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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十九章~次世代と共に~
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21.授業参観 前編

「……入学して1ヶ月しか経ってないのにもう授業参観って……」


 今村はローブをスーツ状態にして百合に騒がれながらそう言い、部屋の外に出る。するとそこには仮面を付けた集団が並んでいた。


「……そこまでして来たいのか……いや、フォンとかの母親衆は勿論来たい……というより付いて来て欲しいが……」

「いや、私たちは授業参観する今村さんを見たいので……」

「お前は留守番決定な。」


 何にしても仮面の集団は目立つので母親衆だけ連れて行くことにしてその面子についても今村は少し考える。


「……生半可な術じゃフォンとかになると効かないし……取り敢えず白崎とかはまだいいとして……」

「何かムカつくわね……」


 白崎がムッとするが今村は取り合わずにフィトとフォンを見る。そのあまりの美貌に今村はしばし目を瞑って思案を巡らせてから溜息をついた。


「……これしか、無いか……」

「何よ?何か文句あるの?」

「……まぁ、結構な……でもまぁ仕方ない……取り敢えず集まってる奴らは子どもがいる奴以外どっか行け。」


 浮気の子がいると思われるのは心外とばかりにほぼ全員が素早く消える。そして残った面々の内フィトとフォンを見て再び溜息をついた今村はフォンの頬に手を当てると有無を言わさずにキスをした。


「っっっ!」


 驚きのあまりに目を見開いたまま硬直するフォンから今村は銀糸を口の端に付けたまま離れると次の標的とばかりに何が起きているのかまだ分かっていないまま浮いているフィトの方に近付き、キスをした。


「か、からだぁ……ちかりゃ……」


 後ろでフォンが腰砕けになってその場に崩れ落ちるのとほぼ同時に今村はフィトから唇を離して呟く。


「……避けられると面倒だから黙ってやったが……必要行為だった。さっきのはダウナーキスって「どうでもいいからもう一回。」わ……」


 解説を入れる前にフォンからのキスを受けて黙らされる今村はそれが終わるとそろそろ時間と言われて母親陣を連れて屋敷から出て行った。











「はーい皆さん今日は静かですねー?お父さんお母さんが来て……うぇっ?……来てるから……って、そんなに、緊張しなくても……」


 朗らかにしようとしていた教室が今村一行が来ると教師が驚いて固まり、静まり返った。


「こ、これは会長……」

「し、白崎世界長も……それに、マキア階層長様も……」

「あー……気にすんな。授業参観に来てるだけだ。散れ。後、白崎とサラはグラウンドだぞ?」

「……教室じゃ……」

「親子レクだ。あっちの方に行って来い。」


 保護者の中でもレジェンドクエスターズ内で一流グループ企業の者たちが今村と白崎に挨拶をし、マキアにも礼をするが今村はそれを遮って白崎とサラを別の場所に送り出して一般の保護者が離れた席に座る。


「……お前、こっち側の席に座ってると何かアレだな……」

「きょ~は~寝ないよ~?華凜~頑張って~」


 フリルのふんだんにあしらわれたドレスを着ているフィトに生徒と大して大きさが変わらないな……などと思っているとそろそろ授業の開始を告げる鐘が鳴る。


 まず、A組から入ったので華凜と日香理の授業参観になる。その中で今村は華凜と仲の悪い宝岩族の少年を見て笑みを深めた。


(……綺麗に人型になってるな……やっぱりビンゴか。)


 視界の端でずっとこちらに小さく手を振っている華凜に軽く頷いて前を見るように促すと心配そうに日香理を見ているアリスの方を見て宥めておく。


 そして、授業が始まった。


「え、えぇと……本日の授業は魔導学なんですが……」


 教師は今村の方をちらちら見ながら魔法陣を描いていく。今村が来ており他にも母親たちがいっぱい来ているので張り切っている華凜と日香理は教師が緊張のあまりに震え、字がズレ、陣を描き間違えた瞬間手を上げた。


「「はい!」」

「えっ……な、何ですか……?」

「「属性付与の魔法陣の文字が間違ってます!」」

「あ、あは……ごめんなさいね……?」


 教師に更なるプレッシャーが圧し掛かる。これまで間違えたことのない魔術式でも出てはいけないところが出てしまい、慌てて消して陣が消えて行く。


(あ~……何で来るのよぉ……忙しくて来れないはずって教務主任たちが言ってたのにぃ……魔導学の大家の前で魔導学を教えるって……)


 授業が遅々として進まないので今村は面倒だと言わんばかりに誰にも覚られないように術式を使って教師の腕を操って魔導式をすべて描いた。


「この魔術の効果「「はい!はい!」」……えーと、華凜ちゃん……」


 やっと授業を進められると思った担任が術に関する軽い質問をしようとした瞬間、それを待ち望んでいた華凜と日香理が元気よく手を上げ、華凜を指すと華凜は勢いよく立ち上がった。


「魔術コードDの53番、『劫火』で、属性は炎に弱闇。範囲はこの世界にある3番魔素1に対して76で、高さは22。この空間における起動までの時間は魔素を注いで0.00046秒。えっと、他には……「はい!」」


 華凜がネタ切れだと見た日香理が手を上げて何とも言えないような顔をしている教師の視線を受けると華凜と代わるかのようにして立ち上がった。


「魔力密度は28魔で、予想される温度は約8300度。色は青色と混じった黒色でこれに付与するにあたって最も効果的と予想されるのは都市攻略、殲滅戦においては「も、もういいかな……ありがとうね?」……はい……」


 教師は途中で華凜たちが何を言っているのか分からなくなっていた。困ったような視線が今村を貫き、今村は首を傾げて娘の頑張りに喜んでいるアリスを見てから考える。


(……俺が描いたジャ・ヴァンの術式コードを暗記してんのか……?結構適当に書いたから毎年適当に直してるやつ……)


 この後は講義式で授業が進んで行く。時計を見るとそれなりの時間になっていたので今村は次の教室に行くことにした。



(……内職してやがるなあいつ……)


 B組、アズマとザギニのクラスに行くとアズマが術で認識阻害を駆けてはいるものの堂々と関係ないことをしており、入るなりそれを見つけたフォンがアズマの頭を思いっきり叩いた。


「ったぁ……げ。」


 今村たちが入ってきたことに気付くとアズマはすぐさま真面目に日本語の授業を受け直し始める。そんなアズマの様子を見てザギニも今村たちが入ってきたことに気付くと手を挙げた。


「どうかした?」


 訝しげに教師がザギニにそう尋ねるとザギニはゆっくりと口を開く。


「先生、まず黒板の一番右端から、二つ目の文の格助詞がおかしいです。次に公式の状態では相応しくない表現が含まれています。該当箇所が教科書に……」


(……何を始めてるんだこいつは……)


 日本語の文法を教師に説き始め、また教科書の文の表現が正しくないと文句をつけ始める上、分かり辛い感じは使うべきではないなどと言い始めるザギニを見て今村は半笑いになった。


「……マキア、取り敢えずこのクラスに残ってこの後どうなったか教えろ。そういえばC組って体育だったわ。親子レクレーションとか言ってたはずだから急がないと……」


 そう言って今村は扉から一応出て行くように認識をズラして窓から飛んで上空からC組を探し始めた。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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