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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十九章~次世代と共に~
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17.過去と未来

「……考えても思い出せんな。取り敢えず……今連絡を取ってる中で一番昔馴染みの奴と言えば……『精練された美』か……」

「どこか~行くの~?」

「……ちょっと調べものにな。上位の世界だからお前らは来れない。」


 安善と再会を果たした日、子どもたちが帰って来た後もどうにも気になる人物である玻璃のことを思い出して今村は瑠璃の下へと飛んだ。




「あっ!仁!この前の話の続き……」

「お兄様~っ!」

「仁~っ!」

「うごっ……何しやがる……」


 瑠璃の下に飛んだ今村が付いた場所は原神たちの屋敷のようだった。そこで今村は【無垢なる美】ことセイランと【可憐なる美】ことミニアンの抱き着きを受けて行動を停止してしまう。


「……チッ……こいつら相手にはオートモードじゃ足りんのか……流石だな……」

「久し振りだねぇ……会いたかったよ……」

「私もです……」


 「アカシックレコード」の禁書庫レベルでの術式でも抗えない魅力を前に今村は術式の改善に勤しみながら瑠璃の方を見る。そこには【清雅なる美】ことユリンもいるようだったが、今村は無視して瑠璃に尋ねた。


「お前さぁ、俺の知り合いに玻璃っての居たかどうか知ってる?」

「え、知らないけど……いつ頃からの知り合い……?」

「視た感じじゃ大昔なんだが……」

「私と会うより前ですか?」


 この中では3番目に今村と知り合ったが、今村と一緒に外に出たという時点では2番目のセイランが今村にそう尋ねると今村は頷く。


「そいつ曰く、俺の幼少期から知ってるってことなんだが……その頃の知り合いで生き残ってるの俺の知ってる範囲じゃいないし。大罪に因縁があるとかどうとか言ってたが……」

「幼少期、ねぇ……ボクも小さい頃のことはそんなに詳しく覚えてるわけじゃないしなぁ……何か失敗したバレンタインのチョコレートが思い……」

「うっ……頭が……まぁそんな冗談は良いとして……あ、一応言っとくがお前、あの冒涜的なチョコレートモンスターは冗談じゃ済まされないからな?」


 今村と瑠璃の幼馴染トークにセイランとミニアン、そしてユリンが軽い嫉妬を覚えて今村の袖をひいたりして今村は話を元に戻す。


「玻璃……知らんか……」

「そうだね……ただ、何となくボクのこと嫌いそうじゃない?瑠璃に対して玻璃って……何かボクがさっき初めて聞いた感じのイメージは璃って感じだったし……」

「……そうなのか?」


 今村が尋ねると瑠璃はこっくりと頷く。自分は感じ得なかったその感覚を情報の一部として扱うことを決め、今村は頷き諦めた。


「分かんねーしいいや。」

「じゃあ僕らとイチャイチャしようじゃないか。僕とセイランが協力して頑張って作った自信作のソファがあるんだ。座って見てくれないかい?」

「え?いや帰る……」

「まぁそう言わずに座ってみてくださいよ仁さん……」


 4柱掛かりで今村は説得され、別にいいが……と了承して移動し、何故かソファに座らされた今村は深く腰掛けた瞬間、動きたくなくなった。


「……これ……あー……ヤバい。怠惰が……疲れが……眠気が……あぁ……」

「やった!仁をダメにするソファ効果あり!」

「今の内に……」


 なすがままになった今村に世界最高峰の美女たちは交互にいちゃつき始めた。














 その頃子どもたちは白百合幼稚園で成果物を提出し、おそらく近日中には卒園ということになるので卒園のための作文を書くように言われていた。


「……将来の、夢……あるにはあるけど……これは書けないことだしなぁ……」

「え、アズマ兄ぃの将来の夢聞きたいな!」

「華凜の将来の夢はねー父様のお嫁さん!」

「ザギニも……」

「あぅ、私も被りました……」

「俺は何にしようか……全部書いたら収まらないし……」


 作文のお題は将来の夢だ。それぞれ色んなことで悩んだりしていた。


「はぁ……華凜たちは能天気でいいなぁ……それにそういうこと書いてもおませさんで済まされるし……」

「ねーアズマ兄ぃの将来の夢って何~?ぼく聞きたい~!」

「……優也が言ったら僕も言うよ。」

「えー?ママを幸せにするって書くよ~?」

「……いい子ちゃんめ……」


 純粋な眼差しを向けられてアズマは舌打ちしたくなった。華凜とザギニ、そして日香理はそれぞれ被らないように内容を調整して既に書き始めたようだ。


「で、アズマ兄ぃのは~?」

「……将来、好きな人を……幸せにできるような力が……その人をありとあらゆることから守れるような力が欲しい……誰にも言うなよ?何か、恥ずかしいし……」

「え~?立派だと思うけど……」

「立派立派。うんうん。」


 にやにやしながらいつの間にかこちらに来ている華凜に気付いたアズマは顔を真っ赤にして帯電し始めた。


「こ、この……いつから……」

「立派な弟だよ……うんうん。頑張ってね?」


 アズマはキレた。


「今日こそどっちが上か本当に決めてやる!僕が勝ったら今のは絶対内緒で僕のことを兄って認めろよ!?」

「え~?華凜に何のメリットもないからやだ~華凜、何もしなくてもれっきとしたお姉ちゃんだし、弱みは握っておくものだよ?うわっ!危ないな~ベクトルへんこー」

「止めてよー!」


 華凜とアズマの喧嘩が始まり、優也が間に入る声がして周囲も異変に気付き、止めに入る。


「そろそろ止めに入りますかね……」

「いや、まだいっしょ。じゃれ合いみたいなもんッスし。」

「本人たちがじゃれ合いのつもりでも世界の方が持ちませんから……」


 送迎係のキバと芽衣がほのぼのした目線で喧嘩を眺めながら周囲への被害を全て掻き消して結界を張る。


「にしても、のびのび育ってますねー……ご主人様のお子さんにしては周囲への愛情も多いですし……何気に、皆誰かのことを幸せにしようっていう将来映像を描いてませんか?」

「ま~ご主人の奥さんたちの影響じゃないッスか?あっちは愛情過多をそのままご主人だけにぶつけてますし……丁度いい感じになったんじゃないッスかね?因みにフォンの姉貴が調べた結果、愛情無限っていう非常識者が二桁もいたらしいッスよ?」


 すぐ近くで優也がキバたちに止めてくれるように叫んでいるのを聞き流しながら談笑する二人。それは芽衣の方が切ることで止まった。


「……そろそろご主人様がこの世界に戻って来るので話しかけないでくださいね。酷く嫌で、面倒なことをされるので……」

「あんたらも難儀ッスねー……諦めりゃいいのに……」

「それは死と同義ですから。」


 無限じゃなくても十分狂ってる非常識者たちばっかりだなぁ……とキバは思いつつそろそろ武器を取り出そうとし始めた子どもたちの喧嘩を止めに入った。


 因みに、芽衣の予想は外れて今村はこの日帰ってこなかった。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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