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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第一章~最初の一年前半戦~
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6.幻夜の館

 美男美女が大勢来て理事長に質問責めにあった翌日、今村が登校すると目の前に矢印が現れて空中に浮くそれについていくと祓がいた。


「まどろっこしくねぇ?」

「……ついて来て」


 今村の台詞に特に反応することもなく祓は今村を先導して歩き出す。今村は別に反応がなくとも何も言わずに大人しくついて行った。すると校内だというのに怪しい洋館が見え始める。


 それが見え始めたのを確認して祓は今村に告げる。


「……基本的にここに私はいるから……学校の時間はあなたもここへ……」

「はー結界つき万年杉建築かな?」


 建物を見て何で出来ているか、そして何があるのかすぐに確認する今村。祓は建物のことを気にしたことはなく、よく知らなかったようだ。


「知らないけど……『幻夜の館』って呼ばれてる……」

「うん。それっぽいね。でも背筋が痒いね。」


 今村の台詞に何を言ってるのかわからないといった態で反応しない祓は無言で『幻夜の館』に入っていく。


「ここで過ごすように言われてるから……」


 祓は今村を一階の一室に連れて行くとそう言った。今村はその部屋を見渡し、祓に言った。


「何にもねぇんだけど……俺はここでお前と何すりゃいいんだ……? え、本当に見てるだけなの? 暇死にするよ?」

「好きにしてて……私は、逃げも隠れもしないから……」

「……よし、なら実験しよう。」


 とりあえず時間があって何かをするのであれば、ということで一番最初に思いついたことが実験だった今村はローブの袖からどう考えても入らないだろうというほどの大きさの物を次々と取り出し始めた。


 それを見て祓は平淡な美声で告げる。


「近くに……私の部屋があるから爆発とかはしないでね……」

「そんな実験するかよ……俺を何だと……ってかあんたここに住んでるのか?」

「……来て。」


 今村の疑問に答えることなく祓は部屋から出ていく。今村も言われた通りについて行った。

 無言で移動する二人。祓は今村が付いて来ているのを確認しつつ一階の二つ離れた部屋まで移動し、中に入る。今村もそれに続いた。


 彼女は殺風景な部屋の中で今村を立って迎え入れた。


「……ここに住んでる。」

「へぇ……何にもないけど?」

「……要らないから。」


 殺風景な部屋の中には家具がベッド以外何一つとして存在せず、あったのは備え付きのキッチンとコンロ、そしてその下の収納場所だけだ。


 今村は全く以て生活感のない部屋をぐるりと見渡して祓に訊いた。


「……仮にここに住んでるとして、お前何食ってんの?」


 今村の問いに対し、祓はキッチンの下にある戸棚を開けた。するとそこから大量の様々な缶詰が出てくる。無言で察せとばかりにこちらを見て来る祓に今村は確認の為に口を開く。


「……もしかしてこれ食ってんのか?」

「…あと栄養が偏らないようにサプリを。」


 祓の食生活を見て今村は溜め息をついて言った。


「……気に入らんな~服は?」


 今村の言葉が予想外で若干驚く祓だったが今村の問いにすぐに答える。


「服は……理事長が毎日違うものって言うから二階の洗濯室で制服を毎回洗濯して干してる。」

「フーン。あるならいいが……とりあえずアレだ。気に入らん。」

「……何が? 私はあなたと仲良くしないといけないからできるだけ言うことは聞く。何が気に入らないのか言って。」


 今村はきっぱり言った。


「生活力のなさ! ……取り敢えず俺が飯を作ろう。お前の味覚が馬鹿になってないか確認!」

「……何も入れない?」


 今村の突然の提案に祓は今村の顔を正面から見て尋ねる。今村は文脈から祓が何を言いたいのかわかっているがわざと違う意味にとる。


「それを飯って言えるのか? 食材位入れさせろ」

「……体液とか入れない?」

「きもい! その発想がきもいっ!」


 今村は歪んだ笑みで祓にそう返すが祓は無表情にこう返してくる。


「……でも私の所にいたシェフは入れてた……」

「……そうか……」


 何とも言えなくなる今村。微妙に暗くなる場。


(そう言えば、前世の美女軍団の奴らにもそう言う奴いっぱいいたな……)


 微妙に前世のことを思い出し切れないが、嫌なことを思い出した今村に祓は説明を付け加える。


「あの時はテレパスで読んだからわかったけど……あなたは読めないから何入れられるかわからない……」


 無表情ながら僅かに心配して揺れる心を感じた今村は茶化すわけにもいかずに安心させるように告げる。


「……少なくとも俺はそんな気持ち悪いことはしないが……気になるなら作るところ見ておけ。」

「……それなら……」

「じゃあ食材買いに行くぞ~あんたは制服から着替えてくれ。」


 今村はそう言ってローブの視覚情報を弄り一般的な服装―――ジーンズにTシャツその上に軽く服を羽織っている状態に見せる。祓もすぐに着替えて降りてきた。


「んじゃ行きましょうか。」


 二人は平日の八時半からその辺をうろつき始めた。





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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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