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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十九章~次世代と共に~
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15.黙秘すること

「……多いな。『死鬼魔破氣』……結構、立ってる奴ら多いな……装備をあんまり持って来てないから怠い……つーか、まだかね?」

「ぐっ……流石、【冥魔邪妖霊神王】……威圧系最終技を……」


 大勢の敵を相手に今村は子どもたちを守るために基本的に防戦で応じていた。尤も、迫りくる敵は確実に殺しており、確実に数は減らしている。


「父様……」

「ごめんパパ……」


 華凜に続いて目を覚ましたザギニがローブの中から今村を見上げて申し訳なさそうな声を出す。だが、今村はそんなことに構ってられない。


「多い……」

「ひゃはっ!疲れて来たぞ!押せ!押せぇぇっ!」

「くっそ、何気に硬いなタコが……」


 敵は攻めきらずに消耗を狙って交代しながら遠距離で攻撃してくる。それに対して今村はこの場においても存在が別格の男と、車では運転をしていた男の対処で忙しい。


 そんな均衡が1分続いて、工場の扉が開かれた。


「この工場……あの時のじゃないかしら……?」

「……先生の敵は……許さない……!」

「あはは~取り敢えず~死んで~?」


 現れたのは、白崎、祓、そしてフィトだった。それに応じて敵も瞬時に陣形を変えるが、今村はその刹那に満たない隙を貫いた。


「フォン!「はぁい?」お守は任せた……【陰王発剄】……さぁ、今度こそ……始めようか!」

「……私たちだけでも十分よ……?」


 折角登場したのに戦力として数えられていないことに不満気な白崎はそう言いつつ目の前の敵をレーザーで薙ぎ消す。それでも残る敵には祓とフィトが個別に当たり、フォンは欠伸交じりにその中でも強い部類の敵を消していく。


「……やはり、正道を行くべきだったな……来い、【冥魔邪妖霊神王】……」

「いや、もう遅いと思うんだが……『殺神皇帝』……」


 卑怯な手をしてからじゃ遅いんじゃね?と言いつつ今村は「呪刀」を持ってその男に襲い掛かる。男はそれを真正面から受け止めた。


「ちっ……流石、強いねぇ……もっと強くならにゃぁのぉ……」

「貴様は、危険だ……何としてでも、この場で、殺す……」


 しのぎを削る今村と男、それを外から見るフォンが声を掛けた。


「加勢要る~?」


 あらかた片付けて子どもの面倒も白崎やフィト、そして祓に任せたフォンがそう言うと今村は術式を行使しながら身を躱し、男と激闘を繰り広げながら返事をする。


「いや、その辺に……何か、居るはず。それ……任せたぁっ!オラァッ!」

「……居たわね……あ~弱い子ばっかりと思って合わせてたら……しょっく!」

「ちぃっ!」


 姿を消していた運転席の男がフォンに看破されてこの場に現れる。フォンは普通に対処しにかかるが男は笑っていた。


「ケッケッケ……強い……っすねぇ……」

「……どうでもいいから死んで?」

「そう言う訳にも行かないっすよ……」


 小技感覚で一撃消殺の攻撃を繰り広げて来るフォンに全集中力を避けることだけに特化させる男。


「全く……【冥魔邪神】の、あの噂にも頷ける強さだ……あの旦那の【鬼神化】と渡り合ってる……ありゃ、命を削る代わりに【勇敢なる者】様と同等レベルの力を得るって状態なのによぉ……」

「……今の、本当かしら?」


 呟きにも満たない言葉に反応され、いつの間にか自らの最終防御地点を割り込んで迫って来ていたフォンに驚く男。逃れようと術式を展開した時点でその頭はフォンに掴まれ、逃げられなかった。


