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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十九章~次世代と共に~
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7.変態かよ……

 幼稚園に行った翌日。


 約束で祓を風呂で洗い、フォンと遊んだ後にアズマが寝るまで遊んであげた祓と同室の異なるベッドで眠ったため、浅い眠りで微妙に疲れの取れなかった今村は一人になってから本気で少しだけ寝ることにした。


 その間にマキアがいつもの時間の朝食を終えて誰もいなくなったキッチンへと忍び込んで行く。


(……あった。)


 マキアは冷蔵庫から天牛の甘ミルクという今村が自分で勝手に作り上げた牛乳のオリジナルパッケージを見つけるとそれを開けて一気にラッパ飲みして飲み干した。

 そして彼女は途轍もなく淫靡な顔で笑うと周囲に気付かれないように認識阻害の結界を張って上半身を露わにする。


 そして、他の面々よりも肉付きがよく、細すぎることもない程よい肉感の上に乗った形の良い胸をその紙パックの斜め上空で露出すると中に液体を注ぎ込み始めた。


「ウフフフフフフフ……何か、ザギニは産まれた時から固形物食べるから……先生の分がたくさん……これで、よし……」


 術で綺麗に全てを終えると彼女はその場から何事もなかったかのようにその場から出て行った。


 そして、寝起きの今村は術で瞬間的に82度のお湯を沸かしてカップに放り込むと天紅茶を淹れ、時の術式ですぐさま時間を経過させるとそこにミルクを適当に入れた。


「……?何か、水っぽい……?それに妙に甘い……?」


 いつもと同じようにローブを使い、セミオートで熟したのだがどうにも微妙なことになっているので今村は首を傾げた。


「……まぁ、別にいいか……ぁ?よくねぇ!」


 何か毒でも入れられたかな……と思いながら簡単に解析をすると牛乳の成分が女神の母乳と出たので寝起きのぼんやりした状態から今村はすぐに切り替えて立ち上がった。


「誰だこんな戯けたことする馬鹿は……いや、大体想像はつくが……ボケが……吸収が早過ぎるこの体が今は若干恨めしい……」


 すぐに体外に出そうと思ったが、既に吸収された後なのでそんな面倒なことはしたくないと諦め、今村は溜息をつく。


「……ぬっころ呼ぶか。」

「待ってた……」


 今村の呟きが聞こえるや否やこの場に白犬耳美少女でメイド服を着たレイチェルが現れて正座する。そのついでに黒猫耳美少女メイド服のマイアもモップ片手に現れた。


「レイチェルだけ呼ぶのずるいにゃ。」

「……マイアはずっと勝手に行ってた……今度は私の番……」


 軽い喧嘩が始まるが、今村はどうでもいいとばかりにそれを無視して二人の間に件の牛乳のパッケージを出した。


「どっちでもいいけど、この牛乳パックに着いた匂いって誰?」

「「マキアさん(にゃ)」」

「よーし、処刑だ。」


 即行で解決したので今村は紅茶を二人にあげて立ち上がる。紅茶を貰った二人はどちらが先に飲むのか、間接キスがどうとか争っていたが、今村はもう気にしないで目の前に正座して現れたマキアを見下ろした。


「申し開きは?」

「ないです。思い付いたらムラムラしました。そして実行して非っ常に興奮しました。今も大洪水です。先生のミルクが欲しくて仕方ありません。」


 真顔で土下座するマキアに今村は微妙な顔になる。


「……潔いのは結構だが……飲んだ俺の身にもなってくれるか?お前、タナトスの精子でも飲ませてやろうか?」

「私が間違ってましたぁっ!どうか、ご勘弁を!」


 本気で謝罪して来たので今村は頷く。


「……ザギニが大人になるまではそんなに酷いことはしないが……覚えとけよ?絶対に、やられたことは五倍にして返すからな……」

「えっ……あっ……せ、先生のでしたら……」

「ザケろ。何で俺のをやらにゃあならんのじゃ……気持ち悪い。赤の他人のを適当に術式でお前の風呂場に流し込んで、お前を縛り付けて術式を封印した後に放り込むに決まってんだろうが……」


