22.授業参観 後編
上空を旋回していた今村は手っ取り早くサラと白崎の氣を感知してその場付近に降りると運動場へと入って行った。
「……諸行無常。」
入るとサラが保護者達……いや、小学生でも男子たちの視線を全て集めており同じくらいの美貌を誇る白崎は何故か微妙に生暖かい視線と一部の変な視線を集めていた。
「ぬ、やっと来たかの……」
「……ふむ。龍一は紅組で、優也が白組……で、親は子どもと一緒の組に入る……となれば白崎を応援しよう。」
髪の色と一緒で分かりやすいなと思いながら今村は親子レクレーション。現在は飛行禁止・スピード1000分の1型鬼ごっこをしている状態に入った。その中でもサラと白崎は能力が高過ぎるので封印されているようだ。
それはさておき、今村は鬼役をしている白組の方に入り、白崎と優也の隣に立つ。
「……何で私を応援しようと思ったのかは訊かないでおくわ……」
「パパ様頑張りましょう!」
一部を大いに揺らしながら走って逃げるサラの一部を憎々しげに睨む白崎と純粋にゲームを楽しんでいる優也の声を受けて今村は一先ず優也に尋ねた。
「……お前、その着てるのって……」
「似合うからってくれました……どうですかパパ様?」
上目遣いの息子の返す質問に今村はとても表現に困った。似合うと言えば似合うのだが……ブルマなのだ。何故か。短パンでもなく。
「……それ着ててなんとも思わないの?……いや、思わないんだろうな……分かんないもんな……」
「?」
優也の視線に今村は何とも言えない。白崎も今村に微妙な顔をして優也には聞こえないように尋ねる。
「……やっぱり、おかしいわよね……」
「……誰も何も言わない辺り凄いんだが……まぁ……ぶっちぎりで変だな。100年近く前の遺物だし、時代錯誤もいい所という……いやそれ以前の問題だ。」
「あっちの揺れてる物体の所為で有耶無耶になってるけど……」
「……こいつの男根も収納式だからなぁ……まぁその辺は追々考えるとして、今はさっさと捕まえに行こうか。」
構ってもらえなくて悲しそうにしてこちらを見ながら他の保護者達を避けているサラと出来るだけ遠くに逃げている龍一を見て最初に龍一を捕まえることにした。
「……ま、遊びながらだし、手は抜くけどな。ほら捕まえに行くぞ優也。まずは龍一お兄ちゃんからだ。」
「はい!」
今村は歩いて優也の全力の走りと同スピードを出し、頑張って逃げる龍一を追いかけ始める。
「はやっ……!流石父上……!母上方とは格が違う……!」
「ほらほら前向いてなくていいのか?」
「くっ……竜人化!」
「あー!じゃあぼくも機人化!」
全身に竜の氣を纏い、皮膚の一部に鱗が生える龍一に対して体の一部に青白い文字を仄かに光らせ、外部装置を生み出して加速する。
「ははは。」
それを笑いながら歩いて追い掛ける今村。その姿は追いかけっこをする二人に対してあまりにも異様で軽いホラーだ。
「龍神化!」
「機神化!」
「おっと、流石に走るか……」
加速する二人に今村も流石に置いて行かれそうになったので、軽く走り始めると、進路上にサラがいたので取り敢えず捕まえておいた。
「ふふ、捕まったのじゃ。」
「……放せや。」
捕まえるとしな垂れかかって来たので今村はそれにより止まり、周囲から妬みの籠った視線をぶつけられる。
「母上そのまま父上を抑えていてください!」
「……それは無理じゃろ……そんなこと言うと……」
サラは白崎に預けられて今村は龍一を追いかけ直し始める。その途中でふと優也と龍一が全力で走っても壊れないグラウンドの結界を見て感心した。
「……俺に追いかけられるからってペース考えてないからなぁ……そろそろバテ始めて来るかな?」
他の子どもたちのレクレーションとは少し違うが、無邪気に楽しんでいる末っ子二人組を見ながら今村はのんびり追いかけて……上空にどんよりした氣が漂い始めているのを感知した。
「……華凜姉上の……」
「パパ様……行って来てあげて……?」
一時休戦をしたらしい龍一と優也が空を見上げた今村にそう言ってきたので今村は少し首を傾げて悩む。
「……華凜の所にはもう行ったんだが……しかも一番長く……それに魔導学だから俺が居ると教師が……」
今村の言葉を聞いて優也は少し上を見て悲しげな顔をする。
「華凜ねぇ、今日の授業参観一番楽しみにしてたから……ぼくたちは帰っても遊べるからさ、行って来てあげて?」
「……じゃ、仕方ない……帰ってから遊ぶか。」
「はい!」
「うん!」
龍一と優也とは帰って遊ぶことにして今村は華凜の教室へと向かった。
「……あ。」
教室に入るとすぐに目が合う。そして華凜の状態が回復すると周囲が安堵したような雰囲気が漂う。
「……可哀想~だった~」
「と言われてもねぇ……俺は一人しかいないし、増やしたくもないからな……」
「でも、日香理はちゃんと我慢してたわよ?ちゃんとさせなきゃ。」
今村が入るとフィトとアリスが今村を挟んで小声で話を始める。その間に華凜は復活し始めた。
しかし、授業は既に後半に入っており、その後は何事もなく授業は終了した。その後、華凜は不機嫌そうに今村の方にやって来る。
「終わっちゃった!父様~」
華凜はむくれながら今村に抱き着く。それを見て宝岩族の少年がからかい始めた。
「べんきょー出来てもまだお子ちゃまだな!そんなんだといつまで経っても卒業出来ねーぞ?」
「……うっさい……はぁ……」
相手をするのも面倒そうに華凜は振り返りもせずに今村の腹部近くに顔を埋める。宝岩族の少年は父親に止められながらも続けた。
「おじさん……?お……まぁ、おっさん。華凜、もう少し親離れさせないとダメじゃねーの?」
「うっさい……!ホンットに、ウザい……!フォースアウト!」
「へっ……効かねーよ!」
華凜の術を無効化して少年は笑う。少年とその父親以外は既にこの場から退避していた。
「……ふむ。後で壊し方を教えないとな……いや、でも今教えるとこの子に使いかねないから止めとくか……」
「教えて!華凜これの息の根止めたい!」
「それは流石にダメだな。学校に通ってる間はダメ……」
ふと自分の学生時代を思い出すとちょくちょく社会的に殺してる事例が出てきたので何とも言えない気がし始めたが、取り敢えず今村はダメだと言った。
「おっさん華凜を甘やかし過ぎだって。この歳でまだ父親と結婚したいとかおかしいよ?」
「まぁ、それは確かにな。というより、歳とか誰であるとか関係なく俺と結婚したいって言うこと自体おかしいんだが……」
「そこまで言ってないけど……」
やり辛さに少年は何とも言えない顔をする。そんな中で華凜はショックを受けた顔をしていた。
「だ、ダメなの……?華凜、父様と、結婚……」
「んー……まぁ、少なくともどこかしこで公言することじゃないな。」
普通にダメだとは言え、幼い子どもの戯言を真っ向から否定するのも何だと今村は若干弱めて言っておいた。すると華凜は少し、考える素振りを見せて今村から離れる。
「……分かりました。」
「……ありゃ。」
その目は冷徹な物に変わっており、幼さが薄れ、大人びた美貌を伴い始めていた。
「以後、気を付けます。お父様。」
体だけではなく言葉遣いまで改められた華凜を見て今村は失敗したかな……と後悔することになった。