「くっ……」

「……本当みたいね……一先ず、口封じよ……」


 抵抗する暇も、口を開く間も与えずにフォンは男を消し飛ばし、血塗れになりながらも五分……いや、今村の優勢となっている戦いを眺めて考える。


(……確か、今の仁の最終目標が原神とかいう新制度の【勇敢なる者】?とか言う男に復讐することで……そのために強くなってるのよね……もし、もう自分の方が強いとか知ったら……ふらふらどっか行きそう……黙っておきましょ。)


 フォンは今知った事実を隠蔽することにした。


(正直、あんな危ないトレーニングは止めてほしいけど……まだ見てる範囲内でしてくれてるから対処できる。それが見えてないとなるとどうなるか……)


 見上げると双剣を操る敵に今村は空から斬撃を、地下からは黒髪を振り乱して男を押す。フォンは今村の勝ちが決まったと認識したが一応手助けして勝ったことにした方が後々の言い訳に使えると判断する。


 が、少し遅かった。


「お・し・と……お・るぅっ!」

「ぬぐぁっ!がっ……は……み、見事……だ……」


 ほぼ勝敗が決している今、無駄に攻撃をすれば今村の反感を買うのは免れ得ない。それに、目を覚ました息子が泣きながらお守を任せた祓の胸に顔を埋めており、何となくそちらに行かざるを得ない気分になる。


「……対策、考えておかないとね……気に入らないけど、あの5柱と……」


 そんなことを誰にも聞こえないように呟きながらフォンは拘束術式を完全に解くために子どもたちの方へと移動して行った。





「はぁーっ……はぁーっ……マジ、強……疲れるわぁ……」

「ぐっ……まだ、終わらん……」

「いや、終わって?」


 今村は今しがた倒し終えた敵を見下ろしながらそう言った。もう相手の能力は潰し終え、勝利は確定している。


「時間、切れ……だった、な……ザマァ……」

「フッ……いや……俺は……その前から負けていた……卑怯な手を、使った、その時点で……な……」


 天を仰いでそう言う男だが、正直今村は喋るのも疲れる有様だったので面倒だと斬り捨て、きっちり殺して後も残らないように消滅させた。


「……鬼ね……」

「疲れたから仕方ない。……ありゃ、ガキどもは……」


 外面だけは綺麗に整えた今村がフォンにお守を任せたはずの子どもたちの方を見ると華凜とザギニが今村のすぐ近くで泣きじゃくっていた。


「父様ぁ……」

「パパぁ……」


 今村は近くにいる二人の状態は良好と確認してアズマたちを見る。


「……あいつらも助けに来たのに何であいつらは嫌そうな顔をして俺の方を見てんだ……?」

「……あなたじゃない男を抱きかかえてるからでしょ……いかに子どもでもあの子たちってそういう思考回路してるから……」


 祓が泣いているアズマに胸を貸し、手で背中を撫でつつ顔は今村の方を向いて何かを訴えかけ、フィトの方は龍一の顔だけ受け止めて心底嫌そうな顔をして触れずにいる。


 白崎は優也と日香理を抱きかかえ、隣の二人を見て少々困り顔だ。


「……どんだけ潔癖症……?」

「あんたのせいでしょ……」

「俺、そんなに汚いか?」

「ある意味ね……って、そういう話じゃないわよ。あんたのことだから少しでも別の男と絡んだら消えたりしてたんでしょ?あぁいうのトラウマになるから止めなさいよ……」


 それに返事は返さずに今村は疲れたので事後処理班を呼んで自分たちは家へと戻って行った。


 その後に栗毛色の尖った肉厚の狼の耳をしたこの世の者とは思えない絶世の美少女が舞い降りる。


「……タイミング、ズレた……あぅ~……ご主人様ぁ……あ、アン……」

「あなかはっ……」


 事後処理班が来てその少女を視認した途端、一同は固まる。それを見て少女はまだあどけなさを残した顔を傾げる。


「……あれ?忘れちゃったかな……あ、これ違う。そう言えば私、頑張り過ぎて規格外の美少女に成っちゃったんだ……一旦退避……」


 そして、何事もなかったかのようにその少女は跡形もなく消えて行った。





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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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