表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十九章~次世代と共に~
606/644

24.子どもの成長

「父さん!」


 今村が自分の屋敷に招いてもいないのに勝手に来ていた面々とるぅね、そして瑠璃と戦ってやや劣勢での時間切れに終わり、自宅に戻って横になっていると学校帰りのアズマが勢いよく扉を開けて今村の方にやって来た。


「……珍しいなお前が一番最初って……で、どうした?」


 今村は横になって読んでいた本を閉じ、起き上がるとアズマの顔を見る。その後ろには子どもたちが殆ど揃っているようだった。


「卒業試験に合格した!」


 全員が居間に揃ったところでアズマが代表するかのようにそう言うと子どもたちは全員通知書を出して今村に見せてくる。今村はそれをざっと斜め読みして天井を仰いだ。


「……入学してまだ1年しか経ってないんだがなぁ……お前ら生き急ぎ過ぎじゃねえか?まだ子どもやってていいんだぞ?」

「まぁ内面は入学当初から大して変わってないけど、外面を取り繕うことを覚えたからね……それに、神時歳もきちんと13歳だよ?」


 卒業要件の一つにある欄を誇らしげに見せるアズマ。華凜とアズマだけが13歳で日香理とザギニは12歳。そして龍一と優也が11歳になっている。


 外見もそれなりに大人びて来ているようだ。


 アズマはダークグリーンの猫っ毛を抑え気味に跳ねさせた神時歳相応ながら母親に似た恐ろしいまでの美貌を誇る美少年に。

 華凜はほぼ金色に近い長く緩いウェーブのかかったゴールドグリーンの髪を少し前に今村から誕生日プレゼントとしてもらった深淵の布で創られたリボンで頭の上でまとめた、フィトとは似ていないながらも絶世のクールビューティーな美少女に。

 日香理は金髪と黒髪が自然に入り混じった髪をこちらも今村からもらった白のシュシュでルーズサイドテールに留めた、柔らかな印象を与える美少女に。

 ザギニはほぼ黒に近い藍色の直毛をポニーテールのようにまとめて発育の良い体つきになった表情に乏しいながらもそれが可愛らしい美少女に。

 龍一は赤銅色の剛毛を短く刈り、精悍な雰囲気を漂わせる美丈夫に。


 そして優也はあまり成長せずに男の子か女の子か良く分からない状態で、クラスメイト達などの勧めにより長髪のまま灰色の髪を伸ばしているので7対3で女性が勝っている様な中性的な顔立ちの美少年になった。


 そんな彼ら、彼女たちをざっと見て今村は少し思案気に顎に手を当てて首を傾げた。


(ふむ……まぁ大体終わって来てるし、こいつらの成長も早いな……これなら実質の残りは2年もかからんだろ……それはともかく、先に言っておかないとな。)


「まぁ、お前らがいいならいいだろ。おめでとう。取り敢えず今日はお前らの好きな物で夕食を決めて軽いパーティ的なのを開くが、いいか?」


 今村の言葉にアズマはやれやれと言った顔で答えた。


「そんなの決まってるじゃん。誕生日の店だよ!な?」

「……まぁ、私もそれがいいですが……他に意見があるなら我慢しますよ?」

「ないよ。」


 アズマの言葉に続いて子どもたち全員が誕生日の店と言うので今村は了承して取り敢えず制服姿から着替えるように言い、全員が居なくなってから呟く。


「……何にしようか……取り敢えずパーティの準備だけしておくが……百合。」

「はい、畏まりました。お父様もお料理、頑張ってくださいね?」

「頑張ったら死人が出る。そこそこ真面目に作るよ。」


 自分の作る料理に慣れてはあまり他の食事を選びたくなくなると言うことを考慮して子どもたちが小さい頃から別の誰かの食事を食べさせ、特別な日だけ誕生日の店と称して異世界から取り寄せる振りをして自分の料理を振る舞っていた今村は子どもたちの要請を受けて自世界へと飛んで行った。






「る「あるじ様っ!」」


 呼ぶよりも早くその場に現れて突撃して来た機械魔導人のるぅねの突撃を躱して反撃で地面に軽く埋めた今村はるぅねに経緯を説明した。


「ふーん。じゃあシュティちゃんにお肉もらおっ!」

「いや、あいつ療養のためにここに来てんだから止めてやれよ……」

「…………これ、くらい……?」


 るぅねの発言に苦笑して止めにかかる今村のすぐ近くにシュティが音もなく出現して光を纏う牛肉を差し出してきた。それに気付いた今村が彼女の方を見ると彼女はにたりと笑って口を開く。


あに、様…………やっほ…………………間違えた。……この顔、違う……」

「いや、どうでもいいが……大丈夫か?」

「……うん…………多分……」


 要領を得ないシュティの発言だが、るぅねは特に気にせずにその肉を取ってこの世界にある調理城へと移動した。


「……大丈夫ならいい。さて、1階の鉱物類は何を使うかな……」

「……手伝、う…………?」

「無理すんな。休んどけ。」


 概念の一部とはいえ、文字通り自らの肉の一部を斬り落としたシュティのことを気遣って今村はそう言うが、遠くからるぅねの声が響いてくる。


「シュティちゃーん!お城の3階から香辛料のfgqって書いてある樽の中にある液体持って来て~!」

「……あのタコ……シメるか……?」

「……いいよ、兄様………………ありがと……」


 今村の気遣いなどを台無しにするるぅねの言葉に軽くイラッと来た今村だが、シュティは気にせずに空を駆けて3階へと飛んで行った。その様子を見て今村は頷く。


「あいつも、ほぼ治って来てるなぁ……るぅねは頭悪いけど腕はあるから何とでもなるし……もう、ここも……」

「あーるーじーさーまぁ~!るぅね頑張ってるよ!るぅね超頑張ってる!見に来てよー!」


 遠くからるぅねの大声が聞こえてきたので今村は苦笑しながら城の方へと移動して行った。










「うぁ~美味~」

「……是非、この方に料理を教えてほしいのですが……お父様……」

「教える気はないってよ。」


 そして夕食時、大人び始めた容姿だが、子どもの頃と変わりないはしゃぎようで食事を続ける子どもたちと、その母親たちの中で今村は食事を摂る。


「龍一も酒を飲んでみるかの?」

「母上、まだ未成年ですから……」

「固いのぉ……」


 酒の絡む席の中で幸せそうにしている母子たちを何となく眺めつつ今村は子どもたちの成長の早さを感じていた。


「あっ、菫お母様これ美味しいですよ?」

「全部美味しいから食べられてしまう前に食べないと。」


(さて、まぁ出来るだけ負の遺産は残さないようにしないとな……)


 まさに幸せな家庭の図の中で、今村だけはそんなことを考えながら酒を嗜むのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
よろしければお願いします
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