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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十九章~次世代と共に~
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13.訪問客たち

「さてと、これ提出したら卒園秒読みだねー」

「……次からはきちんとアポイント取ってもらえる?今村さんの子どもじゃなかったら大事件だからね……?」


 アズマが卒園のために普通のニンゲンにも魔術式が見える機器を作ろうとしてその実験の為に連れて来られていた朝倉は疲れたようにそう言った。

 それに対して華凜が悪びれない態度で謝る。


「ごめんね?おばさん。」

「……煽って来ないでくれるかなぁ……?まぁ、何だかんだで久し振りに今村さんとデートの約束取りつけられたからいいけど……」

「ババア、歳、考えろ。」


 アズマの案で創り上げた「視えるんです」という何とも言えない名前の機械が出来上がった後、朝倉と華凜は仲が悪くなっていた。理由は一家団欒の時間を朝倉への謝罪デートに費やされることになったからだ。


「……文字通り永遠の18歳なんだけど。」

「うっさいよ実年齢68歳~アイドルじゃなくてお婆さんでしょ~?」

「そんなこと言ったら今村さんなんて……」

「100億歳とかもう凄くていいよね?68歳はどう?68歳の見た目少女。」


 笑いながら煽って来る華凜に朝倉は怒りを覚えたが、所詮子どもの言うことと自分を落ち着かせて無理矢理深い息を吐く。


「あれ?イライラしてるの?更年期過ぎたのにね~?大変だね~?」

「……フィトさんの娘……か。確かに躾の出来なさそうな……」

「……母様の悪口?殺すよ?」


 先程までの雰囲気から一転して殺気を露わにする華凜。それに対して朝倉は目を細めて対峙する。


「……始まったら、容赦はしないよ?そういう指導を君のお父さんから受けてるから……」

「二人とも!やめて!」


 一触即発の雰囲気になって優也が止めに入ると華凜は肩を竦めて殺気を収めて朝倉を見た。


「……ニンゲンでも、流石父様の知り合い……って感じかなぁ……」

「ちっぽけだからって舐めてると怖い目に遭うよ?……まぁ子ども相手に張り合っても意味ないけど……それで、もういいよね?仕事あるから帰るよ?」

「あ、どうぞーお疲れ様でしたー」


 アズマの返事を聞いて朝倉はこの部屋から出て今村の下に移動することにしたが、その直後に家の呼び鈴が鳴る。


「……?お客さん……?」

「あ、忘れてた……」


 朝倉が首を傾げて立ち止まったところに部屋の中にいた子どもたちが勢いよく出て来て屋敷の隠密部隊と化している芽衣を呼ぶ。


「……アズマ様のご友人と言う方々が……」

「うん。それ通してくれない?」

「主様に確認……」

「あー別にいいぞ。」


 芽衣が宙づり状態で現れ、アズマの言葉に難色を示すと今村が現れて外にいる子どもたちを通すように言った。


「……12名ほどいますし、おそらく騒音を発生させると思うのですが……よろしいのですか?」

「別にいい。」

「畏まりました。」


 芽衣は音もなく消え、朝倉と今村、そしてアズマがこの場に残る。今村は玄関を顎で指してアズマに言った。


「出迎えてやれよ。菓子は後で準備するが……どこで遊ぶ気だ?」

「……部屋の中を一通り案内するから罠の解除して……」

「……一回限りだが通行証を出しておく。で、どこで遊ぶ気だ?んー……まぁ持ち運びできる食べ物にしておくか……あんまり騒ぐなよ?後、うっかりお前の母親とかに出くわさないようにな……」