 今村は自分で言っていて豊かな想像力で何となく気分が悪くなったが、目の前のマキアは顔を青褪めさせている。


「……ということで、悪夢の世界へ行ってらっしゃい。」

「まっ……」


 自分の術式をそんな汚物に使うのは何となく嫌だなと思ったので今村は取り敢えずマキアを精神世界で同じような目に遭わせることにして踵を返し、争いを続けているマイアとレイチェルを見た。


「……今日は、ザギニとマキアとライシャリア幼稚舎に見学に行く予定だったんだが……マキアは悪夢の世界に行ってるし……まぁ仕方ないし引き摺り戻すか。」


 今村は放り込んで少ししてすぐにマキアを悪夢から引きずり出し、声もなく本気で静かに泣くマキアの頬を叩いて起こした。


「汚された……汚された……私は、もう、ダメ……先生……ごめんなさい……触ると穢れが移りますよ……?」

「はいはい。どうでもいいから行くよ。」

「どうでもよくなんて……!「実際には起きてない出来事だ。まぁ俺が悪夢見せただけ。」…………よ、」

「よ?」


 今村の言葉を聞いてマキアはその場で自分の体を抱き締めて震えながら膝から崩れ落ちた。


「よかったぁ……ぅっ……ふぇっ……」

「お前俺にあんな事しておきながらよぉそんな反応できるなぁ……」

「に、二度としません……ごめ、なさ……ぅう……」

「あー、そーしろ。さっさと泣き止んで行くぞ。」


 氣を見るに百合と遊んでいるらしいザギニの下へと向かう今村。その後ろでマイアとレイチェルはマキアの両隣りに着いて慰めた。


「みゃあ、でもアレはマキアさんが悪いと思うにゃ……」

「仲良く、なったかなって……」

「…………そう言う問題じゃないと思う……今村さんの体液なら飲めるっていう独りよがりで話し進めちゃダメだよ……?私たちから見て今村さんは唯一だけど、今村さんにとって、私たちは有象無象の存在なんだから……」


 レイチェルの言葉にマキアは黙り込んだ。そう言い終えてから続けてレイチェルは溜息をつく。


「……管理側に回らないと気付けないと思いますが……このお家は、基本的に今村さんの術で負の感情を吸収されるので、しっかり気を持たないと理性が押し潰されますから……」

「どちらにせよ、しっかり反省するべきにゃ。他にここに住んでるみんにゃは我慢してるのにゃ。今村さんは闇鬼神皇で悪魔神王にゃけど、急に、そこまで理不尽にゃことはしにゃいにゃ。」


 近年の付き合いしかないマイアとレイチェルの説教に前世から付き合いのあるマキアは黙って項垂れることしかできない。


「……しっかり、反省はしてね?じゃないと、それすら忘れるから……」

「お子さみゃたちには色んにゃ術で危険ににゃらにゃいようにしたり、悪影響がにゃいようにしてるのににゃあ……お子さみゃたちの100分の1でもいいから今村さんにみゃーたちにも優しくしてほしいにゃぁ……」


 しみじみと目を瞑りながらそう告げるマイアの下に今村がザギニを抱えて戻ってくる。


「……ん?まぁいいか……行ける?」

「ごめ、なさ……行きます……」

「ママ、何で泣いてるの……?」

「……ちょっと、おっきな、失敗しちゃったの。大丈夫……」


 そんなザギニとマキアのやり取りの後ろで暗黒の笑みを浮かべながら術式を展開する今村をレイチェルが念話で宥めに入る。


(記憶、盗る術式ですよね……?)

(うん。女々しくいつまでも泣かれるの怠いし。)

(……でも、二度目は許さないんですよね……?)

(ん?最初っから赦した記憶はないが……まぁ、今回はもういいか。そういえば覚えてろって言ったし……で、次は確かにもっと厳しく行くな。実際に体中を縛り付けて全ての術式を剥奪した挙句ラギク……まぁ要するに睡眠、食事などの全ての欲求を性欲に変換された世界に叩きつける……位はするかな。)

(盗ったらマキアさんが可哀想です……)


 時間も時間なので今村は『ワープホール』を形成し、マキアとザギニを連れてライシャリア幼稚舎へと向かった。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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