、後でザギニと一緒に説教な。」

「ちょ、今回は何もしてませんよ……せめてお説教じゃなくて拳骨か正座にしてください……それか先生が直々にお説教……」

「それだとお前喜ぶだろ……」

「先生のお説教怖いんですもん……」


 今村の説教は自分でやる物ではなく全ての感覚を遮断し、各場面において真人間とはどうあるべきかとこんこんと頭に叩き込まれるというものだ。流石に子どもには使わないが、マキアにはよく使う。


 そうこうしている内にザギニの発表は終わった。彼女は誇らしげに彼女の母親を見て、マキアは冤罪だと今村に念話で訴えかけるが発表が既に次に移ったのでその声はシャットアウトされた。


「えぇと、今村 日香理です。まずはワン先生。卒業まで私たちの面倒を看てくださりありがとうございました。私の担任の先生であるテイラー先生にもよろしくお伝えしていただけると助かります。」


 続く日香理はまずそう言ってこれまで空気の役だった教師に一礼をすると全体の方を見て続ける。


「そして、私たちが編入して来た時にも温かく迎えてくださったクラスの皆様方も、本当にありがとうございます。おかげで私たちはここまで来ることが出来ました。この学校で私は多くの方々に支えられて……」


(……まじめ過ぎて面白くないなぁ……)


 真面目な話をしている日香理の言葉は面白くないと今村は他の子どもたちの観察を行う。終わった子どもたちは早く終わらないかなと言う雰囲気を醸し出しながら話を聞き、まだ話をしていない子どもたちは今村たちの方を伺いながら緊張しているようだ。


「……そんな成長をすることが出来ました。そしてそのような成長の陰には家族というものの存在が大きく……」


(1分過ぎたような……?あぁ、日香理の空間系の能力があったか……無意識に掛けてるのか……)


 退屈だ。日香理は今村とアリスの方を見て感謝の気持ちを伝えているが今村は長いなぁ……と思いつつ何やら感動しているらしいアリスの様子を窺う。


「……最後になりますが、本当に皆さんありがとうございました。そして、お父様お母様はこれからもよろしくお願いします!」


 深く一礼をして日香理は足早に席に戻って次の優也にバトンを渡す。


「えぇと……」

「せーの!俺らC組のアイドル!」

「「「「「ゆ!」」」」」

「「「「「う!」」」」」

「「「「「ゆ!」」」」」

「「「「「ファイッ!!!」」」」」

「何じゃこりゃ。」


 優也が前に出て何を言うか困っていると即座に後ろの方の子どもが立ち上がり何人かがそれに同調して応援を行う。今村が微妙に笑う中で白崎はドン引きしていた。


「あ、みんな……怒られるよ。静かに……」

「お前ら全員後で職員室な。」

「ワン先生、待っていただきたい!これには深い理由が……」

「……あんたも問題なんだよ……」


 遅れて入って来た教師が優也に相好を崩して彼の視えないところで顔を変えてワン教員に食って掛かる様子を見て苦労してるんだろうな……と若干の憐憫の眼差しをワン先生に向けて今村は優也に視線を戻す。


 優也は最初の言葉だけでなく何を言おうとしていたのか忘れたようだ。


「あ、もう……言いたいこと忘れちゃったじゃん……」

「申し訳ございませぬぅぅうううっ!我ら腹を切って詫びる所存!」


 舞い踊る鮮血。顔を引き攣らせるその子の親。どうしようもないと言う顔の教師。そしてそんな小さなことを気にしない親衛隊たち。腹を斬った少年も嫌に爽やかな笑顔で口を開くのだ。


「だが拗ねた顔もまた好し!」


 そんな彼を止めるのは親衛隊の中でもトップ層。1桁ナンバーを持つ中でも今回で卒業できた強者だ。


「保護者の方々が居るのだ!隊員たちよ!自重せよ!」

「「「「「はっ!」」」」」

「……何だこれ。」

「今更だけど優也の学校生活が気になるわ……話てくれてた分と思ってたより乖離がみられるから……」


 結局、1分の内のほとんどをコントのような時間で使い果たした優也は最後にアイドルのように「みんなーありがとー」と言う言葉で締めて龍一に回す。


「皆さま、ありがとうございました。これからの自分の糧とさせていただきたいと思います。父上、母上、これからもどうかよろしくお願いします。」


 龍一は短くまとめると鋭く一礼をしてすぐに席に戻って行った。それを見届けて今村はこれからのことについて考える。


(……取り敢えず、いろいろと問題はあるだろうが……それなりの生活は俺無しでもできるだろうし、この後の卒業祝賀会を終えたら俺は禁書の解読にしばらく努めるか……没頭すると時の流れも忘れるし、百合に期限を決めて起こしてもらわにゃあな……)


 最後にンーニャ・キルグ・メルディカーダという宝岩族の美少年が前に立ち、華凜に告白し、こっぴどく振られるところまでしっかりと見終えた今村は子どもたちを連れて家へと戻って行った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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