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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十九章~次世代と共に~
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14.誘拐

「……まぁいきなりどこか行くってのも急に外に遊びに行きたくなっただけかも知れないし……取り敢えず『クロノスサーチ』……」


 屋敷外に飛んだが、その場からも急速に離れて行く子どもたちの補足をしながら今村は何があったのか屋敷周辺の景色の時を遡って調べてみる。


「……何やってんだこれ……いや、これは後で訊くことにして……これか。」


 戻し過ぎて途中で女神たちの変な会合が見えたがそれはスルーすることにして目的の映像を見る。





『思ったより、ふつーの家だね。』


 今村の自宅を見て入ってきた子どもはそう言いつつアズマに案内される。出迎えに出て来ていた芽衣に幾人かが呆けつつも廊下を進んで行くと悪ノリでもしたのだろうか、メイド服を着た美女たちがずらりと並んで道を作っている。


「……何やってんだこいつら……」


 アズマは苦笑し、華凜は何故か苛立ち、優也は目のやり場に困って龍一は何かを唱えつつ目を伏せる。ザギニが我関せずと歩み続ける中で日香理だけが魅了された子どもたちを正常化し、子どもたちの歩みは続く。


『す、凄い、美人さん、ばっかり……これ、君たちのお父様の、趣味……?』

『……どっちかって言ったら、この人達の趣味かな……』

『生きがいです。』

「……だから何言ってんだこいつら……」


 今村の意味のない突っ込みはさておき、子どもたちはメイド道を歩み続けて一つの部屋に入りぎょっとした。


『……あ、ここお小遣い部屋だった……』

『え、これ……全部大金貨……?い、いくらなの?』

『……さぁ?』


 部屋一面に散らばる金貨、そして山になっている金銀貨を見て幾つか持ち出そうとする子どもがいるが、龍一がそれを咎める。


 そんな光景を見て今村は面倒なので少し早めることにした。


「あ、これだわ。普通に誘拐されてる……俺が結界張って周囲と隔絶した隙の犯行か……中々の手練れと見た……」


 そして発見した子どもたちの自室での出来事。彼らが卒園の為に一所懸命に作り上げた「視えるんです」の装置を自慢げに他の子たちに見せた所で子どもの中の二人が変化し、素早く全員を昏倒させ、誘拐。


