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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十九章~次世代と共に~
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5.入園準備

「ふむ……取り敢えず、百合は良い子に育ってくれたしそれをベースに育ててみるか……」


 自分のことを映像化したモノを破壊し尽くした後、今村は子どもたちを自分の家で引き取って一先ずはのびのびと育てていた。


 のびのび育児とは例えば、時に世界を破壊しそうになった時には精神介入して仮にそれを行ってしまった後の世界を見せたり、危ないからダメとは言わずに実際に死にかける直前まで放置したりなど価値観の押し付けではなく子どもたちの感性に委ねる育児だ。


 おすすめは、出来ない。


「えーと、白百合学園……?あれ?百合が通ってた学校の名前が変わってるんだが何でだ……?」

「あ、それは百合さんの偉業を称えて名前を解明したそうです。」

「ふーん……」


 今村は日香理と一緒に遊んでいる百合をちら見して再び子どもたちの通う幼稚園の候補を洗って行く。


「ん~……能力に応じた進級制だと、やっぱり百合と同じ学校に行かせた方がいいんだよなぁ……まぁまぁ高いけど、その分のサービスはあるし……」

「『レジェクエ』の学校はどうにゃ?」

「……お前は掃除終わったのか?」

「終わったにゃ~」


 最近は猫耳メイドとして主に掃除などを担当しているマイアが今村の隣から覗き込んでくる。その際に顎を肩に載せてぐりぐりマッサージのようなものをしてきた。


「にゃうにゃう。」

「む、クロノもする……」

「しなくていい。マイアも邪魔。」

「……こんなのが、父親……」


 こちらをふと見たアズマがそう言った瞬間、幾筋かの閃光が彼に襲い掛かる。それら全てを今村はローブで止めた。


「……まぁ、俺もこんなんが父親だったらそう思うが……事情を考えてから行動しろよ?全員、止めろ。それ以上やるなら戦闘だ。」


 半分くらい映像を壊された私怨で行動している面々は今村の睨みに応じて散会し、それぞれの遊び相手の所に戻る。そしてアズマだけが残された。


「……祓、遊んでやれ。」

「分かりました……」


 自分は一人の方がいいが、アズマは結構寂しがり屋の衒いがあるので今村は一番大人し目な祓にそう言ってアズマの相手をさせる。しかし、軽く難色を示す祓に今村は黙って念話を行った。


(反応は念話しかするなよ?秘匿回線の一つでやってるから。)

(あ、はい。)


 表面上は何も起きていないかのように今村に言われた通りにアズマの下へと向かう祓に今村は続けた。


(アズマと遊ぶには、毎日ウチに来てもらわないといけないから……)


 この時点で祓は今村が言いたい内容を察して、念話のイメージの中で頷くジェスチャーを見せた。


(毎日、お泊りしてもいいですか……?)

(……まぁ、別室なら。)

(……頑張ります……)


 一先ず契約は成ったとばかりに祓はアズマと遊び始める。国の統治と戦争を繰り返す魔術によるボードゲームで遊んでいるがアズマが楽しそうにしているのを見て今村はそれでいいかと頷いて幼稚園探しに戻った。


(……あんまりいいのがないんだよなぁ……これなら家庭教師で自分でやった方がいいんだが……ん~でも協調性とかを考えると……個人的には全部自分でやるなら要らないと思うんだが……)


 そんな考えだから能力はあっても少し歪んだ成長を遂げるのではないだろうかと自覚はしているのでその選択は止めておく。


(百合が一番……今のところは、まともに見えるからな……やっぱりそれをベースにするなら、幼稚園に行かせるしかない……)


 別のことをすることで微妙になっていた認識を再確認すると今村は悩み続けても仕方がないので取り敢えず見学に行ってみてどこにするか決めることにした。


「……じゃあ、誰と行くか……」


 いいかもしれないと思える幼稚園のリストを作って今村は後ろで遊んでいる子どもたちを見た。因みに子どもたちはどうか分からないが、遊んでいる面々は全員今村の方に意識を寄せていた。


「……ま、順番に全員連れて行けばいいか……取り敢えず、今から行くところはアズマと……フォンはちょいと行方不明だから代わりに祓、行こうか。」

「はい。」

「はーい……」


 久し振りに散歩に連れて行ってもらえる子犬のように喜ぶ祓と折角楽しくなってきたところだったのに出掛けることになって不満気なアズマを連れて今村は白百合幼稚園へと行くことにした。











「……?何故、キバが付いて……」

「暇でしたんで……最近覚えた転移魔術を使ってみようと……」


 転移先に何故かいたキバを発見し、到着とほぼ同時に祓が笑顔で蹴り飛ばしにかかっていたのを目撃した今村は祓の蹴りなどお構いなしにその場に立っているキバに平然とそう尋ねる。


「あー……邪魔でしたかね……」

「ん~……まぁ、俺は別にどうでもいいと思うが……とにかく行こうか。祓はアズマが迷子にならないように手を。」

「……はい。」


 超短時間の念話でベッドは違うものの同室での宿泊を認めることを条件に祓にアズマの手を引かせて入園した。


「どうもどうも……お似合いの御夫婦に、可愛らしいお子さんですね~」


 入園と同時に保育士の、少し年配のふくよかな女性が現れて祓とアズマを見てそう言いつつ入園の手続きについて述べて来る。

 それを聞いて祓は嬉しそうな顔をするが、続く言葉で絶賛不機嫌になることになった。


「いや~可愛らしい、幸せそうな家族ですね~?そちらの金髪の旦那さんもこんな別嬪さんのお嫁さん貰って幸せいっぱいでしょ~?」


 面白がって今村はそれをにやにやしながら見つつ、祓から発される殺意を抑えてアズマを見降ろす。


「……いや~……この人は、こっちの、方の、愛人……でして……」


 キバは祓が不機嫌になったのを見て苦笑しながら一礼してその場から立ち去って行った。それを見送りつつ今村は保母から謝られる。


「あれまぁ、そっちの方でしたか。これは失礼しました。」

「二度と、間違えないでください……」


 軽い調子で謝って来る保母さんに祓は静かな怒りを込めてそう言ってから結構なショックを受け、パッと見ても分からないと言うことはまだ愛情が足りてないのでは……?と真剣に考える。

 それはさておいて、保母さんの方も愛人と言う言葉に少し遅れて引っ掛かりを覚えたらしく首を傾げて発言しようとするが、その前に園長が出てきた。


「あ、先生遅れてすみません。見学の準備が出来ましたのでどうぞ。」

「えっ……?園長先生の、先生……ですか?」

「そうですよ?高校の時の恩師です。」


 保母さんは今村のことを二度見して目を擦り、首を傾げた。


「え?」

「……まぁ、神様ですから外見で判断は出来ません。こう見えても、『レジェンドクエスターズ』の総会長ですから。」

「こっこっこっこここ?ま?ま、ほ、え?」


 どんどん顔を青褪めさせる保母さんから今村は目を離して元教え子に案内を頼んだ。


「ほら。これ以上俺への愛情とか増やす必要ないから。大体無限とか非常識なことやってるんだからもう愛情は要らない。考えない。行くぞ。」

「……はい……ですけど……伝わらないならやはりもっと……」

「要らない。」


 断言して今村は周囲を索敵して取り敢えず自分より強いのは目の前の園長くらいだと判断して安堵しているアズマの空いている方の手を引いて建物の中へと移動して行った。





 

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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