 アズマは頷いて玄関へと移動を開始した。それに続いて他の子どもたちも部屋から出て来て玄関へと向かう。そんな光景を見て今村は仕事をどうするか考えつつ溜息をついた。


「……このタイミングで、来るなよ……朝倉、目を閉じてろ。……いや、無理か。別室に避難した方がいい。」

「えっ、あっ、はい。」


 言われた通りに別の部屋に駆け込む朝倉。そして今村の下に【精練された美】こと瑠璃と【清雅なる美】ことユリンが現れた。


「愛してるよ。今、大丈夫?」

「お前の頭が大丈夫か?」

「うん。……あれ?最近、この台詞が仁への挨拶って聞いてたんだけど……」

「そんな決まりは初めて聞いた。」


 首を傾げる瑠璃に今村は来て早々疲れたように顔を振るがそれに続いてユリンも少し恥ずかしがりながら挨拶して来た。


「わ、私も愛してます……」

「……今、そんな変な挨拶はないって言ったばかりだよな……」

「まぁ、実際愛してるからいいとして……」

「数重ねると言葉は軽くなっていくぞ……まぁ俺としてはどうでもいいが……次「怒るよ?」……はいはい。」


 次の相手と言う前に瑠璃が真顔で止めて来たので今村は用件に入るように促した。


「そうそう……安善って子、知ってる?」

「知らん。」


 即答した。瑠璃は首を傾げて続ける。


「……狼の基人種ベースで、薄い獣人の……栗毛色の髪をした可愛い子なんだけど……知らない?強い相手なら補足してると思ったんだけど……」

「知らんな。」

「そっか。じゃあいいや……取り敢えず、何か良く分かんないけどかなり強いらしいんだ。ゲネシス・ムンドゥスを目指してるらしいから一応伝えとこうって思って……」

「……今子育て中だからそんな火種に突っ込みには行かんがな……」


 今村はそう言って用件はそれだけかと目で訴える。


「……うー可愛くて強いし、正の神じゃないみたいだから知ってる相手かと……違ったみたいだけど……」

「何だその偏見。俺が全世界ハーレム野郎みたいじゃねぇか……」


(……みたいじゃなくてそのものだと思うんだけど……)


 瑠璃は半笑いで黙り、ユリンも苦笑して黙ったが、今村は何となく察したらしく顔を引き攣らせて言った。


「全くもって、不本意だ……今に見てろ……」

「……変なことはしたらダメだからね……?」

「変なことじゃあないな……少なくとも、俺からすれば……」


 変なスイッチ押してしまった……と面倒臭そうな顔をする瑠璃。ユリンはあまり慣れていないので心配そうに今村の顔を覗き込む。


「変なことは、嫌ですよ……?止めてくださいね……?特に、存在に関わる物とか……記憶に関わる物とかは、特に、止めてくださいね……?いいですか……?」

「あー前向きに検討して善処だけはさせてもらおうか……っっ!てめぇ……」


 近付く顔から目を背けて半笑いで返した言葉にユリンは自らの顔の封印を解いて今村に迫る。

 その滅世の美はどこからどう見ても非の打ち所がないものだったが、目には一切の光がなかった。


「今すぐ、レイプしますよ……?」


 そんな抗いがたい魅力を前にして今村は歯を喰いしばり結界を張るとユリンを睨みつけて発剄した。


「『死鬼魔破氣』……!」


 瞬間、ユリンは少し下がって臨戦態勢を取り、離れていた瑠璃も戦闘態勢に入り、今村を見て驚愕の表情を浮かべる。


「……それは、危ないからしないって……」

「言った覚えがないな。危険性については分かったと答えた覚えはあるが。さてユリン。すぐさまその状態を止めろ。それ以上は戦闘だ……」


 今村の威圧を前にしてユリンは目の色を戻して顔に封印を掛け直し、今村に謝罪する。


「す、すみません……少し、暴走してしまいました……」

「……少し……まぁ、少し……」


 微妙に納得いかない気もしたが、今村を相手にしている者は大体こんな気分になるんだろうと割り切って今村は頷いて自らも発剄を止めた。


「全く……?ガキどもが、急に外に出た……?」


 結界を解除し、今村は壊れていないかと屋敷の中の状態を確認すると、家の中を案内すると言っていたはずの子どもたちが何故か高速で別の場所に移動していることに気付いた。


「……何か問題があったなこりゃ……悪いが話は後でにしてくれ。」


 返事も聞かずに今村は子どもたちがいるであろう場所へと飛んで行った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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