「んー……一人はまぁまぁ。もう一人は今の俺と大して変わらんな……」

「あの、先生……」


 今村が誘拐されたあたりの部分を普通に再生して敵の戦力分析を行っていると後ろから声を掛けられた。見なくても分かる玲瓏な美声は祓の物だ。


「どうした?今忙しいんだが……」

「お菓子の準備をしていたのですが……お子様方が、部屋にいなくて……代わりに、こんな紙が……」

「あぁ、多分誘拐されたことが書いてあるんだろ。救出に行って来るわ。」

「お供します。」


 今村は置いて行きたいなと思ったが、救出の人ではあった方がいいと考え直して祓を連れて行くことにする。


「ねぇ~華凜~知らない~?何か~怖~いね~思いをね~してるみたい~」


 祓を連れて行くことを決めて術式を編んでいたところに眠そうに寝起きのフィトが現れた。今村は彼女も連れて行くことに決める。


「ねぇ、あな……」

「誘拐された。着いて来るなら来い。説明も面倒だ。」

「え、あ……そう……」


 白崎も来たがもう面倒なので今村は術式を用いて現在、子どもたちがいる場所の上空へと飛んだ。













「けっけっけ。俺に依頼とは……聖神様も、堕ちたもんですねぇ……【勇敢なる者】様のご命令で?」

「俺の独断だ……必要以上のことを話すな。」

「おぉ怖い。ま、坊ちゃん嬢ちゃん、恨むなよ?」


 白色の地上車の中にアズマたち6人が詰め込まれていた。


 子どもたちは拘束されており、敵は運転席に一人、後部座席に7人。その中でも華凜とアズマの間に座っている男からは別格の雰囲気が漂っていた。

 そんな中で、能力の高いアズマと華凜は意識を取り戻し、気絶したままの振りをして脱出方法を考えているが、目の前の男からは逃れられそうな気がしない。


 重苦しい雰囲気の中、運転席の男がバックミラーを見ながら別格の雰囲気を漂わせている男に声を掛けた。


「ところで、ウチの社員がそっちの嬢ちゃんは味をみてみたいと言ってるんですが、それは正の神として見逃してくれますかい?」

「……未成熟な女子おなごを辱めるのは許さんぞ……?」


 殺気が車内に充満する。だが、運転手の男は飄々と笑って受け流した。


「おぉ怖い。……ですが、あの【冥魔邪神】に対して、制裁の意味を込めるのならば一興ではありませんかね?」

「……今は【冥魔邪妖霊神王】だ。」


 楽しげに話す運転手に対して後部座席で監視をしている男はそう言いつつ座り直す。それを攻め時と見たのか運転手の男は続けた。


「そうそう、その【冥魔邪妖霊神王】。ご依頼ではそいつを苦しめるための依頼をするとありましたが?いいんですか?」

「例え、この手を汚そうとも外道にはならん……」


 華凜は後部座席の男を応援する。だが、運転席の男は笑いながら続けた。


「まぁまぁ、じゃあ我々だけが下衆ってことで良いですから。それに……【勇敢なる者】様が現状を聞けばどうなることか……どちらにせよ、外道ですよ?」

「……脅す気か?」

「滅相もない!ただ、私見を言ったまでです。お気に障ったのなら、申し訳ないですね。」


 後部座席の男は深く息を吐いてか細い声で投げやりに言った。


「……好きにしろ。奴が苦しめば……それでいい。ただ、【勇敢なる者】様に迷惑を掛ければ……殺す。塵一つ残さずにな……」

「そう来なくちゃ!お前ら、例の薬を。」


 華凜は思わず短く息を漏らした。それにより後部座席の男の中でも別格の気配を纏っていた男が華凜が目を覚ましていることに気付く。


「……恨むなら、貴様の親を恨むんだな……」

「やめろっ!」


 脱出の為に集めていた氣を放出して華凜を救おうとするアズマ。しかし、その力は敢え無く消し飛ばされ、逆に気絶させられる。


「ん~?こいつも、アリっちゃあ、アリだよな……」

「おいおい、流石に趣味わりぃぜ……」


 下卑た笑みの前に拘束されて動けないのにもかかわらず何とかもがこうとし始める童女に対して瞠目する男。華凜は涙目で拘束している術を破壊しようとするが意味を成さずに腕を取られて注射器が準備される。


「ひっ……」

「あ~……いいわ。これ、たまんねぇ……あぁ、取り敢えず痛いだろうが……お前の親が悪いってことで。」


 華凜が恐怖のあまりに目を閉じたその時、声が降って来た。


「全くもってそうだね~で、屑は死ね。」


 瞬間、車の天井を破って腕が現れる。そして天井を剥ぎ棄てて今村がその場に落ちて来た。


「父様ぁっ!」

「いや~アジトまで案内してもらおうと思ったら……まさか、正の神の癖にこんなに腐ってるとは……ねぇ?流石に、ねぇ?どうなんだろ?ねぇ?」

「……【冥魔邪妖霊神王】、か……」

「バレないように回収して車で移動……まぁ、それより5分足らずで強姦ですか。そうですか。腐り果ててるよなぁ……」


 今村はそう言いつつ目の前の男を警戒し、華凜の拘束を一先ずある程度まで解放する。完全に解放しないのは今注意をひかれると目の前の男に殺される恐れがあるからだ。


「卑怯になったよなぁ……前の……えっと?腐食の能力の……あの……えー」

「……ゾフィールか。」

「そうそうそれ。最近なりふり構わずだよね。お前ら一応正義の集団なのにさ。人質取ったり……おっと。」


 車が急に転移して今村だけ振り落とそうとしてきたので今村はローブで術式の土台になっている車にアンカーを付け、一緒に飛ぶ。


 そこは、古ぼけた工場だった。


「……ま、最低だなあんたら……始めようか。」


 大勢に囲まれた中で今村は子どもたちをローブで囲いつつ周囲を睥睨し、そう告げた。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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