18.卒園と入学準備
卒園式。色々と問題があるため、内々に行われることになったそれに参列したのは今村と子どもたちの親、そして屋敷に来ることが認められている者たちの総勢約50人となった。
女神たちの魅力が溢れて無駄に園内が神々しさを放ち、職員一同が3分に1度のペースで気を失う中で卒園文集の紹介などが行われた。
今村も女の子たちの文集には色々と言いたいことはあったが、まだ子どもなのでということで全て流しておき、アズマや優也、そして龍一の文に笑みを湛えて拍手を送る。
(……アズマは若干俺に似てると思ってたが……この時点で誰かのことを好きになると決めてる辺りやっぱり違うな……つーか、既に誰か……まぁ、無粋か。)
特定は無粋として変わりかけていた目を今村は伏せ、式に意識を戻す。現在は壇上で百合が既卒生の言葉として何か投げかけている。
(身内ばっかりだな……)
来賓の市議会議員や市長、県議会議員たちは今村の顔色を窺いながら子どもたちにも媚び諂うだけだった。最後に式の終わりとして歌を歌えば退場を残すだけになる。
「……死よ。」
そんな中で歌と言えば、とばかりに今村はアリアを小声で呼び出した。神秘的な美貌を誇るその美少女が現れても式が止まることもなく曲が流れ始める。
「御前に……」
「この歌、全力で歌って全員感動させて泣かせ。」
「はっ……!」
別段この幼稚園に愛着心など持っていない子どもたちに雰囲気だけでも卒園という感じにするために今村はアリアに短くそう言って自分はどうするか考えた。
(……俺は歌わないで撮影しとくか……)
なぜ泣き始めてしまうのだろうと訝しく思いつつ号泣する一同を見て今村は子どもたちの感動の卒園式のメモリーを撮った。
「うぅ……全然悲しくないのに、涙が出るよぉ……胸がいっぱいだよぉ……」
「辞めれてせーせーしたと思ってたのに……」
「……仁、あんた何したの?後、それ誰?」
「……んー時系列的には多分、血が繋がってない組におけるウチの娘たちの長女かな……アリア、普通に挨拶。あ、今の俺の名字は今村な。」
卒園式後、自宅で宴会のようなモノを開催する今村たちは卒園の余韻のまま泣く子どもたちや大人たちと共に食事を開始していた。
そんな中でフォンなどのアリアの能力にも勝つ力を持つ面々が今村に尋ねてくる。
「はい。えぇと、今村 アリアとなります。能力は歌などで、レジェンドクエスターズでは人事部の相談役で、普段は遊撃をしています。一応、前世に置いてかなり古参の娘です。よろしくお願いします。」
「……待って、もしかして他にも娘がいるの……?」
フォンの言葉にアリアが頷いた。
「えぇ……私の近くに妹が一人と弟が2人。そこからしばらく離れて2人で……現存する弟妹たちは後……ここにいる方々を含めて30名ほどですね。」
「まぁもう大人になったしほとんど連絡取ってないけどな。」
「え、この子ってみゅうちゃんより年上……?」
「みゅうなら……最後の方の子じゃないですか?」
クロノの問いかけにアリアは今村に確認を取る。今村は頷いて答えた。
「前世じゃラストだな。……まぁ俺が親代わりとして育てた面子としては最後かもしれんな。他は保護者としてだし……こいつらに至っては本当に親だし……」
「そこは違うんだ……でもまぁ、親と結婚より面倒を看ててくれた方と結婚の方が通りは良いからいっか。」
この場に参加することになっていた安善がそう言って頷く。だが、アズマたちの方はそうはいかない。
「……父さんの血縁関係ってどうなってんの……?」
「血縁関係は天涯孤独の身になってる。一応、今世に置いては身内はいたがもう知らんな。」
「……じゃあ養子的な……」
一々覚えていないので今村は少し前に第2世界における炎の世界、ヒノヤギハヤで買った機器をカスタマイズしてアカシックレコードにつなげた物をアズマに投げ渡す。
