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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十九章~次世代と共に~
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4.王都にて

 王都に着いた今村、そして百合はロッド王子に招かれるままに王城へと入城して謁見の間に通される。


「……ダニアン陛下。この者たちが私を導き、この国を豊かにしてくれる存在であります……」


 そして今村は百合と一緒に跪いたままロッド王子の長口上を聞き流し、早い所終わらないかなぁ……とぼんやりしていた。


(……旅の間の経費は国持ちかなぁ……別に無駄なくらい金は持ってるが……使うなら他人の金の方がいいし……)


 ダニアン王の反論が始まってこれから話が動き始めるかと思ったその時、赤の紋章を肩に付けた衛兵が謁見の間に飛び込んで来て叫んだ。


「陛下!敵襲です!お逃げください!」

「何……?戦の音は全くしないが……衛兵は何を?」

「相手は、魅了型の襲撃をしています!早くお逃げを!」


 衛兵のその言葉に食いついたのはロッド王子だった。


「陛下。ここで私が連れて来た者たちの実力をお見せいたしましょう。」

「……よもや、お前が手引きした敵襲ではあるまいな……?」


 ギロリという擬音が聞こえてきそうな程の眼力でロッド王子を睨むダニアン王だが、ロッド王子は首を横に振った。


「あり得ません。私が自らの国を害するようなことがあるはず……」


 ロッドの言葉が言い終わる前に謁見の間の扉が勢いよく開けられる。そこから出て来たのは6人の可愛らしい子どもたちだった。


「……んー?ねぇおじさんたち、父さん知らない?」


 その先頭を行く男女の内、男の子がそう問いかけるとこの場にいた殆どの大人が相好を崩し、口々にその「父さん」とやらの特徴を尋ねるが百合はそれに遅れてしまった。

 それを見たもう一人の先頭者である女の子が幼い顔に似合わない邪悪な笑みを浮かべて百合にほぼノータイムで近付いて尋ねる。


「あなた、強そう……父様、いえ今村 仁について何か知ってるんじゃないんですか?」


 しどろもどろになる百合を見て今村は少し考えてから仕方ないとばかりに首を振り、演技を止めて術も解いた。


「あっ!」

「父様だ!」

「わーい!」

「お、お久し振りでございます……龍一です。」

「あ、あぅ……」


 六者六様の反応を見せながら今村に飛びつく子どもたち、それを受け止めながら今村はこの場に掛けられた術からモナルキーアの面々を解放する。


「っ!?い、今村様……??どうして、ここに……」

「……会ったことあったっけ……?まぁいいや。ど「見つけたわ。」……うしようもなくなったな……」


 ダニアン王が驚き、それにロッド王子が驚いて、今村が首を傾げているとこの場にフォンが現れ、続けてフィト、シェン、白崎、アリスなどが集結し始める。


 それにより、今村の術式があまり意味をなさなくなり全員が魅了され始めるので今村は仕方なく帰ることを明言して魅力が高過ぎるフォンやフィト、シェンなどを帰らせて椅子を出すと質問した。


「まぁ……別に俺いなくてもいいかなぁ……って思って少しばっかり旅行に行ってのんびりしようと思ってたんだが……何か用?あ、子どもたちは別。会いに来たかったなら来るがいい。」

「わーい。」


 膝の上に二人、背中に一人、左手に一人を抱えて今村は視線をやって来た祓たちに向けた。だが、それを差し置いて今村の目の前に立っているアズマが言いたいことがあると前置きして告げた。


