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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十九章~次世代と共に~
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11.入園式

「はぁ……正直、今更幼稚園なんてねぇ……」

「眠い……」


 入園日。アズマは面倒臭そうにしながら2列に並んでいた。そのすぐ後ろのザギニは欠伸をしながら入城し、隣の華凜は保護者席にいる彼女たちの両親たちの姿をずっと見ている。


「百合ねぇが最短記録1週間で終わったって言ってたよね……僕ら3日で終わって出ようか。」

「……父様は華凜が真面目に通うのと、すぐに卒園できる成果を見せるのどっちが喜んでくれるかなぁ……?」


 今村の方から目を離さずに前に向かって歩いている華凜に対して斜め後ろのザギニは眠そうにしながらも答えてくれる。


「パパは多分真面目に通う方を望んでるけど……」

「……あまり、程度の高いところではなさそうです……」


 周囲を見渡しながら溜息をつくザギニに日香理が付け加える。それを龍一と優也は宥めながら移動を終え、席に着いた。


「只今より、神歴57年。白百合幼稚園入園式を挙行いたします……」


 ざわめく中で今村の子どもたちはやる気なさそうに司会の年配の保育士を見て悪寒を覚えた。


「っはぁっ!な、なんてかわいい……」

「!副園長先生を隔離してください!当てられました!」


 にわかに慌ただしくなり始める職員側に対して保護者席から今村が術式を伸ばす。


「……ブラックミスト。」


(……折角の晴れ舞台でもこれだからなぁ……顔が良すぎるのも苦労だねぇ……大変そうだ。)


そんなことを思いながら子どもたちの母親ズのあまりの美貌ゆえに隔離された保護者観覧席から今村は子どもたちを見る。


(華凜は……ちゃんと前見て歩けよ……ザギニはやる気なさすぎ……龍一と優也はまぁいいとして……アズマは園長の心を読んで何を考えてるのやら……)


 他にも今村の家の子どもたちではないが知り合いがいるのを見かけて隔離されてない保護者席での騒動も見下ろす。


「……子どもたちの晴れ舞台なのによぉ……五月蠅いなあいつら……」

「消す?」

「フォンさんは~流石に~やり過ぎ~……植物状態に~しよ~?」


 保護者たちの中でも一番厄介な部類に属している身内をローブで止めて戦う訳にも行かないので仕方なく抱き寄せていると式が再進行し始めた。


「……ズルい。おね……私も、ひとく……ダーリンに抱っこされたい……」

「前に来るな邪魔。華凜は前見ろって……」

「声を届けたらどうかしら?あのこ、今村くん……じゃなくて、あなたの言葉なら聞くから。」


 今村は頷いて椅子になっているマキアから立ち上がり華凜に念話で式に参加するように言って椅子を見下ろした。


「……俺、子どもの入園式で何やってんだろ……」

「立派に子どもたちの入園式を守っておるのじゃ……この変態などからのぉ……何か言いたいことはないのかぉ?」


 サラは椅子になりきっているマキアにそう言うが、椅子は喋らないとばかりにマキアは無視してブリッジの状態で腹部を少し折ったまま黙っている。


「……乱入されても困るし、別に俺は疲れないからいいんだが……もう少しきちんとザギニの制服姿を見てやれよ……」

「家でいっぱい見ました。写真も141枚撮ってます。それにこの体勢でもザギニの姿は遠見で見てます。」

「……何て言うか……あ~……まぁ、いいけど……」


 今村の言葉には反応するらしい椅子に仕方なく腰掛けて豊かな胸部を肘掛代わりにすると今村は溜息をついた。


「……一応、壁があってこの変な状態は見えないが……何かなぁ……ってあ、そんなこと言ってる場合じゃねぇ。新入生代表でアズマが挨拶だ。フォン!白崎!」

「術式で完全網羅し終えてるわよ~」

「カメラの準備もできてるわ。」


 物々しい装備が隔離保護者観覧席に出現し、アズマが壇上へと上がる。それを見て今村は思った。


「……全っ然緊張してないな……寧ろ、ふてぶてしい感じが半端ない……それはともかく、フォンはきちんと挨拶文を考えて、見たか?」

「まぁ、要するによろしくってことよね?園児だから多分大丈夫よ。」


 楽観視するフォンの発言に今村が何となく嫌な予感を覚える中でアズマの挨拶が始まった。


「ご来賓の方々、及び白百合学園の職員の方々。本日はこの様な盛大な式典を開いていただき誠にありがとうございます。」


 アズマのまともな挨拶がマイクを通して伝わる中で今村は安堵する。


「思ったよりまともだ。」

「……つまんないわね。もっと面白く……いったいわねー!」

「痛くしたから当たり前だ……無難で結構なんだよ。」


 フォンが不満気に頬を膨らませて怒りながら強く抱き着くのを無視して今村はアズマの様子を見て、不意に笑ったのを見て釣られて笑ってしまった。


「……と言う前置きはさておき、私はこの学園を3日で卒園したいと考えております。我が姉、今村 百合はこの学園を1週間で卒園したとあり、私はそれを越える使命感を抱いてこの学園にやって参りました。さて、残り2日となりますが、どうぞよろしくお願いします。」


 静まり返る式場。その中で一礼をしたアズマに拍手を送るのは今村の子どもたち、そしてアズマの母親のフォンたちだけだった。


「うん。こうじゃなきゃ……」

「……ドン引きしてるじゃねぇか……しかも百合の弟ってバラしたから折角他の園児どもには内密にしてあった俺の息子ってことがもろバレだ……」

「問題ないわ。いずれバレることよ。」

「……変な奴らが湧くからなぁ……あ~確かに、ここでの園児生活は短そうだ。どうするか……もう小学校探した方がいいのか……?」


 今村が考える像になる中で苦笑していた園長が式の進行を再び始める。


「大体、仁はアズマのことを困った奴らだみたいに言ってるけど、あんたの方がよっっっぽど色々やってるからね?前々世のこと覚えてるかしら?」

「はいはい。しかも今世とか前世の方がよっぽど色々無茶苦茶やってるのは認めますよ。」

「自分のことは棚に上げて……」

「そう言う暮らしして来たから代わりにあいつらは平和な生活をして、俺はこのまま……」


 この後、組み分けが始まるまで今村たちは口喧嘩をし続けた。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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