「貴重品だ。壊すなよ。」
「え……っと?あ、これで検索できるんだ……じゃあ父さんの親族……うわ、妹多過ぎないこれ……」
「あ?」
身に覚えのないことを言われたので今村がアズマの方に目を飛ばすと妹の数が二桁に到達していた。
「……え、【無垢なる美】って……え?……え?確か、世界の最高神じゃ……え?父さん……」
「……何だこれ。バグった?」
「だ、だよね……」
アカシックレコードにも記していないはずの関係が何故か書かれていた。というよりまず、普通に妹じゃない。
「呉羽はまぁ今世の妹だから分かるが……やっぱ死んだか。クロノ……あ、そう言えば俺は死んだけど別世界で妹居たな……ソフィは元気かな?」
空耳か、元気のいい返事が返ってきた気がする。何となく恐ろしい雰囲気を漂わせていそうだったが、気にしないことにした。
「ま、何か知らん王子と確か幸せな家庭づくりに勤しんでるだろ……」
「父さんの式神とか僕とか調べてみたんだけど、女性型が多い……やっぱり本当は女好きなの?」
「んーつーか、基本的に昔じゃない限り俺が生み出す奴ってランダムだったり、中性型とかばかりなんだが……勝手に女になってるんだよな……原神の男性陣たちに嫌われたせいだと思うが……」
今村の言葉にまばらに半笑いだったり沈黙だったりが起こる。それが何となく癇に障った。
「……あ゛?」
「すぐ殺気出す……ほら屋敷が崩れるわよ?」
「知るか。作ったのも直すのも俺だ。それより何で笑ったか言ってみろ。」
「しれっと滅亡級のワード言ってるからよ……」
「……あぁ、そういう……」
納得して今村は氣を収める。
「……言ってなかったっけ?」
「……負の神ですから相容れない存在で、特異点の為滅ぼされそうという認識ですよ……何で直接嫌われて……しかも、直接因縁があるみたいな……」
「そう言えば聞き取れた奴らは認識阻害を突破出来てんのか。凄いな。」
そんな相手に対して普通に生きている今村の方がよっぽど……と思う面々に対して今村は聞きとれている子どもたちの方に関心を寄せた。
「この歳で、凄いな。」
「……何か色々言いたいことはあるけど……華凜、頑張るから……」
「あんまり頑張り過ぎても何だけどな……あ、言い忘れてたわ。明日、小学校に編入するから。」
「「「「「「え?」」」」」」
今村の言葉に子どもたち全員が声を揃えて一斉に今村を見た。大人たちは知っていたようで何も言わない。
「まぁ、小学校からはレジェクエの機関でレベルに応じた学校がある。月一通いのお遊び学級から試験のみの最短コースまで、好きなの選んで通いな。あ、一応言っておくとサイフォンもそこに通ったことはあるが……何か感想。」
「……最短コースは地獄だから入らない方がいい。あそこにいるのは神外ばっかりだ……俺でも付いて行くのが精一杯だった……」
思い出して疲れたように料理に手を出すサイフォン。それに対して百合がころころと笑いながら今村の隣の席で口を開いた。
「そうですか?それなりに楽しかったですよ?」
「百合ねぇはそっち系だから……」
アズマたちはサイフォンや周囲の人々の様子を窺う。一先ず彼の母親はやりなさいと言わんばかりの顔をしていた。
「華凜は……父様の所に戻って来たいから最短コース。」
「……む。華凜が最短なのに僕が楽とか格好悪いな……僕も、それにするよ。」
「……高みを目指すために最初から妥協するのは悪手ですしね……」
「……私もパパのために……」
「華凜ちゃんとザギニちゃんが最短なら……」
「わわ、じゃあぼくもそれに……」
流れでどんどん決まって行く子どもたちを見て今村は笑って言った。
「ま、レベルに至ってないと見做されたら勝手に下のランクに落とされるから安心しろ。」