「あの、父さんさ……確かにやったことは凄いよ?でも、延々と自分の映像を見せるのはどうかと思う……」

「は?」

「あっ……」


 空気が固まった。


「……アズマ、何だそれ。詳しく聞かせろ。……いや、やっぱりいい。ちょっと頭をこっちに出してくれ。」

「え、あ、うん……」


 柔らかなアズマの髪の上に手を置いて今村はその記憶を読み、そして無言で笑顔になるとその次の瞬間にブチ切れた。


「ざっけんなボケぇ!何してくれとんのんじゃぁ!タコがぁ!」

「あ、あの、これには深い訳が……」


 祓が今村を抑えようとするが今村は止まらない。子どもたちを降ろして妨害が入っている空間に飛ぶための転移術式を描きながら激怒する。


「知るか!気持ち悪い……何だこんなもん……こんな吐き気のする気持ち悪い映像よく創れたな……あぁ悍ましい……ホンット、キモ過ぎる……ぞわってした……」

「気持ち悪くないもん!格好いいもん!」

「何言ってんのか分からん。すぐさま焼却しないと……汚物は消毒だ……いや、焼却じゃ足りないな。消滅術式を使わないと……」


 アズマはクロノに睨まれる。実力的には現時点で既にそこまで劣ってはいないが、本気の殺気をぶつけられてアズマは身震いした。そんなアズマを今村は撫でる。


「よく、知らせてくれた……安心しろ。消滅させてくる。一片たりとも残さないから……」

「え、いや……母さんたちが怖いから、母さんたちの分は残してくれない……?殺されたくないし……」

「善処はしたいが……多分無理だろうな。あんなもんがこの世に存在するなんて耐えられない。吐き気がする。百合?興味持たなくていいからな?」


 後ろでこそこそ祓と話をしている百合に釘を刺しておくと今村はこの場に取り残されたモナルキーアの面々に言っておいた。


「『レジェンドクエスターズ』から人を派遣する。そこの王子には頑張ってもらいな。代金は要らん。迷惑金代わりとでも思ってくれ。『ワープホール』」


 そう言い残して今村はアズマの記憶の場所へと飛んで行った。











 そこでは一所懸命に防御網を敷き、先に現物の配布を行っている「幻夜の館」の面々が居た。


「……成程。旧神の、秘法か……この小さなチップを持って念じるだけで全部見れる上、あらゆる操作が……っと。興味深いが……」


 自らの術式に一切かからずにどうやって映像化したのかが分かり、少々術式の解析に思考が向かってしまったが、今村は本来の用件を片付け始める。


「術式の認知をして、もう……終わりだ。『破壊躙』」


 連鎖爆発の様に各地で超小規模の爆発が起きる。特に目の前では爆発が積み重なり、結構大規模な爆発になった。


「かっ……おい、これ……俺、結構強くなって、魔力、頭おかしいくらいになってるんだが……?」


 今村は疲労感で少しよろめいた。確かに、フォンの術式はかなり複雑で現在の神々でも早々簡単には破壊できないだろうが、今の今村であればそこまで難しい物ではない。


 はずだった。


「どれだけ量産してやがんだこの馬鹿ども……」

「ちょっと爆は……ヤバッ!」

「……まぁいい。」


 不良品だったのかと文句を付けに誰かが来たが、今村の姿を見て察しすぐさま逃げて行く様子を見送って今村は溜息をつく。


「やっぱ、自分である程度面倒看た方がいいかな……」


 その呟きは爆音に掻き消されて行った。






 その頃、モナルキーアの王城では。


「あぁ~!華凜の誕生日プレゼントがぁ~!びぇえぇぇぇ!」

「えっ、どういう……」

「……やっぱり『破壊躙』を……これ、もう私の家にあるのも全部ダメになりましたね……」

「帰ってくる間にも見ようとしたら爆発したんだけど?何したの……」

「あずまが、アズマがバラした~!うぇぇええぇぇぇえぇ!」

「……アズマ?」

「いや、だって、こんなことになるとか……ってか、痛い。」


 大泣きする華凜に呆然とするアズマ。日香理もさめざめと泣き、ザギニは無言で先程からアズマの脛を蹴り続けている。


「はぁ……次から気を付けなさいよ?今回は幸い、まだ別系統の術式が残ってるから良いものの……」


 尚、この術式もこの日中にバレて破壊されることになる。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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